第16回日本薬局学会学術総会

講演情報

一般演題(ポスター)

一般演題(ポスター)Bグループ

2022年11月6日(日) 14:10 〜 15:00 ポスター会場1~3 (4階 405+406/409+410/413+414)

[P-098-B] 市中における薬剤耐性 (AMR) 対策アクションプランの検証―保険薬局における抗菌薬処方データの解析―

長谷川 洸介1,2, 松村 有里子2, 森 智子2, 朝倉 敏夫2, 中南 秀将1 (1.東京薬科大学 大学院 薬学研究科 薬学専攻博士課程 臨床微生物学教室, 2.(株)メディックス)

【目的】薬剤耐性菌の蔓延に歯止めをかけるため、わが国においては2016年から薬剤耐性 (AMR) 対策アクションプランがスタートした。病院では抗菌薬適正使用支援チームが存在するため、AMR対策アクションプランを実行しやすい。しかし、市中のクリニックや薬局においては、AMR対策アクションプランの実施が不十分であることが指摘されている。そこで、市中におけるAMR対策アクションプランの効果を検証するため、薬局における抗菌薬処方量を調査し、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) の抗菌薬耐性率との関連性について研究した。【方法】当社の保険薬局のうち、多摩地域に出店している42店舗を対象に、2013年4月から2020年3月に調剤した抗菌薬・抗生物質の使用量を集計した。MRSAは、同時期に9つの病院から分離され、市中感染型MRSAに主流のSCCmec type IV株であった3,598株を対象とした。さらに、MRSAが分離された病院の近隣に位置する薬局22店舗について、抗菌薬使用量の指標となるDPY (DDDs / 1,000 prescriptions / year) を算出し、MRSAの抗菌薬耐性率との関連性について検討した。【結果】2017年~2019年の第3世代セファロスポリン系薬、フルオロキノロン系薬、マクロライド系薬の42店舗における処方数は、2016年以前と比較して、それぞれ30.6%、10.3%、31.6%減少していた。2017年~2020年の22店舗のDPYは、2016年以前と比較して、それぞれ30.8%減少、10.9%増加、24.6%減少していた。また、同一期間に分離されたMRSAの第3世代セファロスポリン系薬、フルオロキノロン系薬、マクロライド系薬の耐性率の変化は、それぞれのDPYの変化と正の相関を示した。【考察】本研究から、調査した地域において、AMR対策アクションプランが一定の効果を挙げていることが示唆された。したがって、薬局が抗菌薬の処方数を監視・把握することによって、市中におけるAMR対策アクションプランの効果を検証できると考えられる。