第16回日本薬局学会学術総会

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シンポジウム

シンポジウム1
「保険薬局でもできる研究・学会発表」

Sat. Nov 5, 2022 1:30 PM - 3:00 PM 第1会場 (3階 メインホール)

座長(オーガナイザー):岩城 正宏 (「薬局薬学」編集委員長、近畿大学薬学部 学部長・教授、近畿大学薬学総合研究所 所長、近畿大学アンチエイジングセンター センター長), 副座長:長谷川 佳孝( (株)アインホールディングス 医療連携学術部 次長)

[SY1-2] レニンアンジオテンシン系阻害薬、利尿剤、NSAIDsの3剤併用(Triple Whammy)に関する研究を通して得た経験について

福井 章人 (総合メディカル(株) そうごう薬局西冠店 薬局長)

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1.はじめに

高齢者やCKD患者へのレニンアンジオテンシン系阻害薬(以下RASI)・利尿剤・NSAIDsの3剤併用は急性腎障害発症リスクを高めることが報告されています。この3剤併用について、来局する患者の状況を把握するため調査研究を行い、第15回日本腎臓病薬物療法学会・学術総会2021において「薬局におけるレニンアンジオテンシン系阻害薬、利尿剤、NSAIDsの3剤併用(Triple Whammy)に関するNSAIDsの使用実態調査」というテーマで発表しました。

本講演では、研究内容について紹介するとともに、研究をしてみたいがテーマ選びや実施方法、時間確保の問題で着手できていない方、学会での発表をどうしたら良いかわからないといった方に、本研究を行うきっかけや周囲のサポート体制など、自身の経験を共有することで参考となりましたら幸いです。

2.研究内容について

2020年、近隣12薬局において8ヶ月間、RASI・利尿剤の2剤を30日以上併用していた患者の薬歴から、複数診療やOTCを含めた3剤併用の背景について調査しました。その結果、来局者51,355名のうち、RASI・利尿剤の2剤併用411名、うちNSAIDs併用は123名でした。NSAIDsを2剤と異なる医師により処方されたのは79名、同一の医師35名、OTC購入での併用は11名でした。一方で、薬剤師の腎機能評価の状況について調査したところ、2剤併用患者411名のうち131名(32%)の確認に留まっていたことが分かりました。このことから、2剤併用患者には、短期間でもNSAIDsが併用される可能性に注意し、薬剤師は腎機能も定期的に把握しておく必要があると考察しました。

3.研究を始めたきっかけ

総合メディカルでは毎年、ファーマシーフォーラムという社内学術大会を開催しています。配属された店舗では毎年この大会で近隣の店舗と協力して発表するのが通例で、私も入社2年目からメンバーとして加わりました。様々なスタッフと議論を交わしながら研究することが楽しく、次第に外部の学術大会でも発表したいと思うようになりました。
そんなある日、応需先病院の薬剤部長に研究テーマについて相談したところ、「腎機能低下患者のNSAIDsの使用について何とかしたい」との話を頂きました。そこで、関連する文献を探していたところ、國津侑貴先生のTriple Whammyによる腎機能への慢性的な影響に関する論文を見つけました。「これなら工夫すれば保険薬局ならではの研究ができるかもしれない」と思い、周囲の先輩と相談しながら、まずは来局患者や薬局内の現状について実態調査を行うこととしました。

4.研究を行うためには

現在、来年の日本腎臓病薬物療法学会発表に向けて準備に取り掛かっています。
忙しい日常業務の中でどのように研究の時間を作るのかが一番難しいと思います。私は大事なのは周りのスタッフの理解と役割分担だと思います。幸い、当薬局では周りのスタッフの研究に対する理解があり、必要な時間を協力して作ってくれます。また、研究資料の作成やデータ収集、分析、スライド作成など大変ですが、これも共同研究者と分担すれば負担を軽減できると感じています。

薬局で行える研究テーマはまだまだ豊富にあると思います。特に病院薬剤師が先駆的に行っている研究には、薬局で行える研究の種がたくさん詰まっていると思います。周囲の病院薬剤師や医師と交流したり、学術大会に足を運ぶなどして研究テーマを見つけ、研究の仲間を見つけながら、一緒に薬局ならではの研究をしていきましょう。