第16回日本薬局学会学術総会

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シンポジウム

シンポジウム1
「保険薬局でもできる研究・学会発表」

Sat. Nov 5, 2022 1:30 PM - 3:00 PM 第1会場 (3階 メインホール)

座長(オーガナイザー):岩城 正宏 (「薬局薬学」編集委員長、近畿大学薬学部 学部長・教授、近畿大学薬学総合研究所 所長、近畿大学アンチエイジングセンター センター長), 副座長:長谷川 佳孝( (株)アインホールディングス 医療連携学術部 次長)

[SY1-3] 保険薬局における学会発表~これまでの取り組みと課題について~

緒方 直美 (クラフト(株) さくら薬局グループ 課長)

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 2016 年にかかりつけ薬剤師の制度が始まり、担当する薬剤師の情報は患者に文書で提供されることになった。経歴や認定・専門薬剤師の資格の他に、論文、学会発表の実績や所属学会などを公表するようになった。また2021 年には新た
に認定薬局制度が始まり、専門医療機関連携薬局はがんの専門知識を持つ薬剤師の配置が求められるようになった。更に今年度はリフィル処方箋が導入され、服用継続の可否や副作用発現の気付きについて薬局薬剤師としての判断が求め
られるようになった。我々は自身の資質を向上させると共に、患者に質の高い薬物治療を提供する必要性がある。
一方、学会発表においては、2014 年に「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」が公表され、薬局薬剤師が参加する学会でも倫理審査が必要となった。演題により倫理審査の承認を受けなければ発表できなくなった。例えば患者ア
ンケートを利用した発表や薬歴や処方内容などを用いた研究は今までも多くあったが、倫理審査が必要となったため一気にハードルが上がった。学会と聞くだけで抵抗を示す薬局薬剤師も少なくない状況の中、審査に必要となる研究計画
書は研究の目的や意義、研究の方法や期間、個人情報の取り扱いなどの記載項目が25 項目にも及び、作成するのにかなりの労力を要する。
さくら薬局グループでは専門性の高い薬局薬剤師を育成するために、「専門認定薬剤師育成プロジェクト」を設立した。がん、緩和ケア、在宅、糖尿病、認知症の5 領域にそれぞれ指導者を配備し、学会発表や論文投稿でき得るスペシャリ
ストの薬剤師を養成する体制を整えた。同時に社内に研究倫理審査委員会を立ち上げ、研究発表に取り組みやすい環境を整備した。日々忙しい薬局薬剤師が研究に目を向けるきっかけを作り、現場で生じた疑問から研究に繋げられるよう、
研究に取り組む環境を作ることが目的である。そして結果を社会に発信し、将来その成果がエビデンスとして活用されるための土壌を作って行きたい。今回は薬局薬剤師に少しでも研究や学会発表に興味を持ってもらうようにするために、
当社の事例を交えながら取り組みについて発表する。
医療が研究と共に発展したように、薬局薬剤師が関わる薬物療法も薬剤師が取り組む研究によって発展すると思われる。
シンポジウムでは、そのための環境作りや支援方法について議論したい。