第22回画像センシングシンポジウム

オーガナイズドセッション

実応用から基礎まで画像センシングの新しい活用事例&技術革新を俯瞰します

OS1: プロジェクションマッピングが変えるユーザー体験

2016年6月8日(水) 16:30-18:00

オーガナイザー: 天野 敏之氏(和歌山大学)

セッション概要:

我が国においては2012年に東京駅丸ノ内駅舎で開催されたTOKYO STATION VISIONやTOKYO HIKARI VISIONで広く知られるようになり、今やイベントでは欠かせない演出となったプロジェクションマッピングは、観客誘導が大きな課題となるほどの潜在的な集客力を持っています。プロジェクタはスケーラブルな映像表示デバイスであるため、プロジェクションマッピングの対象は工業製品から人物、自動車、建築物まで多岐にわたります。また、プロジェクションマッピングの目的も多様です。一方、プロジェクションマッピングに係る技術は、形状に合わせるマッピングや模様に対する投影補償だけでなく、HDR投影、運動物体への投影、フォーカススイープや変形物体への投影、プロジェクションマッピングを通じたユーザー体験やコミュニケーションなども研究されています。さらには、触れる空中ディスプレイや任意のBRDFを再現する近未来の投影技術も研究されています。このオーガナイズドセッションでは、プロジェクションマッピングが変えるユーザー体験と題して、今まさに実用化されようとしている最新技術から、既に多くの観客を魅了しているビジネスまでを、豪華な講師をお招きしてご紹介いたします。

各講演のご案内

プロジェクションマッピング高性能化と身体拡張体験

岩井 大輔氏(大阪大学)

概要:

身の回りの物体面を映像投影によって上書きし、サイバー空間と高度に融合して、住環境の知能化や身体拡張体験を提供するプロジェクションマッピングを構想し、新奇な光学系・投影系を導入しつつシステム制御・最適化の技法を採用することで、非平面・模様付きの物体面でも適切に映像表示できる基盤技術の研究を進めている。本講演では、その基盤技術および身体拡張体験についてご紹介する。

プロジェクションによる適応的な質感操作から意図の拡張へ

天野 敏之氏(和歌山大学)

概要:

我々が知覚する世界の色彩は、照明によって大きく変化する。この関係に着目して我々はプロジェクタとカメラを用いたフィードバック系により見た目の色彩を自在に操作する見かけの操作技術を確立し、視覚補助や符号化印刷と組み合わせたイリュージョン、質感操作などを試みてきた。本講演では、これらに加えてライトフィールド投影を用いた見かけのBRDF操作や箔工芸品の美の強調、書に込められた意図の拡張など、最新の試みもご紹介する。

メディア装置の発明を芸術へと繋げて

落合 陽一氏(筑波大学)

概要:

インターネット社会は我々の共同幻想を個別の文脈に置き換えていき、我々が持っていた共同幻想や大きな文脈は映像装置に代表されるようなマスメディア文化の衰退とともに縮小している。現在、その意味ではメディアアートの定義や取り組みの例ですらも共通認識を得なくなってきた。その中で、私はメディア装置の発明による芸術の系譜をメディアアートの文脈に接続しようとしている。本講演では計算機と応用物理の組み合わせによる作品群を紹介するとともに上記に挙げたような社会変化、文化の再編についても述べる.我々の計算機文化は二次元イメージを共有することに象徴されるようなイメージ中心・人間中心主義のやり取りを超えて、物質中心・計算機自然主義へとどう変遷するのかを議論していきたい.

プロジェクションマッピングがビジネスやクリエイティブにもたらした影響


大屋 友紀雄氏(ネイキッド)

概要:

2010年代に入ってから、プロジェクションマッピングという手法が注目を浴びるようになり、2015年年現在では数多くのプロジェクションマッピングが全国各地で行われています。特に自治体や商業施設などでの実施が盛んになっていますが、プロジェクションマッピングは表現手法のひとつでしかありません。であるならば、なぜプロジェクションマッピングがこれだけ人口に膾炙したのか。また、ビジネスにおいてはどのような変化をもたらしたのか。実際に企画/制作/演出として数多くのプロジェクトを行ってきた立場から、その理由についてお話していきます。

OS2: 外界環境センシングの進化 —自動運転に向けて—

2016年6月9日(木) 10:45-12:15

オーガナイザー: 下村 倫子氏(日産自動車)

セッション概要:

「自動運転」という言葉を頻繁に耳にするようになりました。 さて、自動運転では、どのようなセンシング技術が活用されるのでしょう? 本セッションでは、車両の進化に欠かせない外界環境センシング技術に関し、理論、応用、実地試験という多方面から、その分野の経験豊富な講演者をお招きし語っていただきます。乞うご期待!

各講演のご案内

ステレオ画像による実用3Dセンシング —SGMを中心に—

杉本 茂樹氏(東京工業大学)

概要:

カメラ2台を利用するステレオ計測は、障害物検知や衝突回避のための車載センシングシステムとして商用化されています。ステレオ計測の研究は長い歴史がありますが、かつては精度よくステレオマッチングを行うためには計算コストが大きいという問題があり、実利用が限定的であったという経緯があります。本講演では、まず、ステレオ計測の基本原理と要素技術を初心者向けに解説しつつ、近年におけるステレオ計測技術の実利用促進の契機となったSGM(セミグローバルマッチング)法を中心に、ステレオマッチング手法とその実施例を紹介します。また、地表3Dサーフェスを画像から直接生成するステレオ計測手法など、他の研究事例も紹介します。

外界環境センシングを実現する3Dセンサーと富士通の取り組み

手塚 耕一氏(富士通研究所)

概要:

現在、私達の身の回りで、自動運転及び3Dデータを活用したサービスが目覚ましい勢いで普及しようとしています。それにはヒトの周囲や現場の環境を3D情報としてセンシングする外界環境センサーが重要な役割を果たします。 当日は、自動運転に必要な外界環境センサーの要件を明らかにするとともに、具体的に使用されている画像カメラ、レーザーレンジファインダーの解説を致します。さらに、現在、富士通で開発中の、高速、広角に3Dデータが取得可能なレーザーセンサーと、そのセンサーを、自動車を含めた各分野に適用した場合の3Dデータ利活用サービスに関してもご紹介します。

自動運転におけるセンシング技術の活用 -公道走行実証実験の成果と課題-

菅沼 直樹氏(金沢大学)

概要:

これまで夢物語であると考えられていた自動車の自動運転が近年の各種センシング技術の向上や、コンピュータパワーの増大に伴い現実のものに近づきつつあります。このような自動運転では、通常ドライバが実施している認知・判断・操作を車載センサやコンピュータに基づいて如何に正確に実施するかが重要となります。また、近年ではデジタル地図を活用してセンシングの不確実性を減少させ、より正確な判断を行う取り組みも多くみられるようになりました。本講演では、自動運転に必要な各種センシング技術を中心として、自動運転のための各種技術について解説します。また、金沢大学が実施している公道実証実験の概要とその成果とその課題について述べます。

OS3: パターン認識の新展開 -機械の自律化による産業革命に向けて-

2016年6月10日(金) 10:45-12:15

オーガナイザー: 井尻 善久氏(オムロン)

セッション概要:

産業革命以来分業化と自動化が進み、生活に必要なもの、生活を豊かにするものを、効率的かつ持続的に生み出す生産方式が編み出されてきました。一方、作るもの、作る場所、作る人、作り方、届け方、売り方等、様々な構造的変化により、従来の、人に強く依存する生産方式から、自律的な生産方式が求められるようになっています。これを実現する鍵の一つは人間の目の機能であり、これにより対象や環境に応じた自律的な処理が可能となります。これらの流れの中で目の機能 には、整備環境下から非整備環境下での高精度な認識、表面的な理解から内面的な理解、平面的な対象理解に加え空間的・立体的な理解等、新たな技術の実用化が喫緊の課題となってきています。本オーガナイズドセッションでは、第1次産業から第3次産業における応用の中で、それら基本技術の利用事例やさらなる発展の可能性に関し、各分野で活躍されている講師の方々に紹介して頂きます。

各講演のご案内

一次産業における画像処理技術適用への期待

岡本 眞二氏(パナソニック)

概要:

世界規模の人口増加、先進国の高齢化加速やアンバランスな食糧需給など今後の世界の食糧事情は決して楽観視できない状況です。日本も例外では無く、特に一次産業就労者の平均年齢は60歳代後半になるなど農業従事者の高齢化は国内食糧生産における大きな課題になっています。本講演では、このような状況を打開するための農林水産省の施策を紹介すると共に、画像認識技術を活用した農作業省力化を図る 「トマト収穫ロボット研究」の事例を紹介します。 更に、今後期待される画像処理技術の適用先として複数の事例を提示すると共に、パナソニックの一次産業の取り組みを具体的に説明致します。

IoTを品質面で支える基板検査装置の進化

小西 嘉典氏(オムロン)

概要:

様々な電子機器や自動車には多くの電子回路が搭載されており、回路基板の品質保証のために生産ラインにおいて画像処理による基板の自動検査が行われてきました。しかし最近では、スマートホンに代表される電子機器の小型化・高機能化に伴って基板部品の小型化や基板実装の高密度化が進み、通常のカメラでは見えない・見えにくい部品が増えています。このような基板の検査のために導入が進みつつあるX線基板検査装置について、検査の仕組みや高速化の工夫などを紹介します。

物流倉庫のピッキング:ロボットビジョンの新展開

堂前 幸康氏(三菱電機)

概要:

物流自動化に対する開発が盛んである。アマゾンピッキングチャレンジに代表される問題設定は、人工知能・ロボティクスの広範な技術課題を内包するため、オープンイノベーションで解決すべき問題として認知されている。パタン認識としても、大規模な特定物体認識と、古典的なマシンビジョンを繋ぐ魅力的な問題である。この問題に対する取り組みから、物流産業などへのパタン認識技術の展開について考察する。