5:15 PM - 6:45 PM
[S03P-07] Development of a real-time buoy observation system for tsunami and crustal displacement and its bottom pressure continuous records
南海トラフの東南海地震と南海地震の発生域には、地震・津波観測監視システム(DONET)が整備され、緊急地震速報や津波警報・注意報の発表や地方自治体やインフラ事業者による津波即時予測システムによる津波予測に使用されている。日本海溝域には日本海溝海底地震津波観測網(S-net)が整備され、緊急地震速報や津波警報・注意報への利活用も始まった。しかし、日本列島は多くの沈み込み帯に囲まれており、未だDONETやS-netのような海底観測網が整備されていない地域もある。そこで、補完できるシステムの一つとして、ブイシステムを用いた津波・地殻変動観測ブイシステムを開発してきた(Takahashi et al., 2014; 2015; Imano et al., 2015; Imai et al., 2018)。このシステムを用いた海域試験が行われ、1年間の連続観測を実現した。本講演では、この海底水圧計等を用いたデータ解析の結果を報告する。
この津波・地殻変動観測ブイシステムは、海底で水圧データを取得し、音響通信を用いてブイにてデータを中継し、イリジウム通信を用いて陸上にデータを伝送するものである。海底水圧データは、0.023 Hzのローパスフィルターをかけて15秒サンプリングでデータを取得している。津波と地殻変動の観測のダイナミックレンジは8メートルを確保し、津波を検知した場合は15秒間隔でデータを伝送する。このブイシステムでは、ブイにAquadoppセンサーによる流向・流速観測、気象センサーによる温湿度、気圧、風向・風速、降雨量の観測、更に、Precise Point PositioningによるGNSS測位観測も同時に行っている。海底水圧データには、海流による海水密度変化や気象による気圧変化等の影響も受けるため、気象、海象、津波、地震等地下で発生するイベント、地殻変動等による観測データの分離が課題である。
海域試験は、2015年12月から1年間にわたって、南海トラフの熊野灘沖海域で行われた。設置地点の水深は約2,900メートルである。上述のデータの連続観測の他に、海底に6台のトランスポンダーを設置し、GPS/A観測も実施している。本研究では、海底水圧計データに2-4 分、4-8 分、8-16 分、16-32 分、32-64 分、64-128 分、128-256 分のバンドパスフィルターをかけ、観測された現象の特性を調べ、海底で観測された様々な現象の解釈を試みた。
海底水圧計には、いくつかの種類のシグナルが記録されている。特に多く観測されたのは、16分以下の周波数成分を多く含むシグナルで、500秒程度の継続時間を持つ。GNSS測位データや気象データとの相関は見られないため、この信号は、スローイベント等の地下からのシグナルと考えられる。また、低気圧や台風などの気圧の変化は、128-256分の周波数成分の記録とよく相関している。また、3日程度の継続時間を持つシグナルも観測された。このシグナルは2-16分の周波数成分を持ち、平均して月1-2回の頻度で観測された。数日間の継続時間を持つシグナルとしては、タービダイトが考えられる。このブイ設置海域の東側には天竜海底谷があり、熊野灘から天竜海底谷に合流する小規模の海底谷がある。カリフォルニア沖(Bowen et al., 1984)やカナダ東部沖(Stow and Bowen, 1980)でも数日間継続したシグナルとしてタービダイトを観測したことが知られている。今後、DONETデータにも同様の処理を通じてこのシグナルを検出し、温度センサーによる変化の検出を試みる。
この津波・地殻変動観測ブイシステムは、海底で水圧データを取得し、音響通信を用いてブイにてデータを中継し、イリジウム通信を用いて陸上にデータを伝送するものである。海底水圧データは、0.023 Hzのローパスフィルターをかけて15秒サンプリングでデータを取得している。津波と地殻変動の観測のダイナミックレンジは8メートルを確保し、津波を検知した場合は15秒間隔でデータを伝送する。このブイシステムでは、ブイにAquadoppセンサーによる流向・流速観測、気象センサーによる温湿度、気圧、風向・風速、降雨量の観測、更に、Precise Point PositioningによるGNSS測位観測も同時に行っている。海底水圧データには、海流による海水密度変化や気象による気圧変化等の影響も受けるため、気象、海象、津波、地震等地下で発生するイベント、地殻変動等による観測データの分離が課題である。
海域試験は、2015年12月から1年間にわたって、南海トラフの熊野灘沖海域で行われた。設置地点の水深は約2,900メートルである。上述のデータの連続観測の他に、海底に6台のトランスポンダーを設置し、GPS/A観測も実施している。本研究では、海底水圧計データに2-4 分、4-8 分、8-16 分、16-32 分、32-64 分、64-128 分、128-256 分のバンドパスフィルターをかけ、観測された現象の特性を調べ、海底で観測された様々な現象の解釈を試みた。
海底水圧計には、いくつかの種類のシグナルが記録されている。特に多く観測されたのは、16分以下の周波数成分を多く含むシグナルで、500秒程度の継続時間を持つ。GNSS測位データや気象データとの相関は見られないため、この信号は、スローイベント等の地下からのシグナルと考えられる。また、低気圧や台風などの気圧の変化は、128-256分の周波数成分の記録とよく相関している。また、3日程度の継続時間を持つシグナルも観測された。このシグナルは2-16分の周波数成分を持ち、平均して月1-2回の頻度で観測された。数日間の継続時間を持つシグナルとしては、タービダイトが考えられる。このブイ設置海域の東側には天竜海底谷があり、熊野灘から天竜海底谷に合流する小規模の海底谷がある。カリフォルニア沖(Bowen et al., 1984)やカナダ東部沖(Stow and Bowen, 1980)でも数日間継続したシグナルとしてタービダイトを観測したことが知られている。今後、DONETデータにも同様の処理を通じてこのシグナルを検出し、温度センサーによる変化の検出を試みる。