日本地震学会2019年度秋季大会

講演情報

D会場

特別セッション » S23. オープンデータと地震学

[S23]PM-1

2019年9月17日(火) 13:30 〜 15:00 D会場 (時計台国際交流ホールI)

座長:加納 靖之(東京大学地震研究所)、汐見 勝彦(防災科学技術研究所)、鶴岡 弘(東京大学地震研究所)

13:45 〜 14:00

[S23-11] 海洋研究開発機構におけるデータ・サンプル管理公開の取り組み

*坪井 誠司1、齊藤 千鶴1、福田 和代1 (1. 海洋研究開発機構)

海洋研究開発機構では、機構の調査船等が調査観測航海で取得したデータ・サンプルについて、機構の「データ・サンプルの取り扱いに関する基本方針(データポリシー)」を2007年に制定し、このポリシーに関連する諸規程に従い継続的に収集・保管・品質管理・公開(提供)を実施している(http://www.jamstec.go.jp/j/database/data_policy.html)。このポリシーでは、機構の施設で取得されたデータ・サンプルは「人類共有の財産であり、研究・教育などの利用のために広く公開され、将来にわたって世界中で活用されることが重要」であると述べられている。このために、機構では「機構の施設・設備等を利用して取得されたデータ・サンプルは、特別な取り決めがある場合を除き、機構に帰属」すると定義しており、これにより、専門のデータ管理部門がデータ管理公開を行う体制が構築されている。
 機構の船舶や潜水船による航海や潜航調査で取得したデータ・サンプルは、機構内の規定類で定められた公開猶予期間を経た後に公開される。その際に、国連海洋法条約や、外部資金による研究計画などに基づいた特別な契約の有無などに基づいて公開の可否を検討し、公開可能と判断されたものを、このようなデータの統合サイトである「JAMSTEC航海・潜航データ探索システム(DARWIN)」から公開している。公開済みの航海数は、2019年1月末で1,929航海に、潜航数は5,961潜航となっている。2019年1月末の公開済みのデータ件数は13,914件である。サンプルについては、岩石サンプルのメタデータ、堆積物コアサンプル、生物サンプルを合わせた公開数が約69,384件となっている。
機構が保有する潜水調査船や無人探査機により取得された膨大な数の深海の映像や画像は「深海映像・画像アーカイブス(J-EDI)」で公開されている。公開している映像の総時間は約38,000時間(平成30年度末時点)、公開している画像の総枚数は約150万枚(平成30年度末時点)となっている。 公開している映像や画像は、公開猶予期間を経過したものであり、映像や画像とともに撮影場所、撮影内容(生物名や事象)、調査内容などの詳細な情報も公開している。深海映像・画像アーカイブスでは、新規の深海映像画像の分類作業を継続的に実施しており、また深海に存在するデブリが映る映像画像に注目して詳細な分類作業を行ない「深海デブリデータベース」として公開も行っている。深海デブリデータベース内のデータを用いて論文化したことにより、UNEPサイトで引用されるなど、世界的にも話題となっている。
機構が公開するデータの将来的な利用促進とオープンサイエンスの取組として、調査航海で得られたデータセットに対するデジタルオブジェクト識別子(Digital Object identifier:DOI)の付与の環境を整備し、DOI付与を開始するとともに、研究者が持つデータセットへの展開に向けて研究者の状況把握と対応検討を進めている。