日本地震学会2019年度秋季大会

講演情報

D会場

特別セッション » S23. オープンデータと地震学

[S23]PM-2

2019年9月17日(火) 15:15 〜 16:00 D会場 (時計台国際交流ホールI)

座長:加納 靖之(東京大学地震研究所)、汐見 勝彦(防災科学技術研究所)、鶴岡 弘(東京大学地震研究所)、森重 学(海洋研究開発機構)

15:15 〜 15:30

[S23-16] 日本の高校生によるアナログ地震計記録のデジタル化への取り組み

*石井 水晶1、盛永 俊弘2,3 (1. Department of Earth & Planetary Sciences, Harvard University、2. 学校改革フォーラム、3. 京都大学大学院教育学研究科)

一般的に研究に使われる地震計のデータは約40年前からのデジタルデータです。しかし、地震計は100年以上前に作られ、アナログ記録は世界中にほぼ100年間分存在します。日本は世界的にも早い時点で地震計設置が進んだ国ですので、アナログ記録も数多く残されています。アナログデータにアクセスすることができれば、地震データの利用可能期間は2倍以上長くなり、巨大地震や珍しい地震や、ゆっくりと変化する地下構造などの現象を研究するための機会を提供します。この貴重なデータを使用可能にする最大の障害はデータのアナログからデジタルへの変換です。この発表では、デジタル化の取り組みと、データベースの構築に一般の人々(高校生など)が参加する可能性について説明します。

デジタル化の第一歩は写真媒体などで残されている地震計記録をスキャンなどでコンピューター画像として読み込む事です。地震計記録は一般的に使用される紙よりもサイズが大きいので、大判スキャナーなどが必要となります。残されている記録が多いので、このスキャンも大変な作業となりますが、コンピューター画像だけでは、現代の分析には使えません。画像を時系列に変換する必要があります。このため、ハーバード大学では地震計画像のデジタル化ソフト、DigitSeis、を開発しています。このソフトでは出来る限りの自動化を目指していますし、将来的には人工知能を使用する計画ですが、今の時点ではかなりの部分が手作業に頼っています。人工知能を使用する為には膨大な育成用データが必要ですが、地震計記録のデジタル化のデータベースは現在存在しません。このデータベースを構築するのと、研究に使用されうるデータを作成する為に2018年からデジタル化の作業を日本の高校生に協力してもらっています。

生徒はまず、DigitSeisソフトの仕様方法をトレーニング画像の解析を通して学びます。解析ファイルはインターネットを通してハーバード大学に提出され、問題点などを指摘したフィードバックが足されたファイルが生徒に返されます。生徒はフィードバックを元に修正作業を行い、再度解析ファイルを提出します。このトレーニング画像の解析の問題点が解消され、合格すると、デジタル化されたことのない画像をデジタル化することに進みます。解析が終了したデータ(SACフォーマット)はハーバード大学のウェブページで公開されています。このプロジェクトは地震学者が使用するためのデジタルデータへの変換を行うのが1つの目的ですが、早い段階で科学や研究に学生を参加させる絶好の機会でもあります。まだまだソフトの改善などの課題も沢山ありますが、高校生がデジタル化された記録を使って簡単な研究に取り組めたりする可能性を広げていきたいと考えています。このプロジェクトの最終目的は日本の地震学者によって日本のアナログ記録を日本の高校生がデジタル化する事ですので、日本の地震学者や教育者の方の参加を募っていきたいと思います。