The 2021 SSJ Fall Meeting

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Poster session (Oct. 15th)

Regular session » S01. Theory and analysis method

P

Fri. Oct 15, 2021 3:30 PM - 5:00 PM ROOM P1 (ROOM P)

3:30 PM - 5:00 PM

[S01P-03] Numerical simulation of seismoacoustic wave propagation on and beneath the sea surface: Evaluation of deamplification effect due to a seawater layer

〇Takeshi NAKAMURA1, Hiroshi TAKENAKA2 (1.Central Research Institute of Electric Power Industry, 2.Okayama University)

水平成層構造における地表や地中の変位を評価するために、周波数および波数領域における各層の変位・応力の応答を層境界でつないで計算を行うpropagator行列法(Haskell, 1953)が古くから用いられている。これは、構造の上層側と下層側がともに固体である場合、固体-固体間の層境界で変位と応力の成分が連続量であることを基に、各層の弾性定数や厚さ等を変数とした伝達関数の行列(propagator行列)の重ね合わせから変位を求める手法である。しかし、海域のように、海水などの流体層が入った構造の場合では、固体-流体境界で変位や応力の不連続成分があるため、固体-固体境界と同様の演算を行って変位を求めることができない。沢飯・他(1995)は、最上層を流体層として、Haskell (1953)が示した流体中におけるpropagator行列を用い、通常採用されることが多い演算処理とは異なる、下層から上層に向かって各層の行列を重ね合わせる演算を採用することで固体-流体境界条件の破綻を避け、流体層を含む構造に対する固体層上端における応答特性を示した。また、Okamoto and Takenaka (1999)は、propagator行列法ではなく反射行列・透過行列法を用い、流体内で応力変数の代わりに圧力変数を用いることで固体-流体の境界条件を満足する反射行列・透過行列を示し、不規則形状の場合を含む海底面での変位波形計算の安定的な解法を示した。

近年の海底地震観測網の充実により、海底における地震動の特性を示した成果が多く出ている(例えば、Nakamura et al. (2015); Kubo et al. (2018))。また、CTBTOのIMSをはじめとする海中のハイドロフォン観測点のデータを使い、T相を含む、遠方から伝播した海中の地震波(もしくは水中音響波)の特徴を示した成果も出ている(例えば、Yildiz et al. (2013))。一方、海震を含む、海面や海中における震源近傍の地震動(もしくは水中音響波による振動)は、観測例が非常に少なく(例えば、塩谷・笹 (2013))、理論的評価も限られている。本研究では、海面や海中における震源近傍の地震動評価を行うために、固体において点震源の不連続ベクトルからの地震波伝播をpropagator行列法で求める中村・竹中(2005)およびNakamura and Takenaka (2006)の手法を拡張し、固体-流体の境界条件と流体内の各層でのpropagator行列を導入した。そして固体中の点震源に対する海面および海中における水中音響波形の計算を行い、海水層の存在による増幅や減幅の影響評価を行った。

固体-流体境界条件および流体である海水層の導入にあたり、固体-流体間で変位と応力の法線成分の連続性を保ち、さらにオイラー方程式により固体側の応力の法線成分から流体側の変位の水平成分を求める行列を準備した。沢飯・他(1995)と同様に、下層から上層に向かって行列演算を行い、固体-流体境界では先述の行列を適用する。海水層においては、流体中の音波に関するpropagator行列で計算を行う。ただし、下層から上層へ向かって計算を行う場合、その逆向きの場合と比べ、自由表面と放射境界条件から導かれる応答式がやや複雑となる。さらに、層厚や鉛直波数が関わる指数関数項が増え、不連続ベクトルを導入した計算では安定性が低下し、高周波や層が厚い構造での計算は注意を必要とする。

計算で使用した構造および震源と、計算結果例を図に示す。各深さ位置における観測点のpropagator行列法による波形を確認したところ、海底の固体側においては、SH波の伝播における自由表面であることから、大きな振幅が水平成分に現れた。しかし、固体-流体間で変位の水平成分が不連続かつ海中でS波が伝わらないため、海底近傍の海水側においては、固体側と比べて波形が大きく変わり、水平成分の振幅は鉛直成分と同程度にまで小さくなることを示した。その鉛直成分については、固体-流体間で連続であるため、海底の固体側と海水側で同じ波形として現れた。海面における鉛直成分については、主に自由表面の影響により、海底と比べて水中音響波が増幅することを示した。今回の計算の場合では、その増幅した振幅の大きさが、海底の固体側における水平成分の半分程度の大きさとなった。海面の水平成分については、海面で垂直応力とその水平方向微分、海面および海中でせん断応力が0であることから、波形振幅は現れない。