The 2021 SSJ Fall Meeting

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Room D

Regular session » S02. Seismometry and monitoring system

AM-2

Fri. Oct 15, 2021 11:15 AM - 12:15 PM ROOM D (ROOM D)

chairperson:Shigeki Nakagawa(Earthquake Research Institute, the University of Tokyo), Tomomi Okada(Tohoku University)

11:30 AM - 11:45 AM

[S02-02] Long-term test for practical mobile tilt observation at the seafloor off Boso Peninsula 2

〇Hajime SHIOBARA1, Toshinori Sato2, HyeJeong Kim1, Yuki Kawano1, Haruka Nagai1, Aki Ito3, Masanao Shinohara1, Hiroko Sugioka4 (1.ERI, Univ. Tokyo, 2.Chiba Univ., 3.JAMSTEC, 4.KOBEC, Kobe Univ.)

1. はじめに
 機動的な海底傾斜変動観測の実用化に向け、新型の広帯域海底地震計(BBOBS-NX)[1]を基にしたBBOBST-NXによる長期観測について2014年・2017年の地震学会で報告した[2][3]。今回は、2015年に設置し5年ぶりに回収した房総半島南東沖に設置していたBBOBST-NXの観測結果を紹介する。

2. 計測・処理方法
 BBOBS-NXでは独立した広帯域センサー部が海底面に大半埋設されており、底層流の影響による傾斜変動はほぼ無い。自由落下して貫入するため海底堆積層との結合も良好である。広帯域センサーの水平動2成分のマスポジション信号(加速度出力)を速度信号3成分と併せ連続記録するBBOBST-NXは、広帯域地震・傾斜変動を同時観測できる。実際に得られた記録には、広帯域センサーの経時変化とマスのセンタリングによるシフトが見られる。シフトの前後で記録はほぼ連続しており、シフト分を補正した後に適当な関数(1次+対数)をgnuplotを使い当てはめ、経時変化を差し引き、傾斜変動の記録を得る。海底での潮汐による傾斜変動は約0.1µradと小さいがbaytap08プログラム[4]を適用して潮汐成分を取り除く。

3. 長期試験観測
 本観測は房総半島南東沖で繰り返しSSEが発生している領域で2015年7月から2年間の長期試験観測を予定した。これまでの同様な観測時には数10〜100m離れた場所に流向流速計を設置して水温等も記録していたが、この観測では自記式精密水温計(10分サンプリング)のみをBBOBST-NXの外装に取り付けた。2017年・2019年に回収航海があったが悪天候などで作業出来ず、2020年10月のYK20-15S「よこすか・しんかい6500」航海でやっと回収し、観測を継続するために新規のBBOBST-NXと海底電磁流向流速計(OBEMC、距離25m)、および別2地点での海底圧力計(OBP)の設置も行った。BBOBST-NXは設置から5年経過していたが内部時計はバックアップ電池で稼働しており、データの時刻精度も確保出来た。水温データは4年以上取得されていた。

4. 水温変化と傾斜変動
 今回のマスポジションデータは、2年間でマスのセンタリングがほぼ無いほどに安定していた。基本的な処理を済ませた傾斜変動には、2成分共に水温変化との明確な関連性が見えた(図)。以前、同じ個体のセンサーで取得した結果[5]では、傾斜変動と水温変化の関係が明確に示せなかったが、今回はセンサー近傍での水温計測のためか温度依存性(ほぼ-30µrad/°C)が確認できた。過去の傾斜変動と水温変化の関係を見て、全て共通して負の温度係数で傾斜値が変化していることから、水塊移動によるものではなく、センサー自体の機械的温度依存性であると判断できる。この水温変化の影響を傾斜変動から除去する方法を試し、周波数領域で温度係数を推定してその分を差し引くことにした。同じセンサーによる過去2回の傾斜記録に対しても同様な処理を行ったが、水温計測地点が離れていたためか、温度係数がやや異なった。この処理後でも2014年のSSE時の傾斜変動は明確にあると見える。

5. まとめ
 今回はSSEが起きていない2年間のBBOBST-NXによる傾斜観測から、水温変化の計測と温度係数の推定が重要なことが明確となった。温度係数のオーダーから、水温変動が0.1°Cにも達しないような深海底では問題にならないかもしれないが、今後、傾斜変動観測するには、埋設される広帯域センサー部内での精密温度測定が必要になると考えている。

参考文献
[1] Shiobara, H., T. Kanazawa and T. Isse, IEEE-JOE, 38, 396-405, 2013.
[2] 塩原・他, 日本地震学会秋季大会, C32-09, 2014.
[3] 塩原・他, 日本地震学会秋季大会, S02-07, 2017.
[4] Tamura, Y., et al., GJI, 104, 507-516, 1991.
[5] Shiobara, H., et al., Front. Earth Sci., 8:599810, 2021.