The 2021 SSJ Fall Meeting

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Poster session (Oct. 14th)

Regular session » S03. Crustal deformation, GNSS, and gravity

P

Thu. Oct 14, 2021 3:30 PM - 5:00 PM ROOM P1 (ROOM P)

3:30 PM - 5:00 PM

[S03P-04] Systematic-detection of short-term slow slip events in the Alaska subduction zone

〇Yutaro OKADA1, Takuya NISHIMURA2 (1.Graduate School of Science, Kyoto University , 2.Disaster Prevention Research Institute, Kyoto University)

スロー地震は通常の地震と比べゆっくりと断層がすべる現象であり、環太平洋地域の複数の沈み込み帯で観測されている(e.g., Obara and Kato, 2016)。スロースリップイベント(以下、SSE)は測地観測機器により観測されるスロー地震の一種で、数か月間から数年間継続する長期的SSE(以下、L-SSE)と数日間から数週間継続する短期的SSE(以下、S-SSE)に大別される。また一部地域で発生するSSEは同じくスロー地震の一種であるテクトニック微動(Obara, 2002)と時空間的に同期することが知られており、この同期現象はEpisodic Tremor and Slip(以下、ETS)と呼ばれる(Rogers and Dragert, 2003)。北アメリカプレートの下に太平洋プレートが沈み込むアラスカ沈み込み帯では、L-SSEや微動が先行研究により検出されている(Ohta et al., 2006; Wei et al., 2012; Wech, 2016)。一方で、S-SSEが定常的に発生している可能性が微動活動とそれに同期する地表変位により示唆されているものの、この地域において個別のS-SSEとしてモデル化されたイベントは1例しかない(Rousset et al., 2019)。そこで、本研究ではアラスカ沈み込み帯において個別のS-SSE検出を系統的に実施することで、この地域のS-SSEの活動様式とL-SSEや微動との時空間的関係の解明を試みる。
 本研究ではNevada Geodetic Laboratory(http://geodesy.unr.edu/)によって解析されたGNSS観測局86局の2007年4月から2021年3月までの期間の日座標時系列(Blewitt et al., 2018)を用いた。初めに、181日間の座標値とSSEの時間発展を模したテンプレートの間の相関係数を計算することで、各観測局・成分の時系列からS-SSEが発生したおおよその時期を抽出する。次に、SSEが沈み込むプレート境界面上で発生した場合に期待される地表変位で相関係数を重みづけして平均することで、S-SSEの候補となるイベントを検出する(Rousset et al., 2017; Okada et al., in prep.)。続いて候補イベントの矩形断層モデル(Okada, 1992)と継続期間を推定する。継続期間は座標時系列のノイズレベルと推定した断層モデルから計算される変位によって重みづけされた各観測局・成分の181日間の座標値を重合した時系列を用いて推定した(宮岡・横田, 2012; Rousset et al., 2017; Okada et al., in prep.)。最後に、断層モデルと継続期間の推定結果に閾値を適用することで、候補イベントをS-SSEへと分類した。
 その結果、アラスカ沈み込み帯において14年間で28個のS-SSEの検出に成功した。検出されたS-SSEの大部分は西経151°より東に分布し、西経150°と西経148°の深さ40 km付近にS-SSEのクラスターが発見された。S-SSEの空間分布は1964年に発生したアラスカ地震の余効すべり域(Suito and Freymueller, 2009; Huang et al., 2020)とおおよそ一致しており、また西側のクラスターはクック湾奥部のL-SSEのすべり域(Ohta et al., 2006; Fu and Freymueller, 2013)と一致していた。検出されたS-SSEの規模はMw 6.1から6.6であり、継続期間は2日間から57日間であった。また、S-SSEの地震モーメントと継続期間の分布は、スロー地震のスケーリング則(Ide et al., 2007)に大きく矛盾しない。検出されたS-SSEの一部は、Rousset et al. (2019)で示唆されたように、微動活動(Wech, 2016)と時空間的に同期するETS型のイベントであった。

謝辞
 本研究ではAaron Wech博士に提供していただいたテクトニック微動カタログと、Nevada Geodetic Laboratoryによって解析されたGNSS日座標データを使用した。本研究で用いたGNSS観測局は、UNAVCO、University of Alaska, Fairbanks、United States Coast Guard、Alaska Volcano Observatory、Federal Aviation Administration、National Oceanic and Atmospheric Administrationにより設置されたものである。