The 2021 SSJ Fall Meeting

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Room A

Regular session » S04. Tectonics

PM-1

Fri. Oct 15, 2021 1:30 PM - 2:45 PM ROOM A (ROOM A)

chairperson:Atsushi Nakao(JAMSTEC), Shinji Yoneshima(Earthquake Research Institute, the University of Tokyo)

2:30 PM - 2:45 PM

[S04-05] Triggering mechanism of volcanic eruptions by large earthquakes

〇Takeshi NISHIMURA1 (1.Department of Geophysics, Graduate School of Science, Tohoku University)

1707年の宝栄地震(M8クラス)の発生から49日後に富士山が噴火したり(宝永噴火),フィリピンではM7.8ルソン地震の約1年後に20世紀最大の噴火といわれる1991年ピナツボ噴火が発生したりしたように,大地震が発生すると近くの火山が噴火することはよく知られている.このような大地震による火山噴火の誘発現象は,過去の記録をもとにした調査から起こりうることが示され,そのメカニズムとして,大地震の応力解放に伴う火山体の静的膨張や収縮,あるいは,強震動が提案されている.これまで,様々な視点からこれらのメカニズムの可能性を指摘する研究が報告されてきたものの,必ずしも主要因は明らかとなっていない.今回,信頼性の高いカタログデータをもとに,大地震による静的・動的歪みの火山噴火への影響を調べ,噴火誘発の条件と噴火発生の可能性を明らかにしたので報告する.
 地震のデータは,1976年から世界規模の地震観測によって整備されたGlobal CMTカタログを利用する.火山噴火は米国スミスソニアン博物館Global Volcanism Programの噴火カタログを使う.大地震発生前後10年間の噴火の誘発現象は調べるため,噴火データは1966年から2020年の55年間,地震のデータは1976-2010年の35年間を解析する.なお,漏れなく記録されている,マグニチュード5以上の地震,火山爆発指数(VEI)が2以上の中規模以上の噴火のみを解析対象とする.
 噴火誘発のメカニズムとしては,これまで主要因のひとつとして提案されている動的歪み及び静的歪み(膨張/圧縮)を検討する.動的歪みは強震動と関係するので,地震のマグニチュードと火山までの距離などから求められる強震動予測式(司・翠川1999)を利用する.また,静的歪み場は,Okada (1992)の解を利用し,モーメントテンソル解をもとに火山下5kmでの体積ひずみを計算する.大地震の発生時刻を基準に経過時間をとり,静的歪みと強震動の大きさをもとに噴火発生数を調べた.その結果,強震動の大小の違いによっては,大地震の発生前後で噴火数には違いが見られないことがわかった.一方,強震動の大小にかかわらず,静的歪みが0.5micro strain 以上の膨張場となると,噴火発生数が大地震前の2-3倍になることがわかった.この噴火数の増大は,大地震発生から10年程度は続く.膨張場の形成により,気泡成長によってマグマの密度低下と浮力の獲得,火道の閉塞の緩和が促され,噴火が発生しやすくなったと考えられる.
 噴火を誘発される火山の特徴を調べるため,火山の噴火履歴を調べた.その結果,噴火を頻繁に起こしている火山の方が誘発されやすい傾向があるものの,静穏期の長い火山でも噴火が誘発されることがわかった.また,大地震により静的歪みが0.5 micro strain以上の膨張場となるのは,世界で年間2-3火山であり,そのうちの15-25%で VEI 2以上の噴火が発生すると見積られた.この数はそれほど大きくないが,VEI 1の小規模な噴火の発生頻度はVEI2の約7倍であるので,大地震の発生により噴火が発生する可能性は,この見積もりよりは大きくなると考えられる.