The 2021 SSJ Fall Meeting

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Room C

Regular session » S07. Structure and dynamics of the Earth and planetary interiors

PM-1

Sat. Oct 16, 2021 2:00 PM - 2:30 PM ROOM C (ROOM C)

chairperson:Takehi Isse(Earthquake Research Institute, the University of Tokyo)

2:15 PM - 2:30 PM

[S07-02] Impact of anisotropic thermal conductivity on the thermal structure of the Tohoku subduction zone, Northeast Japan

〇Manabu MORISHIGE1, Miki TASAKA2 (1.Earthquake Research Institute, The University of Tokyo, 2.Shizuoka University)

(背景・目的)
マントルでは主に転位クリープによる変形に伴い、その構成鉱物の結晶軸がある特定の方向に揃っていく。これは結晶選択配向と呼ばれる。その結果、マントル内部には地球物理学的な観測、例えば地震波速度や電気伝導度で見られるような異方性が生じる。一方、結晶選択配向による岩石の異方性がマントルの流れや温度に及ぼす影響に着目した研究例は少なく、粘性率の異方性を取り扱ったものが数件ある程度である。そこで本発表では、熱伝導率の異方性に焦点を当てる。マントル主要構成鉱物であるかんらん石の熱伝導率は結晶軸の方向により最大2倍程度異なることが知られている。研究対象地域は東北地方沈み込み帯とし、マントルウェッジにおける熱伝導率の異方性を取り入れることで、等方的な熱伝導率の場合に比べて温度構造がどの程度変わるのかを評価する。

(手法)
モデルは簡単のため2次元定常状態を仮定し、マントル構成鉱物としてかんらん石のみを考える。同じ変形様式に対しても、温度・応力・含水量などによって結晶選択配向が大きく異なる可能性が報告されている。そこでマントルウェッジ内かんらん石の結晶選択配向として、従来支配的であると考えられてきた[100](010)すべり系(Aタイプ)に加え、[001](100)すべり系(Cタイプ)、[100](001)すべり系(Eタイプ)も考慮する。また近年発表された地震学的解析結果を踏まえ、東北地方の前孤マントルは等方的である(つまり結晶軸がランダムな方向を向く)と仮定する。

(結果・議論)
熱伝導率の異方性が最も大きくなるのは上盤プレート底部とスラブ上面近傍となった。これらはマントルの歪みが最も大きくなる場所に一致する。またスラブ表面近傍の温度構造はスラブ表面に対して垂直な方向の熱伝導率によって主に決まる。例えばAタイプの場合ではスラブ表面に対して垂直な方向の熱伝導率が小さくなり、その結果熱伝導率が等方的な場合に比べて、スラブ直上マントルウェッジの温度が上昇、スラブ最上部の温度が低下する。ただしスラブ内部の温度は熱伝導率が等方的な場合に対して最大でも30℃程度しか変化しない。そのため、少なくとも今回のモデル設定下では熱伝導率の異方性の影響は限定的であると言える。しかし今後、沈み込むスラブに対しても熱伝導率の異方性を考慮することで温度構造が大きく変わる可能性がある。