The 2021 SSJ Fall Meeting

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Poster session (Oct. 15th)

Regular session » S10. Active faults and historical earthquakes

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Fri. Oct 15, 2021 3:30 PM - 5:00 PM ROOM P6 (ROOM P)

3:30 PM - 5:00 PM

[S10P-02] Damages of stonewalls and seismic intensity distribution of the 1914 Sakurajima earthquake in Kagoshima city, Japan

〇Reiji KOBAYASHI1 (1.Kagoshima University)

1914年1月12日、桜島大正噴火が継続している中、マグニチュード (M) 7.1の地震が発生した(以降、1914 年桜島地震と呼ぶ)[例えば、今村 (1920)、Omori (1922)、宇津 (1979)].この地震による死者数は29人であり、桜島大正噴火の全体の死者数の半分を占めている[例えば、今村 (1920)].鹿児島市内においては12人が石垣または石塀の倒壊によって亡くなっている[鹿児島新聞記者十餘名 (1914)]。

この地震について小林・他 (2017) は武村・虎谷 (2015) の方法を使って住家の全潰率と全半潰率から鹿児島市内の震度を評価した。その結果、先行研究の今村 (1920) の震度IVや深見 (2000) の震度6弱の領域と、本研究の震度6弱以上の領域とは調和的であった。しかし、今村 (1920) の震度I~IIIや深見 (2000) の震度4~5強と、本研究の震度階級とはあまり調和的ではなかった。今村 (1920) や深見 (2000) では石塀倒潰率を考慮しているのに対し、本研究では考慮していないことが要因と考えられた。

そこで、深見 (2000) の方法を参考にして、石塀倒潰率を考慮した震度の評価を行った。深見 (2000) は「高級住宅街(平之・東千石・西千石など)においては、家屋倒壊率が0%であっても、石塀倒壊率が顕著(50%以上)な地域」を震度5強、「石塀倒壊率が数%~49%」を震度5弱とした。しかし、この方法の妥当性を定量的に検証したものはなかった。そこでこの妥当性を文献調査によって確認することにした。

内田 (1915) は鹿児島市で使われていた複数の石材の強度を検討しており、一部の種類を除いて極めて脆弱としている。さらに内田 (1915) は接合面に使われている材料や基礎などを詳しく検討している。今村 (1920) は内田 (1915) の結果をまとめて、1000 mm/s/s 前後の水平動で傾倒する、としている。震度と加速度とは単純には結びつけられないが、1000 mm/s/sであれば震度5弱は妥当であろう[例えば気象庁 (1996)]。

震度階解説表では、塀の被害の記述がある。現在の気象庁震度階級関連解説表では、塀の中でも、ブロック塀での記述となっている。東京都総務局災害対策部 (1983) は震度階解説表において、ブロック塀に加えて大谷石塀についても記述している。震度5弱で「施工の悪い大谷石塀は倒れるものがある」、震度5強で「大谷石塀はほとんど倒れる」としている。この解説表では、一応の目安として「……ものがある」という表現は「震度階に特徴的に現れ始めるといった程度の現象で、上記のように現象を量的に表現できかねる場合」(ここで、上記というのは、量的に表現できている他の目安を示している)、「ほとんど」は「80~90%」に対応するとしている。1914年の鹿児島市における石塀と、1980年頃の大谷石塀との違いが不明であるので、この記述をそのまま当てはめて良いかも不明ではある。しかし、深見 (2000) が採用した、倒潰率数%~49%を震度5弱、50%以上を震度5強とする評価基準は、東京都総務局災害対策部 (1983) の震度階解説表と大きく矛盾することはないように思われる。

本研究と深見 (2000) の方法を統合すると、武村・虎谷 (2015) の方法で震度4であっても、石塀倒潰率が5%以上50%未満の時に震度5弱と評価した(深見 (2000) の数%を本研究では5%とした)。また、武村・虎谷 (2015) の方法で震度4-5弱であっても、石塀倒潰率が50%以上の時に震度5強と評価した。

その結果、石塀倒潰率が50%以上である中央部の新照院町、平之町、西千石町において、震度4から震度5強に2階級大きくなり、その周囲でも震度が1階級大きくなった。これらの地域は氾濫原低地や三角州・海岸低地となっており、かつ盛土となっている。こうした地盤によって、家屋より石塀に影響しやすい強震動となったのかもしれない。

この一連の研究は小林 (2021, 地震第2輯) で公表された。