The 2021 SSJ Fall Meeting

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Room D

Regular session » S11. Various phenomena associated with earthquakes

AM-2

Fri. Oct 15, 2021 11:00 AM - 11:15 AM ROOM D (ROOM D)

chairperson:Shigeki Nakagawa(Earthquake Research Institute, the University of Tokyo), Tomomi Okada(Tohoku University)

11:00 AM - 11:15 AM

[S11-01] Turbidity current associated with 2003 Tokachi-oki earthquake recvisited

〇Ryoichi IWASE1 (1.JAMSTEC)

2003年9月26日04:50 JSTに発生した十勝沖地震(MJ 8.0)の際、震央の東南東約25 kmの海底に位置する釧路・十勝沖「海底地震総合観測システム」先端観測ステーション(水深:2540 m、以下「先端観測ステーション」)では、電磁流向流速計により最大流速が約1.5 m/s に達する混濁流が捉えられた。通常より流速が大きい状態は17時間以上継続し、この間サンプリング周波数 100 Hzのハイドロフォン信号上では特異な信号が検出された。その特徴は混濁流の到達後8時間は10 Hz未満の比較的広帯域の信号だが、その後はピーク周波数が 1 Hz程度の信号が約4時間継続している。後者のピーク周波数に関しては、衝突理論(Impact theory)を基にした河床土砂移動の研究において報告されている関係式から音源を構成する物体の直径を推定すると数十mの巨岩となってしまう(岩瀬, 2017)。
一方、同じ先端観測ステーションに取り付けられている音響層別流速計(acoustic Doppler current profiler, ADCP)について、1999年の設置以来2016年まで取得されたデータの復旧を進めている(岩瀬, 2021)。データ取得時の伝送エラーに起因するビットエラー等によりメーカー(Teledyne RDI Instruments)提供ソフトウェアWinADCPでは再生できないデータについても、メーカーのドキュメントを基にして直接ascii変換することにより、一部の再生不能データについても再生可能となっている。十勝沖地震時のデータについても同ソフトウェアでは混濁流の到達後の5時間までしか再生できない状態であったが、それ以降のデータも再生可能となった。そこで今回、この混濁流について改めて考察を行った。
ADCPは48層の鉛直流速プロファイルを取得している。各層の厚さは8 mで、最下層の海底からの高度は12 mである。サンプリング間隔は30分としている。Fig.1及びFig.2にそれぞれ最下層(高度12 m)及び高度76 mの流速プロファイル(水平流速、流向、及び鉛直流速)を示す。Fig.1では7時に混濁流が到達し、7時半に水平流速が1.5 m/s弱に達し、同時に下向きの流速が増加している。流向は当初南西向きの流れであり、18時以降徐々に西向きの流れが卓越している。一方、Fig.2で大きな流速はないものの、混濁流到達時には東向きの流れが卓越し、12時頃以降には北向きの流れが卓越しており、低層と上層での流れが異なる状況を示している。
一方、海底地形を見ると先端観測ステーション付近は南下がりの斜面となっており、必ずしも混濁流の流向と整合しているとは言えない。また最下層では観測期間を通じて西向きの流れが卓越している。
ADCPは流速だけでなく、音響信号の後方散乱強度も計測している。この散乱強度は、懸濁物量と相関がある。観測期間全体の傾向として、散乱強度は、春から初夏にかけてピークを有する傾向が見られる。岩瀬(2021)では静止画による海底画像観測における底生生物の増加傾向から、海面におけるスプリングブルームとの関係を指摘したが、その後、十勝川および釧路川水系の流量変化と比較したところ,比較的良い相関が見られることが分かった。このことから、雪解けや大雨による物質流入の可能性も考えられる。
以上の状況を整理して報告する。

参考文献
岩瀬(2017)、2017年度地震学会秋季大会講演予稿集、S11-01.
岩瀬(2021)、JpGU2021、AOS19-02.