The 2021 SSJ Fall Meeting

Presentation information

Room A

Regular session » S16. Subsurface structure and its effect on ground motion

AM-1

Fri. Oct 15, 2021 10:00 AM - 10:30 AM ROOM A (ROOM A)

chairperson:Yosuke Nagasaka(Port and Airport Research Institute), Kimiyuki Asano(Disaster Prevention Research Institute, Kyoto University)

10:15 AM - 10:30 AM

[S16-02] Long-period later phases in the east of Fukushima prefecture during the M7.4 off Fukushima earthquake on Nov. 22, 2016

〇Tomiichi UETAKE1 (1.Tokyo Electric Power Company Holdings, Inc.)

1.はじめに
2016年11月22日に福島県沖で発生したM7.4の地震は、地震規模が大きく、震源も浅い(JMA:25km、F-net:11km)ため、広域でやや長周期地震動が観測された。特に震央に近い福島県東部の広野町では周期6秒が卓越した顕著な後続波群が三成分に認められた。本研究では、福島県東部における後続波群の伝播に注目し、広野で観測された後続波群の特徴を明らかにする。

2.波群の伝播特性
福島県内のK-NET・KiK-netの記録を用いて、周期5秒以上の長周期速度波形を作成し、福島県東部域での波群の伝播性状を調べた。なお、水平動波形は、震央からの方位でRadial成分・Transverse成分に変換した。UD成分に見られる後続波は、浜通りの平野から双葉断層を越え、阿武隈山地、中通り、会津盆地まで追跡が可能である。見かけの群速度は、およそ3.0 km/sである。Radial成分にも同様な波群が認められた。一方、Transverse成分波形では、震央に近い海岸部での振幅は大きいが、広域で連続性の良い後続波が認められない。

3.海岸線沿いの波群の変化
各機関により福島県東部で行われている強震観測の記録をもちいて、広野町周辺での後続波群の変化を調べた。UD成分に見られる後続波群については、隣接する広野火力とFKS010での振幅がやや大きいものの、観測点間の連続性は広い範囲で良い。一方、広野火力での速度波形が振幅最大、継続時間最長となっている水平動の後続波群は、南北に延びる海岸線上では連続的に波形が変化しているが、やや内陸の観測点では後続波の振幅は小さく継続時間も短い。そのため、顕著な後続波群は海岸線にトラップされているように見える。なお、北側の海岸線では顕著な後続波は認められない。長周期地震動予測地図(暫定版)[Koketsu et al.(2012)]の地震基盤(Vs=3.2 km/s)深さを見ると、深さ変化は海岸線と平行ではでなく、海岸線に斜行する様に県南部が急激に深くなっている。構造変化の違いが後続波の励起に影響いている可能性がある。

4.アレイ解析による伝播方向の推定
広野町周辺の強震観測点5点をアレイ観測点と見なし、周期6秒における波動の伝播性状を把握し、地下構造モデルから計算される表面波速度との対応を検討した。広野の地下構造モデルは、防災科研のJ-SHIS深部地盤モデル(Ver3.2)にKoketsu et al.(2012)の地震基盤(Vs=3.2 km/s)以深の構造を組み合わせた。 UD成分のバンドパスフィルター波形(中心周期6秒)にセンブランス解析を適用すると、位相速度3.6 km/sでN61度E方向から伝播していると評価された。広野から見た震央の方位は約76度なので、ほぼ震央方向から伝播していると評価できる。構造モデルから計算されたRayleigh波速度と対比すると1次高調モードに対応する。 水平動のフィルター波形を用いた解析からは、N21度Eの方角から伝播する3.8 km/sの波が抽出された。到来方向は、震央より北側となっている。波の到来方向に直交する振動成分を抽出しているため、この波はLove波の1次高調モードに対応する。
なお、阿武隈山中の観測点5点(F-net:HRO地点を含む)を用いてUD成分のアレイ解析を行い、周期6秒の波動の速度を求めると3.1 km/sであった。Koketsu et al.(2012)のモデルを用いると、この速度は、HROにおけるRayleigh波の基本モードに相当する。

5.まとめ  
2016年11月22日福島県沖の地震(M7.4)により、福島県東部の広野周辺で観測された周期6秒の顕著な後続波群について分析を行った。 UD成分の後続波は、阿武隈山地の観測点とも連続性が良い。アレイ解析からは、広野周辺(海岸線付近)では一次高調モードのRayleigh波が、山地部では基本モードのRayleigh波が伝播していると考えられる。 広野周辺の記録の水平動に顕著な後続波は、県の南半分の海岸線にトラップされたように見える。アレイ解析結果は、震央方向より北から伝播する一次高調モードのLove波の可能性を示唆している。 ローカルな波群の生成・伝播には、地下構造の変化が影響していると考えられる。

謝辞
次の機関による強震観測記録を使用致しました。記して感謝いたします。 (国研)防災科学技術研究所、気象庁、(一財)電力中央研究所、(公財)地震予知総合研究振興会、東京電力HD(株)。