The 2021 SSJ Fall Meeting

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Award lecture

Regular session » S20. Commemorative lectures from SSJ award recipients

AM-1

Sat. Oct 16, 2021 9:00 AM - 10:30 AM ROOM A (ROOM A)

chairperson:Ryosuke Ando(University of Tokyo)

9:19 AM - 9:39 AM

[S20-01] [Invited] Seismic Source Physics from Multiple Perspectives

〇Naofumi ASO1 (1.Tokyo Institute of Technology)

地震現象は、断層すべりという一見単純な現象として知られているが、実際には複雑で多様な現象である。そうした中にも普遍性を見出し、物理的な理解を目指すのが震源物理学である。私はこれまで、データ解析・シミュレーション・物理モデリング・臨時観測といった多様なアプローチにより、狭義の地震現象を主たる研究対象としながらも、広義の地震波動源の物理的理解に取り組んできた。

火山型深部低周波地震は、地殻下部での唯一の地震波動生成現象であり、その物理メカニズムの解明は、地殻深部からの流体供給過程等の理解に必要不可欠である。私は、このような特殊な地震を対象として、震源メカニズムや地震活動という観点から普遍的な特徴を探り[Aso et al., 2013; Aso and Ide,2014]、そうした特殊な地震の発生を駆動する物理モデルとして、マグマの冷却による熱応力の影響を提唱した[Aso and Tsai, 2014]。

また、断層破壊力学分野において、確率論的な考え方の導入を進めた。地震発生に関わる物理量や物理法則をすべて厳密に決定することは不可能で、決定論的議論には限界がある。こうした不確定性を確率論的な擾乱として考慮することで、より現実的な地震のモデル化手法を提案した[Aso et al.,2019]。シンプルなモデルながらも、クラック的・パルス的な通常地震のほか、スロー地震の細かな特徴まで再現することができ、断層破壊力学の常識を一変させる可能性を秘める。

多様な対象やアプローチを取り扱う中で、意識しつづけていることは、従来の固定観念にとらわれない多角的な視点である。例えば、アクティブなマグマティズムに起因する地震現象ではなく、マグマが冷える過程で地震が発生する可能性を提唱したり、決定論的な運動方程式が用いられ続けてきた断層破壊力学において、確率論的な運動方程式を導入したりするなど、従来の固定観念にとらわれずに、新たな方向性を切り開こうとしてきた。

今回の発表では、上記の研究内容を初めての方にもわかりやすく紹介したい。また、これまでの研究生活を取り巻いてきたエピソードに加え、私の考える研究像や研究者像についてもお話することで、特に学生をはじめとした若手の研究者にとって、研究の方向性や研究への取り組み方について考えるきっかけとなれば幸いである。