The 2021 SSJ Fall Meeting

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Room A

Special session » S21. Seismic spectral analyses for earthquake source physics, earth structure estimation, and strong motion assessment

AM-1

Thu. Oct 14, 2021 9:00 AM - 10:00 AM ROOM A (ROOM A)

chairperson:Takahiko Uchide(Geological Survey of Japan, AIST), Kazuhiro Somei(Geo-Research Institute)

9:30 AM - 9:45 AM

[S21-03] Spatial pattern in frictional properties on the subducting Philippine Sea Plate off the east of Kyushu Island

〇Takuji YAMADA1 (1.Ibaraki University)

1. はじめに
九州東方沖では、フィリピン海プレートの沈み込みに伴う地震が繰り返し発生している。本研究では、2003年1月から2020年12月に九州東方沖で発生した小地震(4.0 <= Mw <= 5.0)のうち、2.で説明するとおり、プレート境界面の摩擦特性を反映していると考えられる140地震を選び出し、応力降下量の解析を行った。

2. 解析地震の選択基準
本研究では深さ方向の震源決定精度を考慮して、Baba et al. (2002), Hirose et al. (2008), Nakajima and Hasegawa (2007) の推定したフィリピン海プレート境界面から±15 km の深さで起きた小地震(4.0 <= Mw <= 5.0)を選び、解析対象とした。
解析対象の地震の規模の下限と上限は、以下の理由から設定した。マグニチュードが3.5を下回る地震では、特に低周波数帯の信号-ノイズ比が悪かった。そこで、経験的グリーン関数(EGF)として用いる地震をMw3.5とし、コーナー周波数の決定精度を確保するため、解析対象地震はEGFと0.5以上のマグニチュードの開きをもつ地震(Mw >= 4.0)とした。また、応力降下量は各地震の断層面の大きさに応じた平均的値として求められるため、解析対象地震の断層面が大きすぎると、空間不均質性の議論に不適である。よって、解析対象地震の規模の上限はMw5.0とした。
なお本研究では、気象庁によって決定されたマグニチュードMjmaがモーメントマグニチュードMwに等しいと仮定しているが、この仮定の妥当性についても検討済みである。また、解析対象地震のうち、防災科学技術研究所によってメカニズム解が求められている地震については、フィリピン海プレートの沈み込みと調和的な節面を持つことを確認済みである。

3. 応力降下量解析
Yamada et al. (2021) の手法を用いて、応力降下量の解析を行った。まず、2003年から2020年に発生したMw3.5の地震のうち、解析対象の小地震(4.0 <= Mw <= 5.0)の震源から最短距離にある地震の観測波形をEGFとした。次に、解析対象の地震の観測波形スペクトルをEGFのスペクトルでデコンボリューションし、震源スペクトルがオメガ2乗モデルに従うとの仮定のもと、解析対象地震のコーナー周波数を求めた。最後に、断層面が円形であり、かつ破壊伝播速度がS波速度の90%であると仮定して、Madariaga (1976) のモデルを用いてコーナー周波数から応力降下量を計算した。

4. 結果および考察
小地震の応力降下量の解析結果から、プレート境界の摩擦特性、特に剪断強度の空間不均質分布を推定することができる(Yamada et al., 2021)。各地震の応力降下量の解析結果をもとに、緯度・経度それぞれ0.1度ごとに平滑化した応力降下量分布を図1.に示す。
北海道南東沖(Yamada et al., 2017)や東北地方東方沖(Yamada et al., 2021)の太平洋プレートの沈み込みに伴う小地震の解析結果と比べると、全体的に応力降下量が小さい。これは、九州東方沖のフィリピン海プレート上の摩擦強度が相対的に低いことを示唆していると考えられる。また、より小さな空間スケールでの結果に着目すると、1996年日向灘地震の震源域(図1.の赤枠A)の南隣に、応力降下量が大きい領域が見られる。すなわち、この領域では剪断強度が高く、日向灘地震の際にバリアとして働いたのかもしれない。
小地震の応力降下量の解析結果から推定される摩擦特性の空間分布は、動的破壊シミュレーションの剪断強度分布として使用することを通して、強震動予測の精度向上にも貢献できると考えられる。

参考文献:
- Baba et al. (2002), PEPI, https://doi.org/10.1016/S0031-9201(02)00044-4
- Hirose et al. (2008), JGR, https://doi.org/10.1029/2007JB005274
- Madariaga (1976), BSSA, 66 (3): 639–666
- Nakajima and Hasegawa (2007), JGR, https://doi.org/10.1029/2006JB004770
- Yagi et al. (1999), GRL, https://doi.org/10.1029/1999GL005340
- Yamada et al. (2017), PEPS, https://doi.org/10.1186/s40645-017-0152-7
- Yamada et al. (2021), EPS, https://doi.org/10.1186/s40623-020-01326-8

謝辞:本研究では、Hi-net(防災科学技術研究所)、気象庁、鹿児島大学、九州大学、高知大学の観測点の地震波形データと、気象庁の一元化震源およびP, S検測値を使用しました。記して感謝いたします。