Japan Association for Medical Informatics

[2-B-2-01] DKDの考え方、疫学、治療戦略

平川 陽亮1、南学 正臣1 (1. 東京大学大学院医学系研究科 腎臓・内分泌内科)

 糖尿病には、その予後を規定する様々な合併症が生じるが、腎臓の障害はその主要な合併症の1つである。近年の糖尿病患者における病態の変化に伴い、アルブミン尿やタンパク尿を伴わずに GFR が低下して末期腎不全に至る患者が増えてきている。この臨床経過の変化の原因としては、近年の血糖コントロールの改善、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)やアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)の使用による一定の腎保護効果、そして患者の高齢化に伴う加齢による腎機能低下や動脈硬化の影響、などが挙げられている。これらの患者を Diabetic Nephropathy(糖尿病腎症)としてひとくくりにまとめることは適切でないことから、Diabetic Kidney Disease(DKD、糖尿病性腎臓病)と呼ぶようになっている。この病名は、アメリカ糖尿病学会のガイドラインや日本腎臓学会による「CKD診療ガイドライン2018」にも盛り込まれ、ICD11にも記載されている。
 本邦でのDKDの実態を把握するため、EHRから生成したビッグデータ(J-DREMS, J-CKD-DB)、大規模コホートの解析が進んでいる。我々の解析では、糖尿病が患者のうち約半数がDKDに罹患しており、特にアルブミン尿やタンパク尿を伴わずにGFRが低下している古典的な糖尿病腎症に該当しない患者はDKDの約2割を占めている。今後、柏原理事長のリーダーシップの下で、日本医療情報学会、日本糖尿病学会と連携して、更にDKDの実態調査と病態解明を進めていきたい。