Japan Association for Medical Informatics

[4-A-1-03] 機械学習を用いたリアルタイム診療イベント予測表示システムによる診療支援の可能性 ~小児循環器領域の場合~

佐藤 杏莉1、狩野 佑介1、下西 健太2、上田 秀明3、杉山 真哉1 (1. キヤノンメディカルシステムズ株式会社 研究開発センター, 2. キヤノンメディカルシステムズ株式会社 ヘルスケアIT第二事業部, 3. 神奈川県立こども医療センター 循環器内科)

Clinical Decision Support, Prediction, Usability, Explainability, Machine Learning

【背景】近年、疾患の発症や重症化、急変といった診療イベントのリスクを評価し、初期対応やコントロールに貢献することが期待されている。診療イベントの予測ではしばしば性能や精度が意識されてきたが、説明可能性にも注目が集まり始めている。

【目的】診療イベントを予測するモデルを開発し、その予測結果と予測の根拠をリアルタイムで提示するシステムを構築、有用性を検証することである。

【対象】予測モデル開発の対象患者は、2015-2017年の3年間に先天性心疾患で入院した7歳未満の患者475人である。予測対象の診療イベントは、入院中の急性心不全の発生とした。

【方法】電子カルテから抽出したバイタルサイン、検体検査、尿量および体重の過去データから時系列変化に関する特徴量65種類を計算し、2日以内に急性心不全の発生(以下、アラート)有無を予測するランダムフォレストモデルを開発した。また、電子カルテおよびPACSと接続し、予測モデルを用いてアラート有無を判定する診療支援システムを開発した。システムには、入院患者のアラート履歴をタイムライン上に一覧表示し、予測モデル計算に用いたデータをアラートの根拠として表示した。患者個別画面では種々の診療データを統合的に閲覧できるようにした。

【結果】過去データについてアラート有無をAUC=0.87で予測できた。診療支援を想定したアラート表示を行うシステムを構築することができた。

【考察】機械学習を用いた診療イベントの予測では、誤検出を完全になくすことは困難なため、簡便に予測の妥当性を判断できる提示上の工夫が診療支援システムでは重要である。

【結論】機械学習モデルにより予測した診療イベントのアラートおよび根拠データの、リアルタイム表示による診療支援の可能性が示された。