2020年度全国大会(第55回論文発表会)

講演情報

都市計画論文

講演番号[129]-[136]

2020年11月8日(日) 09:00 〜 12:00 第IV会場

司会:小林 敏樹(北九州市立大学)、宮川 智子(和歌山大学)

10:00 〜 10:20

[132] 北海道天塩郡豊富町における湯治者と地域社会の関係の段階的変容

○山川 冴子1、後藤 春彦2、森田 椋也3、山崎 義人4 (1. 早稲田大学院創造理工学研究科、2. 早稲田大学理工学術院、3. 早稲田大学理工学術院総合研究所、4. 東洋大学国際学部国際地域学科)

キーワード:湯治者、ヘルスツーリズム、来訪者、地域資源、ウェルネス、豊富町

豊富町では2000年頃から、地域外のアトピー性皮膚炎患者が湯治のために訪れ始めた。本研究では、2019年調査時までの湯治者受け入れ体制の変化を3つの時期で捉えた。
 一期では、行政により湯治者向けの町営施設が整えられたものの、湯治者にとって療養以外の行動は難しい環境であり、人間関係も湯治者間に止まっていた。二期では、民間のサービスやイベントの拡充により、湯治者の居場所が広がった。中でもコンシェルジュデスクは、湯治者の行動に大きく寄与した。湯治者間のコミュニティの充実により、地域に貢献する湯治者もこの時期から見られ始める。三期では、地域に移住した湯治者による温泉街、市街地双方での地域貢献が見られるようになる。このことが後続の湯治者の市街地での行動を容易にし、行動の選択肢を広げるきっかけとなった。
 本事例では、新参の湯治者に対して古参の湯治者による治療面に止まらない広義のピアサポートが確認された。かつて来訪者の立場だった人材が来訪者の窓口を担い、その役割を後続の来訪者がまた引き継いでいけるような仕組みを来訪者の受け入れ体制に取り込むことが、ヘルスツーリズムの持続可能性を高める上で有用であると考えられる。