[PA014] 小学生の適応を高める要因の検討
居場所感の観点から
キーワード:居場所感, 心理的適応, 学校適応
[問題と目的]
文部科学省(2004)の「子どもの居場所づくり新プラン」を契機に,近年居場所づくりの実践が数多く行われている。しかしそれらの多くは居場所の発達段階による差異を考慮していないという問題を孕んでいる。これまでの研究で,青年期に関しては居場所の適応的な効果が検証されているが,現時点で小学生の適応につながる要因について居場所の観点から検討したものはみられない。青年期における居場所はアイデンティティとの関連が指摘されているが,児童期においてはアイデンティティ達成がまだ課題となっていないため,青年期とは異なる様相を示すことが考えられる。そこで本研究ではEriksonの漸成発達理論における第Ⅳ段階「勤勉性」の概念を用い,小学生と青年それぞれの心理的適応および学校適応に,居場所感と「勤勉性」がどのように関連するのかを検討する。
[方法]
□調査対象者 兵庫県内の小学生(有効回答数117名,男子63名,女子54名,兵庫県内の看護学校・専門学校生(有効回答数96名,男子25名,女子69名,不明2名)。看護学校生および専門学校生はそれぞれ30名から50名規模のクラスを単位として授業等多くの活動を行っている。
□調査内容 ◇居場所感 石本(2010)の居場所感尺度を用い,クラスおよび家族場面について回答を求めた(計26項目,5件法)。◇勤勉性 宮下・池原(2009)の勤勉性尺度を用いた(計10項目5件法)。◇心理的適応 Rosenberg(1965)によって作成されたSelf-Esteem-Scaleについて,福岡県新生活推進部青少年アンビシャス運動推進室(2009)が小中学生向けに翻訳したものを用いた。ただし,山本・松井・山成(1982)による邦訳版について,内容的に異質である(谷,2001)とされている項目8に対応する項目(もっと自分を尊敬できたらいいなと思う)を除いた9項目を用いた(5件法)。◇学校適応 古市・玉木(1994)によって作成された学校生活享受感尺度10項目を用いた(5件法)。
[結果と考察]
小学生および青年のデータを用い,勤勉性および居場所感尺度の平均値と適応感尺度の平均値との相関係数を算出した(Table1)。その結果,心理的適応と勤勉性,居場所感全ての相関係数において弱から強程度の有意な正の相関がみられた。特に小学生の心理的適応と勤勉性との間に強い相関がみられ,青年においても中程度の相関がみられた。岡田(1999)に倣い相関係数の差の検定を行ったところ,全ての得点において小学生と青年で有意な差が認められた。このことから,特に小学生の心理的適応に勤勉性が強い影響を与えている可能性が示され,小学生の段階では大人の肯定的な関わりにより自尊心を育むことができる可能性がうかがわれた。一方学校適応においては,小学生において勤勉性および家族有用感以外の居場所感得点と弱から中程度の相関がみられたが,青年においては勤勉性およびクラス有用感との間に中程度の相関がみられたのみであった。中でも勤勉性が小学生と青年の学校適応に関連する一方で,小学生の学校適応に中程度の相関を示しているクラス本来感が,青年ではほぼ無関連であった。このことより,青年においても自身のコンピテンスに関わるような感覚がクラスの友人との間でありのままでいられることよりも学校適応に影響を与える可能性が示唆された。
文部科学省(2004)の「子どもの居場所づくり新プラン」を契機に,近年居場所づくりの実践が数多く行われている。しかしそれらの多くは居場所の発達段階による差異を考慮していないという問題を孕んでいる。これまでの研究で,青年期に関しては居場所の適応的な効果が検証されているが,現時点で小学生の適応につながる要因について居場所の観点から検討したものはみられない。青年期における居場所はアイデンティティとの関連が指摘されているが,児童期においてはアイデンティティ達成がまだ課題となっていないため,青年期とは異なる様相を示すことが考えられる。そこで本研究ではEriksonの漸成発達理論における第Ⅳ段階「勤勉性」の概念を用い,小学生と青年それぞれの心理的適応および学校適応に,居場所感と「勤勉性」がどのように関連するのかを検討する。
[方法]
□調査対象者 兵庫県内の小学生(有効回答数117名,男子63名,女子54名,兵庫県内の看護学校・専門学校生(有効回答数96名,男子25名,女子69名,不明2名)。看護学校生および専門学校生はそれぞれ30名から50名規模のクラスを単位として授業等多くの活動を行っている。
□調査内容 ◇居場所感 石本(2010)の居場所感尺度を用い,クラスおよび家族場面について回答を求めた(計26項目,5件法)。◇勤勉性 宮下・池原(2009)の勤勉性尺度を用いた(計10項目5件法)。◇心理的適応 Rosenberg(1965)によって作成されたSelf-Esteem-Scaleについて,福岡県新生活推進部青少年アンビシャス運動推進室(2009)が小中学生向けに翻訳したものを用いた。ただし,山本・松井・山成(1982)による邦訳版について,内容的に異質である(谷,2001)とされている項目8に対応する項目(もっと自分を尊敬できたらいいなと思う)を除いた9項目を用いた(5件法)。◇学校適応 古市・玉木(1994)によって作成された学校生活享受感尺度10項目を用いた(5件法)。
[結果と考察]
小学生および青年のデータを用い,勤勉性および居場所感尺度の平均値と適応感尺度の平均値との相関係数を算出した(Table1)。その結果,心理的適応と勤勉性,居場所感全ての相関係数において弱から強程度の有意な正の相関がみられた。特に小学生の心理的適応と勤勉性との間に強い相関がみられ,青年においても中程度の相関がみられた。岡田(1999)に倣い相関係数の差の検定を行ったところ,全ての得点において小学生と青年で有意な差が認められた。このことから,特に小学生の心理的適応に勤勉性が強い影響を与えている可能性が示され,小学生の段階では大人の肯定的な関わりにより自尊心を育むことができる可能性がうかがわれた。一方学校適応においては,小学生において勤勉性および家族有用感以外の居場所感得点と弱から中程度の相関がみられたが,青年においては勤勉性およびクラス有用感との間に中程度の相関がみられたのみであった。中でも勤勉性が小学生と青年の学校適応に関連する一方で,小学生の学校適応に中程度の相関を示しているクラス本来感が,青年ではほぼ無関連であった。このことより,青年においても自身のコンピテンスに関わるような感覚がクラスの友人との間でありのままでいられることよりも学校適応に影響を与える可能性が示唆された。