[PA038] 学習時の自己テストが子どもの記憶保持と正確さに及ぼす効果
行為を伴う場所の記憶課題を用いた検討
キーワード:自己テスト, 記憶方略, 幼児
目 的
学習時に, 記銘を繰り返すよりも, 検索を挿入させると長期保持が促進されることが知られている。この効果は成人のみならず, 就学後の児童にも認められ, 学校教育にその成果が導入されつつある。その多くは, 言語材料によってその効果を検証しているが, 本研究は, 幼児を対象に, 保育室の場所に戻すという課題設定のもと, 場所の記憶としての反復検索の正確さの効果について4時間後の保持間隔を設定し, 検証することとする。
方 法
実験参加者は, 4歳児9名, 5歳児17名, 6歳児9名の35名の幼児が実験に参加し, すべて個別に実施された。実験計画は, 3×2×3の混合要因計画であった。第1要因は, 年齢群であり, 6歳, 5歳, 4歳であり, 参加者間計画であった。第2要因は, 習得条件であり, 検索条件, 学習条件であった。第3要因は, 保持間隔であり, 直後確認テスト, 5分後テスト, 4時間後テストを参加者内計画で設定した。
手続き 幼児には, 「元あった場所におもちゃや持ち物をきれいに片つけに行くゲーム」と称し, 保育室の机に, 6個のオモチャ(例えば, 帽子)を正しく置くことができるかどうかを一緒に行うことを教示した。初回学習時は, 6個のオモチャが保育室のどの場所にあるかを学習させた。その後, 場所を正しく学習できているかを確認するために, 6個の置き場所がどこにあるか指をさして示すように求めた(直後確認テスト)。その後, 6個のうち, 3個は検索条件(T条件), 残り半数は学習条件(S条件)とした。T条件の場合は, 幼児に対象物を渡し, 置きに行くように教示した。もし間違えた場合は, 正しい置き場所を教えた。S条件の場合は, 実験者が対象物を持って置きに行くのを注意深く観察させるように促した。
その後, 5分後, 4時間後に遅延再生テストを実施した。テスト材料として, 学習項目6つ, 未学習項目2つ(e.g.,スプーン, コップ, ねんど)の計8項目を用意した。これら8項目についてどこに置いてあったか置きに行くように求めた。正しい場所に置きに行けた場合, 誰にその場所を教えてもらったか(正解は, 実験者)を尋ねた。
結 果
以下では主な結果のみを報告することとする。
再生成績について, 3×2×3の混合要因の分散分析を実施したところ, 習得条件と保持間隔の主効果が有意であった。また, 習得条件と保持間隔の交互作用が有意であり, S条件は保持間隔条件において有意な差が認められたが, T条件では差が認められなかった。S条件においては, 直後確認テストから5分後, 4時間後と急速に成績が低下しているものの(5分後から4時間後への成績低下は傾向差で有意), T条件においては時間経過に伴う成績低下は認められなかった。
以上から, 学習時の自己テストによる検索の挿入は, 長期保持を促進することを示した。なお, 誰が教えたかといった情報源に関する記憶は, 年齢による差が有意であり, 6歳児は4歳, 5歳よりも実験者から教えてもらった答えることができる割合が高く, また, 学習条件のほうが検索条件よりもエラーが高かった。
考 察
成人を対象とした先行報告同様, 習得時の自己テストは, 幼児の記憶保持を促進することを明らかにしたが, 情報源については検索を繰り返すことによるエラーが高まった。この結果は, 検索によって情報の内在化が生じる可能性が示唆されるため, 今後検証が必要となる。
学習時に, 記銘を繰り返すよりも, 検索を挿入させると長期保持が促進されることが知られている。この効果は成人のみならず, 就学後の児童にも認められ, 学校教育にその成果が導入されつつある。その多くは, 言語材料によってその効果を検証しているが, 本研究は, 幼児を対象に, 保育室の場所に戻すという課題設定のもと, 場所の記憶としての反復検索の正確さの効果について4時間後の保持間隔を設定し, 検証することとする。
方 法
実験参加者は, 4歳児9名, 5歳児17名, 6歳児9名の35名の幼児が実験に参加し, すべて個別に実施された。実験計画は, 3×2×3の混合要因計画であった。第1要因は, 年齢群であり, 6歳, 5歳, 4歳であり, 参加者間計画であった。第2要因は, 習得条件であり, 検索条件, 学習条件であった。第3要因は, 保持間隔であり, 直後確認テスト, 5分後テスト, 4時間後テストを参加者内計画で設定した。
手続き 幼児には, 「元あった場所におもちゃや持ち物をきれいに片つけに行くゲーム」と称し, 保育室の机に, 6個のオモチャ(例えば, 帽子)を正しく置くことができるかどうかを一緒に行うことを教示した。初回学習時は, 6個のオモチャが保育室のどの場所にあるかを学習させた。その後, 場所を正しく学習できているかを確認するために, 6個の置き場所がどこにあるか指をさして示すように求めた(直後確認テスト)。その後, 6個のうち, 3個は検索条件(T条件), 残り半数は学習条件(S条件)とした。T条件の場合は, 幼児に対象物を渡し, 置きに行くように教示した。もし間違えた場合は, 正しい置き場所を教えた。S条件の場合は, 実験者が対象物を持って置きに行くのを注意深く観察させるように促した。
その後, 5分後, 4時間後に遅延再生テストを実施した。テスト材料として, 学習項目6つ, 未学習項目2つ(e.g.,スプーン, コップ, ねんど)の計8項目を用意した。これら8項目についてどこに置いてあったか置きに行くように求めた。正しい場所に置きに行けた場合, 誰にその場所を教えてもらったか(正解は, 実験者)を尋ねた。
結 果
以下では主な結果のみを報告することとする。
再生成績について, 3×2×3の混合要因の分散分析を実施したところ, 習得条件と保持間隔の主効果が有意であった。また, 習得条件と保持間隔の交互作用が有意であり, S条件は保持間隔条件において有意な差が認められたが, T条件では差が認められなかった。S条件においては, 直後確認テストから5分後, 4時間後と急速に成績が低下しているものの(5分後から4時間後への成績低下は傾向差で有意), T条件においては時間経過に伴う成績低下は認められなかった。
以上から, 学習時の自己テストによる検索の挿入は, 長期保持を促進することを示した。なお, 誰が教えたかといった情報源に関する記憶は, 年齢による差が有意であり, 6歳児は4歳, 5歳よりも実験者から教えてもらった答えることができる割合が高く, また, 学習条件のほうが検索条件よりもエラーが高かった。
考 察
成人を対象とした先行報告同様, 習得時の自己テストは, 幼児の記憶保持を促進することを明らかにしたが, 情報源については検索を繰り返すことによるエラーが高まった。この結果は, 検索によって情報の内在化が生じる可能性が示唆されるため, 今後検証が必要となる。