[PB011] 学校予防教育プログラム「自己信頼心(自信)の育成」
小学校5年生での実施と効果
キーワード:自己信頼心, 学校予防教育, 児童
目的
近年,子どもたちの心の健康と適応への対処として,予防的なアプローチが注目されている。教育現場での実施と研究が進められている学校予防教育の一つとして,「『いのちと友情』の学校予防教育」TOP SELF (Trial Of Prevention School Education for Life and Friendship)がある(山崎ら,2011)。TOP SELFは,本研究で実施される自己信頼心(自信)の育成の教育を含む4つのベース教育から構成されている。いずれも大目標として掲げている自律性と対人関係性のもとに目標が構成されている。自己信頼心とは,絶対的な自己内での基準としての自信を指し,「自己についてまさに“これでよい”と評価できる状態」を指す(山崎,2013)。自己信頼心の育成は,自律性の育成の主要構成要素とされている。本研究では,小学校5年生を対象とした学校予防教育TOP SELF「自己信頼心(自信)の育成」について,その教育効果を検証することを目的とする。
方法
教育対象者と時期 2010年,徳島県内の小学校5年生の計114名(男子57名,女子57名)を対象に,全6回の「自己信頼心(自信)の育成」プログラムを実施した。実施期間は,第1回から第6回までを2回連続(45分/回)で計3日間に渡るものであった。データは授業前評価を初回授業の15日前,後評価を授業終了日の3日後に実施した。
材料 本プログラムの中位目標の全4因子を基に開発された自記式の測定尺度を用いた。質問紙は自己への評価12項目,他者(所属するクラス全体)への評価4項目を含み,全ての質問は5件法(自己:1=全く当てはまらない~5=とてもよくあてはまる 他者:1=全くそう思わない~5=とてもそう思う)で回答を求めた。
データ分析 分析は欠損値を除いた107名(男子54名,女子53名)を対象として行った。
結果
自己に対する評価は,自己評価得点を従属変数とし,時期(教育前・教育後)×性別(男子・女子)の2要因分散分析を行った。その結果,下位尺度III・IV(Table1参照)について時期の主効果に有意な傾向がみられたものの,尺度全体と下位尺度いずれにおいても,有意な差には至らなかった。クラスに対する評価も他者評価得点を従属変数とし,同様に2要因の分散分析を行ったところ,尺度全体と下位尺度II・III・IVにおいて,時期の主効果が有意となり,教育実施後の得点の高まりが確認された(Table1)。
考察
本プログラムの実施は,自己への評価は有意傾向に留まったものの,男女ともに他者への評価が肯定的なものへ変化することが明らかとなった。自己への評価にあまり変化がみられなかった理由として,児童の情動を掻き立てる誘因の少なさが考えられる。本プログラムは現行のものに比べてアニメストーリーの動きや活動中の子どもたちの動きが少なく,児童を引きつける要因が十分ではなかった可能性が考えられる。また,他者への評価は客観的に行える反面,自己への評価は先述の通り,「自分についてまさに “これでよい”と評価する」ことであり,本プログラム実施後,すぐに評価へと反映されなかった可能性が考えられる。今後は,教育内容の改善とともに,プログラムの継続した実施や持続的な効果検証が望まれる。
近年,子どもたちの心の健康と適応への対処として,予防的なアプローチが注目されている。教育現場での実施と研究が進められている学校予防教育の一つとして,「『いのちと友情』の学校予防教育」TOP SELF (Trial Of Prevention School Education for Life and Friendship)がある(山崎ら,2011)。TOP SELFは,本研究で実施される自己信頼心(自信)の育成の教育を含む4つのベース教育から構成されている。いずれも大目標として掲げている自律性と対人関係性のもとに目標が構成されている。自己信頼心とは,絶対的な自己内での基準としての自信を指し,「自己についてまさに“これでよい”と評価できる状態」を指す(山崎,2013)。自己信頼心の育成は,自律性の育成の主要構成要素とされている。本研究では,小学校5年生を対象とした学校予防教育TOP SELF「自己信頼心(自信)の育成」について,その教育効果を検証することを目的とする。
方法
教育対象者と時期 2010年,徳島県内の小学校5年生の計114名(男子57名,女子57名)を対象に,全6回の「自己信頼心(自信)の育成」プログラムを実施した。実施期間は,第1回から第6回までを2回連続(45分/回)で計3日間に渡るものであった。データは授業前評価を初回授業の15日前,後評価を授業終了日の3日後に実施した。
材料 本プログラムの中位目標の全4因子を基に開発された自記式の測定尺度を用いた。質問紙は自己への評価12項目,他者(所属するクラス全体)への評価4項目を含み,全ての質問は5件法(自己:1=全く当てはまらない~5=とてもよくあてはまる 他者:1=全くそう思わない~5=とてもそう思う)で回答を求めた。
データ分析 分析は欠損値を除いた107名(男子54名,女子53名)を対象として行った。
結果
自己に対する評価は,自己評価得点を従属変数とし,時期(教育前・教育後)×性別(男子・女子)の2要因分散分析を行った。その結果,下位尺度III・IV(Table1参照)について時期の主効果に有意な傾向がみられたものの,尺度全体と下位尺度いずれにおいても,有意な差には至らなかった。クラスに対する評価も他者評価得点を従属変数とし,同様に2要因の分散分析を行ったところ,尺度全体と下位尺度II・III・IVにおいて,時期の主効果が有意となり,教育実施後の得点の高まりが確認された(Table1)。
考察
本プログラムの実施は,自己への評価は有意傾向に留まったものの,男女ともに他者への評価が肯定的なものへ変化することが明らかとなった。自己への評価にあまり変化がみられなかった理由として,児童の情動を掻き立てる誘因の少なさが考えられる。本プログラムは現行のものに比べてアニメストーリーの動きや活動中の子どもたちの動きが少なく,児童を引きつける要因が十分ではなかった可能性が考えられる。また,他者への評価は客観的に行える反面,自己への評価は先述の通り,「自分についてまさに “これでよい”と評価する」ことであり,本プログラム実施後,すぐに評価へと反映されなかった可能性が考えられる。今後は,教育内容の改善とともに,プログラムの継続した実施や持続的な効果検証が望まれる。