日本教育心理学会第56回総会

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ポスター発表 PB

(5階ラウンジ)

2014年11月7日(金) 13:30 〜 15:30 5階ラウンジ (5階)

[PB016] 小学生を対象とした対人関係ゲーム・プログラムの効果の検討

引っ込み思案・攻撃性の高い児童への効果の検討

山下陽平1, 窪田由紀2 (1.愛知県スクールカウンセラー, 2.名古屋大学)

キーワード:対人関係ゲーム・プログラム, 心理教育, ソーシャルスキル

問題と目的
学校臨床において,児童・生徒への予防啓発的アプローチとしての心理教育の重要性は近年ますます高まってきている(坂口,2007等)。その中でも比較的新しく対人関係の問題に効果的に作用することが期待できるアプローチの一つに対人関係ゲーム・プログラム(以下SIGsと略す)がある。山下他(2012)は,SIGsを実施した結果,対人不安,ソーシャルスキル,集団凝集性の変化を見出した。また,山下他(2014)は,学級全体から見たSIGs の効果の質的検討を行ったが,本研究では,SIGsの実施が引っ込み思案行動児及び攻撃行動の高い児童にどのような心理的意味をもたらすのかを明らかにすることを目的とする。
方法
1)対象者:対象児は,公立小学校の3年生の介入クラスの中から,介入前に実施した質問紙調査(小学生用社会的スキル(嶋田ら, 1996))及び担任教諭への聞き取りにより,引っ込み思案行動のみ高い児童として,A(女子),B(女子),攻撃行動のみ高い児童として,C(女子),D(男子),攻撃行動,引っ込み思案行動共に高い児童としてE(男子),F(女子)を抽出した。
2)実施時期・回数:X年9月~10月の計6回。
3)ゲームの内容:ゲーム内容はTable.1に示す。
4)評価方法
・担任教諭への半構造化面接:SIGs終了後に実施。質問内容は,「SIGs実施前後の引っ込み思案行動・攻撃行動の高い対象児の様子」,「担任教諭との関わりの変化」,「その他感想」であった。
・ゲームごとの振り返り用紙
5)分析:面接での全ての発言内容から対象児に関わるものを抽出し,(1)SIGs実施前の対象児の状態,(2)ベースラインに影響を与える要因(3)SIGs実施後の対象児の変化,(4)対象児に影響を及ぼした要因に分類し,KJ法に準じて分析した。
結果と考察
分析の結果,SIGs実施前の対象児の状態については「攻撃行動の表出の有無」「引っ込み思案行動」の2カテゴリー,ベースラインに影響を与える要因については「コミュニケーション能力の未発達」等の3カテゴリー,対象児の変化については「攻撃行動の減少」「引っ込み思案行動の減少」「休み時間の過ごし方の変化」「攻撃行動の維持」等の7カテゴリー,対象児に影響を及ぼした要因については「ゲームの楽しさ」「緊張の減少」「SIGsによる個人及び学級集団の変化」等の6カテゴリーが抽出された。これを基に作成したSIGsが学級集団に及ぼす効果の仮説モデルがFigure.1である。
SIGsの実施を通して,対象児が適切な行動を学習したことにより,攻撃行動,引っ込み思案行動の減少につながった。さらにクラスメート及びクラス全体での関わりの増加が見られ,学級の雰囲気のよさの促進や学級のまとまりに繋がり(山下・窪田, 2014),集団側も対象児を受け入れやすい環境が整えられたと考えられる。しかし,本研究で作成した仮説モデルはあくまで一事例のみのものであり,今後さらなる検証が求められる。