[PB020] 大学生の抑うつ傾向に対する介入効果の検討(2)
LAC表の内容検討
キーワード:抑うつ, LAC法, レジリエンス
<問題と目的>
大学生を対象としたLAC法は抑うつの悪化への予防に役立つことが示唆されている(中島・松本,2014)。LAC法を用いることにより,日常生活や目標を客観視することが抑うつへの介入に効果的であると考えられる。しかし,LAC法を実施した学生の中には,抑うつが軽減した学生がいる一方で,悪化した学生も少数いる。今後,LAC法の有効性をさらに高め,効果的に活用するためには効果の差異を検討し,介入方法の改訂を行う必要があると考えられる。
そこで,本研究ではLAC法で挙げられた目標(ラベル)を抑うつとの関連から詳細に検討することを目的とする。
<方法>
対象者 大学生13名(男性12名,女性1名,平均年齢21.92歳,SD=2.29)を対象とした。
手続き 心理学関係の講義の一部を利用してLAC法を3回実施した。LAC法の効果を検討するために,実施前後に抑うつ(CES-Dの日本語版:島他,1985)を測定する質問紙調査を行った。また,LAC法実施後には,最重点目標の達成の有無についても尋ねた。なお,本研究では,1回目と2回目のLAC法及びLAC法実施前後の質問紙調査について分析対象とした。
<結果>
1.対象者の分類
抑うつ尺度についてα係数を算出したところ,概ね内的整合性が示された。そのため,先行研究と同様に尺度の合計得点を尺度得点として算出した。続いて,LAC法実施後からLAC法実施前の得点を引いた抑うつの変化量得点を算出し,平均値以上を抑うつ増加群5名(M=4.20,SD=4.49),平均値未満を軽減群8名(M=-4.20,SD=3.03)に分類した。
2.抑うつ増加群と軽減群の比較分析
(1)目標数と最重点目標の達成 まず,1回目のLAC法における目標数および各目標の必要性(N)と可能性(P)に群間差があるかを検討するためにt 検定を行った。その結果,目標数と目標の可能性については有意な群間差が見られなかったが,必要性は軽減群の方が増加群よりも有意に高い傾向が示された(目標数:t (11)= .41, ns.,必要性:t (153.76) =1.92, p< .10,可能性:t (177)= .17, ns.)。
続いて,最重点目標の達成の有無について,群間比較を行ったところ有意な偏りは示されなかった(Fisher の直接確率計算法(両側検定), ns.)。
(2)具体的な目標設定 目標に関する回答について具体的な目標設定の観点から分類し(例:“毎日卒業論文を1時間取り組む”など(具体的な目標設定あり),“何らかの資格を取る”など(具体的な目標設定なし)),群間による差異があるかどうか検討したところ,有意な偏りがみられ,軽減群は具体的な目標設定を行っている人が多く,増加群では行っていない人が有意に多いことが示された(Fisherの直接確率計算法(両側検定),p< .05)。
(3)目標の明確化 2回目のLAC法において,1回目のLAC法を振り返り,前回の目標が達成できなかった場合はさらに目標を細分化したり,重要な目標を焦点化するなど目標の明確化がみられるかどうか検討した。目標の明確化の観点からFisherの直接確率計算法(両側検定)により群間比較を行った。その結果,有意傾向ではあるものの偏りがみられ,軽減群は目標の明確化を行っている人が多く,増加群では行っていない人が多いことが示された(Fisherの直接確率計算法(両側検定),p< .10)。
<考察>
本研究では,大学生を対象としたLAC法を実施し,抑うつの軽減には,具体的な目標を設定させ,目標を明確化することが重要であることが示唆された。具体的な目標を設定することによって,目標達成のための行動を細分化することを促し,その行動を遂行していくことによって達成感や自己効力感が高まると考えられる。また,最重点目標の達成には群間によって人数比率に偏りがみられなかった。従って,今後はLAC法による介入を行う際に,最重点目標の達成に焦点化せず,目標を明確化できるように促していく必要がある。
最後に課題として,本研究の対象者の多くが男子学生であったため,得られた知見は男性の特徴を表している可能性も否定できない。男性よりも女性の方が抑うつの有病率が高いという知見(立森他,2007)を踏まえると,今後は性差を考慮してLAC法の効果をより詳細に検討することが必要である。
大学生を対象としたLAC法は抑うつの悪化への予防に役立つことが示唆されている(中島・松本,2014)。LAC法を用いることにより,日常生活や目標を客観視することが抑うつへの介入に効果的であると考えられる。しかし,LAC法を実施した学生の中には,抑うつが軽減した学生がいる一方で,悪化した学生も少数いる。今後,LAC法の有効性をさらに高め,効果的に活用するためには効果の差異を検討し,介入方法の改訂を行う必要があると考えられる。
そこで,本研究ではLAC法で挙げられた目標(ラベル)を抑うつとの関連から詳細に検討することを目的とする。
<方法>
対象者 大学生13名(男性12名,女性1名,平均年齢21.92歳,SD=2.29)を対象とした。
手続き 心理学関係の講義の一部を利用してLAC法を3回実施した。LAC法の効果を検討するために,実施前後に抑うつ(CES-Dの日本語版:島他,1985)を測定する質問紙調査を行った。また,LAC法実施後には,最重点目標の達成の有無についても尋ねた。なお,本研究では,1回目と2回目のLAC法及びLAC法実施前後の質問紙調査について分析対象とした。
<結果>
1.対象者の分類
抑うつ尺度についてα係数を算出したところ,概ね内的整合性が示された。そのため,先行研究と同様に尺度の合計得点を尺度得点として算出した。続いて,LAC法実施後からLAC法実施前の得点を引いた抑うつの変化量得点を算出し,平均値以上を抑うつ増加群5名(M=4.20,SD=4.49),平均値未満を軽減群8名(M=-4.20,SD=3.03)に分類した。
2.抑うつ増加群と軽減群の比較分析
(1)目標数と最重点目標の達成 まず,1回目のLAC法における目標数および各目標の必要性(N)と可能性(P)に群間差があるかを検討するためにt 検定を行った。その結果,目標数と目標の可能性については有意な群間差が見られなかったが,必要性は軽減群の方が増加群よりも有意に高い傾向が示された(目標数:t (11)= .41, ns.,必要性:t (153.76) =1.92, p< .10,可能性:t (177)= .17, ns.)。
続いて,最重点目標の達成の有無について,群間比較を行ったところ有意な偏りは示されなかった(Fisher の直接確率計算法(両側検定), ns.)。
(2)具体的な目標設定 目標に関する回答について具体的な目標設定の観点から分類し(例:“毎日卒業論文を1時間取り組む”など(具体的な目標設定あり),“何らかの資格を取る”など(具体的な目標設定なし)),群間による差異があるかどうか検討したところ,有意な偏りがみられ,軽減群は具体的な目標設定を行っている人が多く,増加群では行っていない人が有意に多いことが示された(Fisherの直接確率計算法(両側検定),p< .05)。
(3)目標の明確化 2回目のLAC法において,1回目のLAC法を振り返り,前回の目標が達成できなかった場合はさらに目標を細分化したり,重要な目標を焦点化するなど目標の明確化がみられるかどうか検討した。目標の明確化の観点からFisherの直接確率計算法(両側検定)により群間比較を行った。その結果,有意傾向ではあるものの偏りがみられ,軽減群は目標の明確化を行っている人が多く,増加群では行っていない人が多いことが示された(Fisherの直接確率計算法(両側検定),p< .10)。
<考察>
本研究では,大学生を対象としたLAC法を実施し,抑うつの軽減には,具体的な目標を設定させ,目標を明確化することが重要であることが示唆された。具体的な目標を設定することによって,目標達成のための行動を細分化することを促し,その行動を遂行していくことによって達成感や自己効力感が高まると考えられる。また,最重点目標の達成には群間によって人数比率に偏りがみられなかった。従って,今後はLAC法による介入を行う際に,最重点目標の達成に焦点化せず,目標を明確化できるように促していく必要がある。
最後に課題として,本研究の対象者の多くが男子学生であったため,得られた知見は男性の特徴を表している可能性も否定できない。男性よりも女性の方が抑うつの有病率が高いという知見(立森他,2007)を踏まえると,今後は性差を考慮してLAC法の効果をより詳細に検討することが必要である。