[PB033] レジリエンス形成要因間の関係性に関する研究(1)
尺度の作成と信頼性・妥当性の検討
キーワード:レジリエンス, 形成要因, 信頼性・妥当性
問題と目的
困難な出来事を克服し,その経験を自己の成長の糧として受け入れる状態に導く特性を「レジリエンス(resilience)」という。本研究では,レジリエンスの形成過程に焦点を当て,「個人内要因」,「獲得要因」,「環境要因」から成るレジリエンス尺度を作成し,信頼性と妥当性を検討する。
方法
調査対象者 神戸市内の大学1~4年生311名(男性135名,女性176名)。平均年齢は19.13歳(SD=1.23)。2013年6月,授業の一部の時間を利用し,無記名式で調査を実施した。
質問紙 (1)レジリエンス尺度:Grotberg(2003)を参考に,個人内要因(自己受容,楽観性),獲得要因(コンピテンス,感情調整),環境要因(ソーシャルサポート,安定した家庭環境)を測定するための項目を55項目作成。(2)精神的回復力尺度(小塩・中谷・金子・長峰,2002),21項目(3)大学生用日常生活ストレッサー尺度(嶋,1999),23項目(4)自尊感情尺度(山本・松井・山成,1982),10項目,(5)抑うつに耐える力尺度(近藤・岡本・白井・栃尾・河野・柏尾・小玉,2008),14項目。すべて4件法で評定。
結果および考察
尺度の因子構造と信頼性の検討 天井効果および床効果の見られた3項目を除外し,残りの52項目に対して因子分析を実施した(主因子法・Promax回転)。因子負荷量が.40以下のものを削除し再度因子分析して得られた6因子34項目をレジリエンス尺度とした(Table 1)。クロンバックのα係数が92~.69であったことから信頼性があると判断し,それぞれの平均点を因子得点とした。
妥当性の検討 精神的回復力尺度の下位尺度との相関係数を算出したところ,レジリエンス尺度の下位尺度は精神的回復力尺度の「新奇性追求」,「感情調整」,「肯定的な未来志向」と弱い~比較的強い正の相関がみられ(r=.15~.80),妥当性が確認された。次に,ストレッサー度とレジリエンスのそれぞれの得点について平均±1/2SDによって調査対象者を3群に分類し,いずれかの得点が中位であった者を除いた92名について,「自尊感情」と「抑うつに耐える力」の下位尺度を従属変数としたストレッサー度2(高/低)×レジリエンス2(高/低)の二要因分散分析を実施した(Table 2)。その結果,「自尊感情」,「不安に向き合う力」,「強がらずに自己開示する態度」においてレジリエンスの主効果が有意であった。たとえ苦痛を伴う出来事を多く経験していても,レジリエンスが高い者は高い自尊心を維持するという小塩他(2002)を支持する結果が得られた。また,レジリエンスが高い者は,自己の中の不安や弱さといった受け入れ難い感情を回避せず適応的に処理することができ,問題の解決に向けて努力する姿勢をもつといえる。
困難な出来事を克服し,その経験を自己の成長の糧として受け入れる状態に導く特性を「レジリエンス(resilience)」という。本研究では,レジリエンスの形成過程に焦点を当て,「個人内要因」,「獲得要因」,「環境要因」から成るレジリエンス尺度を作成し,信頼性と妥当性を検討する。
方法
調査対象者 神戸市内の大学1~4年生311名(男性135名,女性176名)。平均年齢は19.13歳(SD=1.23)。2013年6月,授業の一部の時間を利用し,無記名式で調査を実施した。
質問紙 (1)レジリエンス尺度:Grotberg(2003)を参考に,個人内要因(自己受容,楽観性),獲得要因(コンピテンス,感情調整),環境要因(ソーシャルサポート,安定した家庭環境)を測定するための項目を55項目作成。(2)精神的回復力尺度(小塩・中谷・金子・長峰,2002),21項目(3)大学生用日常生活ストレッサー尺度(嶋,1999),23項目(4)自尊感情尺度(山本・松井・山成,1982),10項目,(5)抑うつに耐える力尺度(近藤・岡本・白井・栃尾・河野・柏尾・小玉,2008),14項目。すべて4件法で評定。
結果および考察
尺度の因子構造と信頼性の検討 天井効果および床効果の見られた3項目を除外し,残りの52項目に対して因子分析を実施した(主因子法・Promax回転)。因子負荷量が.40以下のものを削除し再度因子分析して得られた6因子34項目をレジリエンス尺度とした(Table 1)。クロンバックのα係数が92~.69であったことから信頼性があると判断し,それぞれの平均点を因子得点とした。
妥当性の検討 精神的回復力尺度の下位尺度との相関係数を算出したところ,レジリエンス尺度の下位尺度は精神的回復力尺度の「新奇性追求」,「感情調整」,「肯定的な未来志向」と弱い~比較的強い正の相関がみられ(r=.15~.80),妥当性が確認された。次に,ストレッサー度とレジリエンスのそれぞれの得点について平均±1/2SDによって調査対象者を3群に分類し,いずれかの得点が中位であった者を除いた92名について,「自尊感情」と「抑うつに耐える力」の下位尺度を従属変数としたストレッサー度2(高/低)×レジリエンス2(高/低)の二要因分散分析を実施した(Table 2)。その結果,「自尊感情」,「不安に向き合う力」,「強がらずに自己開示する態度」においてレジリエンスの主効果が有意であった。たとえ苦痛を伴う出来事を多く経験していても,レジリエンスが高い者は高い自尊心を維持するという小塩他(2002)を支持する結果が得られた。また,レジリエンスが高い者は,自己の中の不安や弱さといった受け入れ難い感情を回避せず適応的に処理することができ,問題の解決に向けて努力する姿勢をもつといえる。