[PB037] 児童用インプリシット感情測定尺度の開発
学校予防教育プログラム効果測定ツールの開発を目指して
キーワード:インプリシット感情, 尺度, 児童
目 的
人の認知や行動は、意識されない要因に影響を受けていることが多方面から示唆されている。なかでも、意識されない感情反応(多くは情動と呼ばれる身体反応)の影響が注目されている。これらの反応はある限度を超えて生じると意識上にのぼり、特定の名称(悲しみ、怒り、喜びなど)をもって指示される、あるいはされる状態になり、これを感情と言う(Damasio, 2003)。自記式質問紙などで意識上の反応、つまり感情を測定するだけでは、人の心的機能の理解にはつながらない。特に児童は成人に比べ、自分の様々な感情を客観的に理解する能力に乏しいことが予測される。児童の状態を理解する上で、意識されない感情反応を捉えることは、教育開発や実践を進める上で重要なものであろう。
近年、この意識されない感情的側面をインプリシット感情(implicit emotion or affect)として測定し、その機能を調べる研究が進められている(e.g., Hopp et al., 2011; Quirin et al., 2011)。インプリシット感情は、情動が意識に至る前の一状態(厳密には、情動の前概念的表象)と考えられている。意識されない感情反応の中でも比較的意識化が容易であることから、たとえば児童が自らの感情を認識し、理解する教育的なアプローチを行う上で注目すべき感情と言えよう。
内田・福田・山崎(2014)はQuirin et al.(2011)の開発方法を踏襲し、児童用インプリシット感情測定のための予備的な研究を行った。その結果、たとえば形容詞の表現方法に改善すべき点が見られた。本研究では内田ら(2014)をベースとし、児童用インプリシット感情測定尺度の開発を行った。
方 法
児童用インプリシット感情測定尺度 基本的にはQuirin et al. (2009)の開発方法を踏襲したが、そこでの人工語を使う方法は児童には不向きであると判断した(内田ら,2014)。そこで、刺激には無意味な線図を使用した。また、測定する感情は児童への負担を考慮して限定し、活性化正感情と負感情とした。これまでのPANAS他の感情測定質問紙を参照し、各3項目(正感情:自信がある、うれしい、元気いっぱいな;負感情:心配している、かなしい、おびえた)を採用した。なお、内田ら(2014)では負感情の形容詞に「おびえた」以外に「腹が立った」、「みじめな」を採用したが、前者は因子構造から外れ、後者は児童が理解しにくい表現であったため、本研究では先の表現に変更した。3つの線図に対し、それぞれ6つの感情について、各感情を表している程度を4件法(まったく表していない~とてもよく表している)で測定した。なお線図作成に際し、内田ら(2014)では大学生ならびに大学院生への予備調査において、その反応性が偏らないように修正を重ねている。
参加者 最終的に9小学校の3年生390(男184、女206)名、4年生18(男7、女11)名、5年生82(男39、女43)名、6年生15(男8、女7)名、計505名。
手続き 2013年5月~2014年1月にクラス単位で研究責任者あるいは、責任者より実施手続きについて訓練を受けた者が実施した。なお、各学校において1ヶ月後には再検査を実施した。また、妥当性用にQ-U(楽しい学校生活を送るためのアンケート)、作文法などを併せて実施した。しかし、本抄録では因子構造、内的整合性、ならびに得点分布の正規性の結果を中心に報告する。
結果および考察
Quirin et al.(2009)に従い、各感情語得点の3線図平均値を算出し、因子分析(主因子法、プロマックス回転)を行った。その結果、2因子を抽出し、正感情各3項目で構成された。因子負荷量、内的整合性、そして得点分布正規性確認のための各数値をTable1に示す。
上記の結果から、本尺度は想定された2因子構造が確認され、内的整合性や正規性もほぼ妥当な数値が確認された。今後は妥当性の検討等が続く。
人の認知や行動は、意識されない要因に影響を受けていることが多方面から示唆されている。なかでも、意識されない感情反応(多くは情動と呼ばれる身体反応)の影響が注目されている。これらの反応はある限度を超えて生じると意識上にのぼり、特定の名称(悲しみ、怒り、喜びなど)をもって指示される、あるいはされる状態になり、これを感情と言う(Damasio, 2003)。自記式質問紙などで意識上の反応、つまり感情を測定するだけでは、人の心的機能の理解にはつながらない。特に児童は成人に比べ、自分の様々な感情を客観的に理解する能力に乏しいことが予測される。児童の状態を理解する上で、意識されない感情反応を捉えることは、教育開発や実践を進める上で重要なものであろう。
近年、この意識されない感情的側面をインプリシット感情(implicit emotion or affect)として測定し、その機能を調べる研究が進められている(e.g., Hopp et al., 2011; Quirin et al., 2011)。インプリシット感情は、情動が意識に至る前の一状態(厳密には、情動の前概念的表象)と考えられている。意識されない感情反応の中でも比較的意識化が容易であることから、たとえば児童が自らの感情を認識し、理解する教育的なアプローチを行う上で注目すべき感情と言えよう。
内田・福田・山崎(2014)はQuirin et al.(2011)の開発方法を踏襲し、児童用インプリシット感情測定のための予備的な研究を行った。その結果、たとえば形容詞の表現方法に改善すべき点が見られた。本研究では内田ら(2014)をベースとし、児童用インプリシット感情測定尺度の開発を行った。
方 法
児童用インプリシット感情測定尺度 基本的にはQuirin et al. (2009)の開発方法を踏襲したが、そこでの人工語を使う方法は児童には不向きであると判断した(内田ら,2014)。そこで、刺激には無意味な線図を使用した。また、測定する感情は児童への負担を考慮して限定し、活性化正感情と負感情とした。これまでのPANAS他の感情測定質問紙を参照し、各3項目(正感情:自信がある、うれしい、元気いっぱいな;負感情:心配している、かなしい、おびえた)を採用した。なお、内田ら(2014)では負感情の形容詞に「おびえた」以外に「腹が立った」、「みじめな」を採用したが、前者は因子構造から外れ、後者は児童が理解しにくい表現であったため、本研究では先の表現に変更した。3つの線図に対し、それぞれ6つの感情について、各感情を表している程度を4件法(まったく表していない~とてもよく表している)で測定した。なお線図作成に際し、内田ら(2014)では大学生ならびに大学院生への予備調査において、その反応性が偏らないように修正を重ねている。
参加者 最終的に9小学校の3年生390(男184、女206)名、4年生18(男7、女11)名、5年生82(男39、女43)名、6年生15(男8、女7)名、計505名。
手続き 2013年5月~2014年1月にクラス単位で研究責任者あるいは、責任者より実施手続きについて訓練を受けた者が実施した。なお、各学校において1ヶ月後には再検査を実施した。また、妥当性用にQ-U(楽しい学校生活を送るためのアンケート)、作文法などを併せて実施した。しかし、本抄録では因子構造、内的整合性、ならびに得点分布の正規性の結果を中心に報告する。
結果および考察
Quirin et al.(2009)に従い、各感情語得点の3線図平均値を算出し、因子分析(主因子法、プロマックス回転)を行った。その結果、2因子を抽出し、正感情各3項目で構成された。因子負荷量、内的整合性、そして得点分布正規性確認のための各数値をTable1に示す。
上記の結果から、本尺度は想定された2因子構造が確認され、内的整合性や正規性もほぼ妥当な数値が確認された。今後は妥当性の検討等が続く。