日本教育心理学会第56回総会

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ポスター発表 PB

(501)

2014年11月7日(金) 13:30 〜 15:30 501 (5階)

[PB085] 現代の若者の価値観と幸福度の検討

南学 (三重大学)

キーワード:幸福度, 価値観, 青年期

問題
現在の日本は、東日本震災によって引き起こされた原発事故の影響、少子高齢化や財政赤字、就職率の低下など多くの問題を抱えており、若者にとって明るい未来を描きにくい状況になっている。しかし、このような状況にもかかわらず現代の若者の幸福感が高いということが示されている。内閣府の「国民生活に関する世論調査(2011)」によると、「現在の生活に満足」している20代は70.6%になり、「世界青年意識調査(2004)」において「幸せ」と答える、18-24歳の若者は、93.6%となる。また、村田・政木(2013)は「中学生・高校生の生活と意識調査2012」において「幸せだ」と回答した中高生は90%以上となっている。
こうした状況下で若者の幸福感がなぜ高いのかについて、古市(2011)は、将来に希望がもてないために「今、ここ」の幸せに関心を向け、満足しているという仮説を提唱している。しかし、古市(2011)の仮説は思索に拠っており、実証的検討がなされていない。とくに、先行研究が「若者の多様性」を無視していることを批判しながらも、この仮説は「多様性」を無視したものとなっている。そこで、本研究では、この点を検討するため、大学生の幸福に対する価値観と幸福度の関係を実証的に検討することを目的とする。
幸福に対する価値観として、浅野・五十嵐・塚本(2014)は、自己の心地よさを追求する動機づけと自分自身を最大限に活かすことを追求する動機づけの観点から日本版HEMA尺度を作成しており、本研究では、これを用いることとする。また、古市(2011)の「将来に希望が持てない」ことを検証するため、白井(1993)の時間的信念尺度を用いる。
方法
調査参加者 欠損値を除いた大学生150名(男性74名、女性76名、平均年齢19.0歳、SD=.79)。
質問紙の構成 日本版HEMA尺度(浅野・五十嵐・塚本,2014)、時間的信念尺度(白井,1993)、私生活主義尺度(久世ら,1988)から「身近な事象への関心・社会的事象への無関心」、生きがい感スケール(近藤・鎌田,1998)から「現状満足感」(一部改変)、主観的幸福感尺度(曽我部・本村,2010)。
手続き 授業時に質問紙を配布し、回収した。
結果・考察
各尺度間の相関を表1に示した。「幸福追求」「喜び追求」は、「現在重視」「満足遅延」と正の相関を示し、「幸福追求」は「将来無関心」と負の相関を示した。当日は、他の分析を含め、仮説を検討する。