日本教育心理学会第56回総会

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ポスター発表 PC

(5階ラウンジ)

2014年11月7日(金) 16:00 〜 18:00 5階ラウンジ (5階)

[PC043] 協同的な学びによる聞き取り力向上についての考察

話し合い活動の指導による聞き取り力育成の試み

嶋崎栄一 (所沢市立並木小学校)

キーワード:学校研究, 聞き取り力を伸ばす, 数値的な把握

目 的
協同的な学びと成果に係る研究は,ヴィゴツキーの学習論に基礎を置く森本ら(1998)やグループ構成に着目した西川ら(2000)の研究などがある。これらの研究では,協同による効果は詳細に述べているが,教師の手だてと他者との関わりによる知識の再構成の関連についての検討は十分でない。また植田ら(2000)は,認知科学や社会心理学から協同の効果や協同が成功するための条件を明らかにしている。ペアグループを分析し,説明的な「相互作用」が高い課題遂行において協同による課題解決のパフォーマンスが個人のそれを上回る結果の知見を得ている。説明的な「相互作用」を高めるには,相互に「よく聞きとる」ことが不可欠である。本研究は,学校全体で国語科の協同的な学びを中心とした研究に取り組み,それにより児童の聞き取り力がどのように変容したかを考察したものである。従来の学校研究は客観性に乏しいという指摘があり,本研究は聞き取り力を数値的に検証することを目指す。
方 法
学校研究の参加者は,公立A小学校児童267名である。協同的な学びの一つとして授業に「話し合い活動」を設定する。動機付けのために学年に応じた「高めの課題」を提示する。学習指導案には,話し合い活動を促進させる方法を明記するとともに,「聞く指導」では,うなずく,返事をする,質問する,メモを取る等の方法を明記する。聞き取り力変容の調査は,校長講話(月始め朝会)を用いる。校長は3つのキーワードをもとに約5分間の講話を行い,児童は教室で講話内容を書く。複数の担任外教諭が採点し,講話のキーワードを児童がどのように再生したか把握する。この聞き取り調査には第2・3・5学年児童が参加し7月と1月に実施した。

結 果
TABLE 1 校長講話中のキーワード再生数変化

TABLE 2 校長講話中のキーワード正再生数

校長講話中のキーワード再生総数について,各学年の変容を比較したところ,TABLE 1のように第3学年と第5学年で有意に増加が見られた。また,校長講話中のキーワード正再生数を学年間で比較したところ,TABLE 2のように,取り組み開始時の7月には,学年間有意差は見られなかったが,6ヵ月後には第5学年が第2学年,第3学年に対してそれぞれ有意に再生数が増加した。
考 察
協同的な学びを通して,第3・5学年の児童は聞き取り力を向上させたと思われる。また第5学年児童は他学年児童より一層向上させた。これは本校の「聞く指導」が効果をあげたのではないかと思われる。第5学年児童が有意に聞く力を向上させた原因についても考証する。課題として,担任の話を聞き取る力についても調査する必要がある。また,書く技能の習熟化を考慮する必要があり,指導法の効果の検証であることから,授業の介入のない夏季休業前後の変容を把握するために,9月にmiddleテストを行うことが必要である。
文 献
森本信也ほか(1998).協同的な理科の教授・学習過程に関する基礎的研究,横浜国立大学教育人間科学部紀要Ⅰ,教育科学第1集.
西川純・相原豊(2000).理科におけるグループ構成と協同的学習の研究,日本教科教育学会誌.23-1.
植田一博,岡田猛(2000).協同の知を探る,共立出版