日本教育心理学会第56回総会

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ポスター発表 PC

(5階ラウンジ)

2014年11月7日(金) 16:00 〜 18:00 5階ラウンジ (5階)

[PC044] 協同的な学習に対する動機づけの年度内変化

岡田涼 (香川大学)

キーワード:協同的な学習に対する動機づけ, 自己決定理論, 小学生

問題と目的
児童の学習過程において,仲間との協同的なかかわりは重要である。これまで協同学習に関する様々な教授法や指導法が考案され,他者との協同的な学習が学業達成に影響することが明らかにされてきた(杉江,2011)。しかし,学習意欲のあり方として,児童が自ら仲間との協同的にかかわることも重要であると考えられる。岡田(2014)は,仲間との協同的な学習に対する動機づけを捉える尺度を作成し,学年によって動機づけが異なることを示している。
協同的な学習に対する動機づけのあり方は,日々の学習経験の中で変化していくことが考えられる。本研究では,協同的な学習に対する動機づけが年度内にどのような変化を示すかについて,学年差を踏まえて検討する。
方法
対象者と手続き
小学1~6年生児童598名(男子299名,女子299名)。2013年10月(時期1)と2014年2月(時期2)の2回にわたって質問紙調査を実施した。
質問紙
岡田(2014)による協同的な学習に対する動機づけ尺度を用いた。内発的動機づけ,同一化的調整,取り入れ的調整,外的調整の4下位尺度計12項目からなる(4件法)。
結果
尺度構成
時期2のデータについて,確認的因子分析を行った。適合度は,χ2(48)=214.93(p<.001),CFI=.93,RMSEA=.08と十分な値を示した。時期ごとに項目の合計を下位尺度得点とした。α係数は,内発的動機づけが.71と.76,同一化的調整が.76と.74,取り入れ的調整が.53と.56,外的調整が.62と.70であった。
年度内の変化
動機づけの4下位尺度得点について,線型混合モデルによる分析を行った(Table 1)。内発的動機づけでは,学年の主効果(F(5,592)=7.91, p<.001),交互作用が有意であった(F(5,592)=2.25, p<.05)。学年ごとの時期の単純主効果について,4年生で低下した。同一化的調整では,学年の主効果(F(5,592)=9.14, p<.001),交互作用が有意であった(F(5,592)=4.28, p<.001)。学年ごとの時期の単純主効果について,1年生と6年生で上昇し,4年生で低下した。取り入れ的調整では,時期の主効果(F(1,592)=13.56, p<.001),学年の主効果(F(5,592)=36.95, p<.001),交互作用が有意であった(F(5,592)=2.70, p<.05)。学年ごとの時期の単純主効果について,3年生と4年生で低下した。外的調整では,時期(F(1,592)=10.14, p<.01)と学年の主効果(F(5,592)=34.97, p<.001)が有意であり,交互作用は有意ではなかった(F(5,592)=1.17, n.s.)。
考察
協同的な学習に対する動機づけの年度内変化については,学年による違いがみられた。自律的な動機づけは,4年生で低下する傾向がみられた。一方,1年生と6年生では,同一化的調整が上昇し,協同に対する価値付けが高まったと考えられる。協同的な学習に対する動機づけの変化を生じる要因について,学年差を考慮して検討することが今後の課題である。