[PC096] 体罰経験が自己肯定意識に及ぼす影響
体験の捉え方に注目して
Keywords:体罰, 自己肯定意識
【目的】
本研究の目的は,学校期における体罰経験が自己肯定意識に及ぼす影響を明らかにすることである。
体罰は明確に禁止されているにも関わらず継続されてきた。学校現場で体罰が容認され続ける要因の一つに,体罰が子どもに与える影響について明確に示されていないことがあると考えられる。体罰に関しては種々意見があるが,体罰否定論の根拠とされる心理学実験は限られた被験者を対象に行われたものを根拠にしており,学校現場での体罰が子どもの心身の成長に与える影響を検討した研究は少ない。よって,本研究では子どもの健全な人格の形成への影響を理解するため,自己肯定意識(平石,1990)に注目し,体罰経験が自己肯定意識に与える影響を検討する。特に,体罰経験を被害者がどのように捉えたかという体罰に対する個人の認知に注目し検討を行う。
【方法】
1.調査方法:2013年10~11月,A県の大学生(1年生~4年生)726名に対し,心理学およびキャリア関連の授業後に質問紙の協力依頼をし,その場で配布,回収した。倫理的配慮として回答は任意で無記名であり,希望者に結果をフィードバックする旨を記載した。得られたデータのうち欠損のあるものを除いた655名(男子,458名,女子172名,不明25名)を分析対象とした。
2.調査内容:1)体罰経験・体罰目撃経験・体罰加害経験:これまでの学校期における上記経験の有無,態様,被害内容について。2)体罰経験の捉え方:体罰経験後の生活の変化に対する認知2項目。3)体罰容認意識:体罰は学校生活に必要かどうかについて2項目。4)自己肯定意識:平石(1990)の自己肯定意識尺度のうち対自己領域の 「自己受容」,対他者領域の「自己閉鎖性・人間不信」「自己表明・対人的積極性」「被評価意識・対人緊張」の計26項目を使用し,5件法で回答を求めた。
【結果】
1.体罰被害体験と加害経験との関連
体罰被害経験×体罰加害状況のχ2検定が有意(χ2(3,N=655)=39.23,p<.01)で,残差分析によると体罰・目撃両方被害群において加害経験が多かった。
2.体罰被害状況と体罰容認意識の関連
体罰被害状況×体罰容認意識のχ2検定が有意(χ2(2,N=655)=7.02,p<.05)で,残差分析によると体罰被害群において体罰を必要とする回答が多かった。
3.体罰経験,その捉え方と自己肯定意識との関連
自己肯定意識の各下位尺度を構成する項目の評定値の平均点を尺度得点(「自己受容得点」「自己閉鎖得点」「対人積極性得点」「対人緊張得点」)として算出した。
体罰経験の有無および被害の重症度を独立変数,自己肯定意識の下位尺度得点を従属変数として分散分析を行ったところ,有意差は認められなかった。
体罰経験の捉え方と自己肯定意識との関連を検討するため,体罰経験後に「学校が嫌になった」等ネガティブな変化を認知している群をネガティブ群,「技術・技能が上達した」等ポジティブな変化を認知している群をポジティブ群,双方とも認知している群を葛藤群とし,各群を独立変数,自己肯定意識の各下位尺度得点を従属変数について分散分析を行ったところ「対人緊張得点」において群の効果が有意であった(F(3,327)=3,98,p<.01)。Bonferroniの多重比較によると「対人緊張得点」は葛藤群がその他の群より高かった。
【考察】
体罰被害経験が体罰加害経験および体罰容認意識と関連することが明らかになった。一方で、自己肯定意識との関連を検討すると,体罰被害経験の有無や被害の重症度と自己肯定意識との関連は示されず、体罰経験の認知が自己肯定意識に影響する事が示された。体罰経験を両価的に捉えている者は対人緊張を高めている可能性が示唆された。
本研究の目的は,学校期における体罰経験が自己肯定意識に及ぼす影響を明らかにすることである。
体罰は明確に禁止されているにも関わらず継続されてきた。学校現場で体罰が容認され続ける要因の一つに,体罰が子どもに与える影響について明確に示されていないことがあると考えられる。体罰に関しては種々意見があるが,体罰否定論の根拠とされる心理学実験は限られた被験者を対象に行われたものを根拠にしており,学校現場での体罰が子どもの心身の成長に与える影響を検討した研究は少ない。よって,本研究では子どもの健全な人格の形成への影響を理解するため,自己肯定意識(平石,1990)に注目し,体罰経験が自己肯定意識に与える影響を検討する。特に,体罰経験を被害者がどのように捉えたかという体罰に対する個人の認知に注目し検討を行う。
【方法】
1.調査方法:2013年10~11月,A県の大学生(1年生~4年生)726名に対し,心理学およびキャリア関連の授業後に質問紙の協力依頼をし,その場で配布,回収した。倫理的配慮として回答は任意で無記名であり,希望者に結果をフィードバックする旨を記載した。得られたデータのうち欠損のあるものを除いた655名(男子,458名,女子172名,不明25名)を分析対象とした。
2.調査内容:1)体罰経験・体罰目撃経験・体罰加害経験:これまでの学校期における上記経験の有無,態様,被害内容について。2)体罰経験の捉え方:体罰経験後の生活の変化に対する認知2項目。3)体罰容認意識:体罰は学校生活に必要かどうかについて2項目。4)自己肯定意識:平石(1990)の自己肯定意識尺度のうち対自己領域の 「自己受容」,対他者領域の「自己閉鎖性・人間不信」「自己表明・対人的積極性」「被評価意識・対人緊張」の計26項目を使用し,5件法で回答を求めた。
【結果】
1.体罰被害体験と加害経験との関連
体罰被害経験×体罰加害状況のχ2検定が有意(χ2(3,N=655)=39.23,p<.01)で,残差分析によると体罰・目撃両方被害群において加害経験が多かった。
2.体罰被害状況と体罰容認意識の関連
体罰被害状況×体罰容認意識のχ2検定が有意(χ2(2,N=655)=7.02,p<.05)で,残差分析によると体罰被害群において体罰を必要とする回答が多かった。
3.体罰経験,その捉え方と自己肯定意識との関連
自己肯定意識の各下位尺度を構成する項目の評定値の平均点を尺度得点(「自己受容得点」「自己閉鎖得点」「対人積極性得点」「対人緊張得点」)として算出した。
体罰経験の有無および被害の重症度を独立変数,自己肯定意識の下位尺度得点を従属変数として分散分析を行ったところ,有意差は認められなかった。
体罰経験の捉え方と自己肯定意識との関連を検討するため,体罰経験後に「学校が嫌になった」等ネガティブな変化を認知している群をネガティブ群,「技術・技能が上達した」等ポジティブな変化を認知している群をポジティブ群,双方とも認知している群を葛藤群とし,各群を独立変数,自己肯定意識の各下位尺度得点を従属変数について分散分析を行ったところ「対人緊張得点」において群の効果が有意であった(F(3,327)=3,98,p<.01)。Bonferroniの多重比較によると「対人緊張得点」は葛藤群がその他の群より高かった。
【考察】
体罰被害経験が体罰加害経験および体罰容認意識と関連することが明らかになった。一方で、自己肯定意識との関連を検討すると,体罰被害経験の有無や被害の重症度と自己肯定意識との関連は示されず、体罰経験の認知が自己肯定意識に影響する事が示された。体罰経験を両価的に捉えている者は対人緊張を高めている可能性が示唆された。