[PD006] キャリア発達・教育に関する研究(16)
進路決定における重要な他者およびその影響
キーワード:進路決定, 重要な他者
1.問題と目的 近年の調査は、従来から指摘されている女性の労働力率を示すM字型カーブの底辺部が上昇し、仕事を継続する女性の増加と同時に、「男は仕事・女は家庭」という伝統的な性別役割分業に対する肯定率が若い世代で高くなるという結果を示している(H24年度内閣府;男女共同参画社会に関する世論調査 2013)。こうした社会状況の中で、若い世代の女性の進路・職業選択には様々な要因が複合的に働いているが、直接的な助言や支援の多くは、周囲の身近な他者によりなされ、職業の決定に大きな影響を及ぼしている。女性従事者が多くを占める職種について、母から娘へという継承性や親をはじめとする近親者が、若い世代に及ぼす影響について、若い世代の受け止め方を中心に明らかにし、同時に重要な他者の役割を検討する。
2.方法: 1)調査対象:医療系3年制専門学校の2年生47名(全員女性)。2)調査時期:2014年3~4月 3)手続き:【ⅰ】以下の項目からなる質問紙を作成し実施。「重要だと思う職業能力」、「職業的同一性SCT(園田1987)」、「働き方の希望と現実」、「仕事と家庭(出産・育児)」/【ⅱ】「自己の職業意識の発達について」(中学・高校時代の職場体験とその影響・現在の進路選択に影響を与えた人とその内容・将来展望等)の自由記述。
3.結果と考察
1)現在の進路決定の重要な他者 :
自分が直接処置してもらった医療現場で働いていた「医療従事者」を挙げた学生が最も多く(34.0%)、以下「親」(14.9%)、「(その医療従事者として働いている)母」(10.6%)、「いとこや親戚の人」(8.5%)、さらに「先輩」「友人」「なし・その他」と続く。およそ3人に1人の割合で「医療従事者」を挙げているのは、この年齢までにほとんどの人が一度は診療を受けた経験を持つことが理由である。
2)職業的同一性SCT:
進路決定の重要な他者として、「親」・「(働く)母」、「いとこや親戚の人」の【近親者群】(15名)と「(自分が直接処置してもらった)医療従事者」の【医療従事者群】(16名)に分けて、比較を行った。職業的同一性6項目全体の合計得点では、【近親者群】の値(M=25.0 S.D.=3.10)が【医療従事者群】(M=23.1 S.D.=4.18)と比べて高い。
【近親者群】の自由記述の例を下記に示す。
○母がこの仕事についていて、患者さんが良くなった話を聴いて、やりがいのある仕事だと思った。母を見ていると、育児休暇も取れ、パートという働き方もあるので、仕事と育児のバランスのとれた生活をしたい。定年まで働きたい。年々知識や技術量が増して行けば、よりよい治療を患者に提供できる。
また、【医療従事者群】の記述は次の通りである。
○私が治療されている時、安心する言葉を掛けてくれた。‐(省略)‐私もこういう職業人になりたいと思った。
○定期的に通う医院で働いている人が、いつも優しく接している方で、私は患者として不安を感じることなく、その人がテキパキと笑顔で仕事をしている姿をみて、私も(そんな職業人に)なりたい。
これらの自由記述から、【近親者群】の中でもとりわけ、働く母は、自分の仕事のやりがいについて直接子どもに語り、子どもの側も、患者から頼りにされている母の様子を聞くにつけ、この職業への動機付けとなっていったと考えられる。
3)(キャリア)ライフコースの理想と現実
「職業継続型」「中断再就職型」「中断型」などの(キャリア)ライフコースにおける「理想」と「現実」について、【近親者群】と【医療従事者群】とを比較した。理想・現実の一致は【近親者群】で高い傾向が認められ(P=0.095)、とりわけ母は職業人としてのロールモデルと同時に(キャリア)ライフコースモデルとなっている事が理解される。
2.方法: 1)調査対象:医療系3年制専門学校の2年生47名(全員女性)。2)調査時期:2014年3~4月 3)手続き:【ⅰ】以下の項目からなる質問紙を作成し実施。「重要だと思う職業能力」、「職業的同一性SCT(園田1987)」、「働き方の希望と現実」、「仕事と家庭(出産・育児)」/【ⅱ】「自己の職業意識の発達について」(中学・高校時代の職場体験とその影響・現在の進路選択に影響を与えた人とその内容・将来展望等)の自由記述。
3.結果と考察
1)現在の進路決定の重要な他者 :
自分が直接処置してもらった医療現場で働いていた「医療従事者」を挙げた学生が最も多く(34.0%)、以下「親」(14.9%)、「(その医療従事者として働いている)母」(10.6%)、「いとこや親戚の人」(8.5%)、さらに「先輩」「友人」「なし・その他」と続く。およそ3人に1人の割合で「医療従事者」を挙げているのは、この年齢までにほとんどの人が一度は診療を受けた経験を持つことが理由である。
2)職業的同一性SCT:
進路決定の重要な他者として、「親」・「(働く)母」、「いとこや親戚の人」の【近親者群】(15名)と「(自分が直接処置してもらった)医療従事者」の【医療従事者群】(16名)に分けて、比較を行った。職業的同一性6項目全体の合計得点では、【近親者群】の値(M=25.0 S.D.=3.10)が【医療従事者群】(M=23.1 S.D.=4.18)と比べて高い。
【近親者群】の自由記述の例を下記に示す。
○母がこの仕事についていて、患者さんが良くなった話を聴いて、やりがいのある仕事だと思った。母を見ていると、育児休暇も取れ、パートという働き方もあるので、仕事と育児のバランスのとれた生活をしたい。定年まで働きたい。年々知識や技術量が増して行けば、よりよい治療を患者に提供できる。
また、【医療従事者群】の記述は次の通りである。
○私が治療されている時、安心する言葉を掛けてくれた。‐(省略)‐私もこういう職業人になりたいと思った。
○定期的に通う医院で働いている人が、いつも優しく接している方で、私は患者として不安を感じることなく、その人がテキパキと笑顔で仕事をしている姿をみて、私も(そんな職業人に)なりたい。
これらの自由記述から、【近親者群】の中でもとりわけ、働く母は、自分の仕事のやりがいについて直接子どもに語り、子どもの側も、患者から頼りにされている母の様子を聞くにつけ、この職業への動機付けとなっていったと考えられる。
3)(キャリア)ライフコースの理想と現実
「職業継続型」「中断再就職型」「中断型」などの(キャリア)ライフコースにおける「理想」と「現実」について、【近親者群】と【医療従事者群】とを比較した。理想・現実の一致は【近親者群】で高い傾向が認められ(P=0.095)、とりわけ母は職業人としてのロールモデルと同時に(キャリア)ライフコースモデルとなっている事が理解される。