[PD024] 児童・生徒におけるサポートと対人ストレス(3)
小学生を対象にした検討
キーワード:ソーシャル・サポート, 対人ストレス, 小学生
目 的
本研究は,友人関係と親子関係におけるソーシャル・サポート,対人ストレッサー,ストレス反応の関連を検討したものである。本報告では,中学生(谷口・橋本・田中, 2005),高校生(橋本・谷口・田中, 2005),大学生(谷口・橋本・田中, 2006)に引き続いて,小学生を対象とした研究結果について紹介する。具体的な検討内容は以下のとおりである。第一に,サポートと対人ストレッサーが,対人関係の相手や受け手の性別によって異なるかどうかを検討する。続いて,サポートと対人ストレッサーとの関連について,対人関係内(サポート源とストレッサー源が同一)ならびに対人関係間(サポート源とストレッサー源が異なる)の2側面から検討する。最後に,サポートおよび対人ストレッサーとストレス反応との関連を検討する。
方 法
調査参加者と調査手続き 公立小学校5年生255名(男子121名,女子134名)が調査に参加した。
調査の内容 (1)ソーシャル・サポート尺度:三浦(2002)の中学生用ソーシャル・サポート尺度(5項目4件法)を用いて,友人と親からのサポートを測定した。関係別に全項目の合計点を求め,それをサポート得点とした。(2)対人ストレッサー尺度:橋本(2005)の特定二者関係用対人ストレッサー尺度(18項目4件法)を使用した。本尺度は,「対人葛藤」,「対人過失」,「対人摩耗」の3下位尺度をもつ。友人と親の関係別に,尺度全体ならびに各下位尺度の項目平均点を求め,それを対人ストレッサー得点とした。(3)ストレス反応尺度:三浦(2002)の中学生用ストレス反応尺度(20項目4件法)を用いた。全項目の合計点を求め,それをストレス反応得点とした。
結 果 と 考 察
サポートおよび対人ストレッサーの関係差と性差 友人サポートよりも親サポートが多く(t(245)=-9.17, p<.01),両者の間には,中程度の有意な正の相関が認められた。友人および親サポートの両方において性差が認められ,いずれも,男子より女子の得点が高かった(友人: t(246)=-3.29, p<.01; 親: t(251)=-2.92, p<.01)。対人ストレッサーの各下位尺度間の相関を対人関係別に求めたところ,友人関係(rs=.46~.53)の方が,親子関係(rs=.37~.53)よりも,相関値が相対的にやや高い傾向が見られた。対人ストレッサーに対して,対人関係(2)× ストレッサー種類(3)の被験者内2要因分散分析を行った結果,それぞれの主効果(F(1,223)=20.19, p<.01; F(2,446)=108.25, p<.01)と交互作用(F(2,446)=31.39, p<.01)が有意であった。下位検定の結果,友人関係では対人摩耗,親子関係では対人過失がそれぞれ多かった。性差に関しては,友人関係ならびに親子関係のいずれのストレッサーにおいても,有意な差は見られなかった。
サポートと対人ストレッサーの関連 友人サポートは,友人関係のすべてのストレッサーならびに親子関係の対人過失を除くすべてのストレッサーと有意な負の相関を示した。また,親サポートは,親子関係ならびに友人関係のすべてのストレッサーと有意な負の相関を示した。サポートと対人ストレッサーは,関係内だけでなく,関係間においても関連を持っていた。
サポートおよび対人ストレッサーとストレス反応との関連 サポートとストレス反応との関連では,友人および親サポートのいずれもがストレス反応と有意な負の相関を示した。一方,対人ストレッサーとストレス反応との関連では,友人関係と親子関係の両方のストレッサーが,ストレス反応と有意な正の相関を示した。相関の程度は,対人関係内および対人関係間を通じてほぼ同程度であった。中・高・大学生の結果と同様に,小学生においても,サポートに比べてストレッサーの方が精神的健康に対してより強い影響を与えていることが示唆された。
本研究は,友人関係と親子関係におけるソーシャル・サポート,対人ストレッサー,ストレス反応の関連を検討したものである。本報告では,中学生(谷口・橋本・田中, 2005),高校生(橋本・谷口・田中, 2005),大学生(谷口・橋本・田中, 2006)に引き続いて,小学生を対象とした研究結果について紹介する。具体的な検討内容は以下のとおりである。第一に,サポートと対人ストレッサーが,対人関係の相手や受け手の性別によって異なるかどうかを検討する。続いて,サポートと対人ストレッサーとの関連について,対人関係内(サポート源とストレッサー源が同一)ならびに対人関係間(サポート源とストレッサー源が異なる)の2側面から検討する。最後に,サポートおよび対人ストレッサーとストレス反応との関連を検討する。
方 法
調査参加者と調査手続き 公立小学校5年生255名(男子121名,女子134名)が調査に参加した。
調査の内容 (1)ソーシャル・サポート尺度:三浦(2002)の中学生用ソーシャル・サポート尺度(5項目4件法)を用いて,友人と親からのサポートを測定した。関係別に全項目の合計点を求め,それをサポート得点とした。(2)対人ストレッサー尺度:橋本(2005)の特定二者関係用対人ストレッサー尺度(18項目4件法)を使用した。本尺度は,「対人葛藤」,「対人過失」,「対人摩耗」の3下位尺度をもつ。友人と親の関係別に,尺度全体ならびに各下位尺度の項目平均点を求め,それを対人ストレッサー得点とした。(3)ストレス反応尺度:三浦(2002)の中学生用ストレス反応尺度(20項目4件法)を用いた。全項目の合計点を求め,それをストレス反応得点とした。
結 果 と 考 察
サポートおよび対人ストレッサーの関係差と性差 友人サポートよりも親サポートが多く(t(245)=-9.17, p<.01),両者の間には,中程度の有意な正の相関が認められた。友人および親サポートの両方において性差が認められ,いずれも,男子より女子の得点が高かった(友人: t(246)=-3.29, p<.01; 親: t(251)=-2.92, p<.01)。対人ストレッサーの各下位尺度間の相関を対人関係別に求めたところ,友人関係(rs=.46~.53)の方が,親子関係(rs=.37~.53)よりも,相関値が相対的にやや高い傾向が見られた。対人ストレッサーに対して,対人関係(2)× ストレッサー種類(3)の被験者内2要因分散分析を行った結果,それぞれの主効果(F(1,223)=20.19, p<.01; F(2,446)=108.25, p<.01)と交互作用(F(2,446)=31.39, p<.01)が有意であった。下位検定の結果,友人関係では対人摩耗,親子関係では対人過失がそれぞれ多かった。性差に関しては,友人関係ならびに親子関係のいずれのストレッサーにおいても,有意な差は見られなかった。
サポートと対人ストレッサーの関連 友人サポートは,友人関係のすべてのストレッサーならびに親子関係の対人過失を除くすべてのストレッサーと有意な負の相関を示した。また,親サポートは,親子関係ならびに友人関係のすべてのストレッサーと有意な負の相関を示した。サポートと対人ストレッサーは,関係内だけでなく,関係間においても関連を持っていた。
サポートおよび対人ストレッサーとストレス反応との関連 サポートとストレス反応との関連では,友人および親サポートのいずれもがストレス反応と有意な負の相関を示した。一方,対人ストレッサーとストレス反応との関連では,友人関係と親子関係の両方のストレッサーが,ストレス反応と有意な正の相関を示した。相関の程度は,対人関係内および対人関係間を通じてほぼ同程度であった。中・高・大学生の結果と同様に,小学生においても,サポートに比べてストレッサーの方が精神的健康に対してより強い影響を与えていることが示唆された。