[PD033] キャリア意識,社会的比較の方向と自己評価・行動との関連
キーワード:キャリア意識, 社会的比較, 自己評価
問題と目的
就職活動は大学生の重要なライフイベントである。誰もが上首尾に活動を遂行しようとするため,他者がどのような就職活動を行っているか比較し推測する社会的比較は,学生の自己評価に影響すると考えられる(藤島・三浦・清水・高橋,2007)。
Lockwood & Kunda(1997)は,社会的比較が自己評価に与える影響について検討し,大学4年生では優秀な相手と進路に関する社会的比較をした後の自己評価が低下することを明らかにした。しかし,人は向上性の圧力から上方比較することもあれば,自己評価維持のため下方比較することもある(高田,1992)。このように,いかなる相手を比較対象に選ぶかは個人の選択にかかっている。
そこで本研究では,大学生が進路選択において上方・下方いずれの社会的比較を行うか検討し,比較後の感情や行動との関連を検討することを目的とした。なお,社会的比較の選好を規定する要因としてキャリアへの意識も検討することとした。
方 法
調査時期:2013年11月~12月
調査対象者:東北地方の私立大学文系2学科に所属する3年生108名(男子37名,女子71名)。平均年齢は20.78歳(SD=0.46)。
調査内容:a)キャリア・アクション・ビジョン・テスト(Career Action Vision Test (CAVT);下村ら,2009):「アクション」・「ビジョン」の下位尺度から成る12項目,5件法。なお,本研究では両下位尺度の得点に基づき対象者をA型・B型・C型の3タイプに分類した。b)比較相手の選択:進路選択(就職活動・進学)の際に上方比較・下方比較のいずれを行うか選択させた。c)比較相手のエピソード:Lockwood & Kunda(1999),Lockwood(2002)と予備調査を元に作成されたエピソード(上方比較・下方比較の2種)のうち,b)で選択した1種類のみを読ませた。d)社会的比較の結果の項目(外山,2006):「自己卑下」「回避的行動」「接近的行動」「自己向上」「無気力的行動」「自己高揚」の計27項目,5件法。c)を読んだ上で,あてはまる選択肢を回答させた。
結 果
1)キャリア意識のタイプと社会的比較の方向:CAVTにて測定されたA型・B型・C型の内訳は,順に41名,24名,43名であった。また,社会的比較の方向は,上方比較を選んだ者が85名,下方比較を選んだ者が23名であった。χ2検定を行ったところ,それぞれ有意な人数比率の偏りが見られた(順にχ2=6.06, p<.05; χ2=35.59, p<.01)。
2)キャリア意識と社会的比較の方向が自己評価と行動に及ぼす影響:社会的比較の結果の下位尺度を従属変数,CAVTのタイプと社会的比較の方向を独立変数とした二要因分散分析を行った。その結果,有意傾向であったが,社会的比較の結果の「無力的行動」において,CAVTのタイプと社会的比較の方向の交互作用が見られた(F=2.41, df=2/101, p<.10)。単純主効果を検定したところ,CAVTタイプがB型のとき下方比較群が上方比較群よりも無力的行動得点が有意に高く,社会的比較の方向が下方比較のとき,CAVTタイプのC型がA型よりも無力的行動得点が有意に高かった。
考 察
以上から,CAVTのアクション・ビジョンの一方が高いB型は,下方比較により無力的になることが示唆された。キャリア意識が発達する途上での下方比較は,進路選択を自己脅威的に見ていることを示唆するかもしれない。なお,本研究では対象者の約8割が上方比較を選んだ。この理由としては,調査時期が就職活動の開始直前であり,向上性の圧力が強かった可能性が考えられる。比較後の結果についてより詳細な検討が必要である。
就職活動は大学生の重要なライフイベントである。誰もが上首尾に活動を遂行しようとするため,他者がどのような就職活動を行っているか比較し推測する社会的比較は,学生の自己評価に影響すると考えられる(藤島・三浦・清水・高橋,2007)。
Lockwood & Kunda(1997)は,社会的比較が自己評価に与える影響について検討し,大学4年生では優秀な相手と進路に関する社会的比較をした後の自己評価が低下することを明らかにした。しかし,人は向上性の圧力から上方比較することもあれば,自己評価維持のため下方比較することもある(高田,1992)。このように,いかなる相手を比較対象に選ぶかは個人の選択にかかっている。
そこで本研究では,大学生が進路選択において上方・下方いずれの社会的比較を行うか検討し,比較後の感情や行動との関連を検討することを目的とした。なお,社会的比較の選好を規定する要因としてキャリアへの意識も検討することとした。
方 法
調査時期:2013年11月~12月
調査対象者:東北地方の私立大学文系2学科に所属する3年生108名(男子37名,女子71名)。平均年齢は20.78歳(SD=0.46)。
調査内容:a)キャリア・アクション・ビジョン・テスト(Career Action Vision Test (CAVT);下村ら,2009):「アクション」・「ビジョン」の下位尺度から成る12項目,5件法。なお,本研究では両下位尺度の得点に基づき対象者をA型・B型・C型の3タイプに分類した。b)比較相手の選択:進路選択(就職活動・進学)の際に上方比較・下方比較のいずれを行うか選択させた。c)比較相手のエピソード:Lockwood & Kunda(1999),Lockwood(2002)と予備調査を元に作成されたエピソード(上方比較・下方比較の2種)のうち,b)で選択した1種類のみを読ませた。d)社会的比較の結果の項目(外山,2006):「自己卑下」「回避的行動」「接近的行動」「自己向上」「無気力的行動」「自己高揚」の計27項目,5件法。c)を読んだ上で,あてはまる選択肢を回答させた。
結 果
1)キャリア意識のタイプと社会的比較の方向:CAVTにて測定されたA型・B型・C型の内訳は,順に41名,24名,43名であった。また,社会的比較の方向は,上方比較を選んだ者が85名,下方比較を選んだ者が23名であった。χ2検定を行ったところ,それぞれ有意な人数比率の偏りが見られた(順にχ2=6.06, p<.05; χ2=35.59, p<.01)。
2)キャリア意識と社会的比較の方向が自己評価と行動に及ぼす影響:社会的比較の結果の下位尺度を従属変数,CAVTのタイプと社会的比較の方向を独立変数とした二要因分散分析を行った。その結果,有意傾向であったが,社会的比較の結果の「無力的行動」において,CAVTのタイプと社会的比較の方向の交互作用が見られた(F=2.41, df=2/101, p<.10)。単純主効果を検定したところ,CAVTタイプがB型のとき下方比較群が上方比較群よりも無力的行動得点が有意に高く,社会的比較の方向が下方比較のとき,CAVTタイプのC型がA型よりも無力的行動得点が有意に高かった。
考 察
以上から,CAVTのアクション・ビジョンの一方が高いB型は,下方比較により無力的になることが示唆された。キャリア意識が発達する途上での下方比較は,進路選択を自己脅威的に見ていることを示唆するかもしれない。なお,本研究では対象者の約8割が上方比較を選んだ。この理由としては,調査時期が就職活動の開始直前であり,向上性の圧力が強かった可能性が考えられる。比較後の結果についてより詳細な検討が必要である。