[PD034] 大学生の社会的スキルと認知的統制がストレス反応に及ぼす影響
キーワード:社会的スキル, 認知的統制, ストレス反応
目 的
社会的スキルは保持するだけでなく,適切な場面で適切に行使されなくてはならないことが多くの研究者によって強調されている(e.g., Darden & Ginter, 1996; Gumpel, 2007)。相川(2009)は,社会的スキルを適切に実行する上で,解読過程,意志決定過程,感情統制過程といった一連の認知過程が重要であると指摘している。これらは,問題に対する別の解釈を検討したり,複数の解決策を産出したり,否定的な思考をコントロールするという,認知療法(cognitive therapy)の標的スキルである「認知的統制」(杉浦,2007)との対応関係がうかがえる。このことから,認知的統制の高さは社会的スキルの適切な実行を補い,相乗的に心理的適応を高めることが期待される。
本研究では,心理的適応に対する社会的スキルと認知的統制の相乗効果を明らかにするため,両者がストレス反応に及ぼす影響を検証する。
方 法
調査対象者 地方の私立大学に通う学生206名。
質問紙 ①社会的スキル尺度(新川他,2012):青年期の社会的スキルを測定する24項目4件法の尺度。②認知的統制尺度(杉浦,2007):認知的スキルを測定する11項目4件法の尺度。「論理的分析」「破局的思考の緩和」の2因子からなる。③SRS-18(鈴木他,1997):心理的ストレス反応を測定する18項目4件法の尺度。「抑うつ・不安」「不機嫌・怒り」「無気力」の3因子からなる。
解析方法 SRS-18の3因子をそれぞれ目的変数とした階層的重回帰分析を実施した。Step 1では共変量として性別,年齢を説明変数に投入した。Step 2では社会的スキルと認知的統制を投入し,主効果を検討した。Step 3では社会的スキル×認知的統制を交互作用項として投入した。
結果と考察
階層的重回帰分析の結果,ストレス反応に対して社会的スキルと破局的思考の緩和の主効果がみられたものの,社会的スキル×認知的統制の交互作用はいずれのストレス反応に対しても認められなかった(Table 1-3)。この結果から,社会的スキルと認知的統制は独自にストレスを緩和させる効果があるといえる。先行研究では,回避的傾向が高い場合に社会的スキルがむしろ心理的不適応を増悪させることが示されており(Shinkawa et al., 2013),今後,社会的スキルの適切性や効果性に影響を及ぼす認知・行動的要因の解明が望まれる。
社会的スキルは保持するだけでなく,適切な場面で適切に行使されなくてはならないことが多くの研究者によって強調されている(e.g., Darden & Ginter, 1996; Gumpel, 2007)。相川(2009)は,社会的スキルを適切に実行する上で,解読過程,意志決定過程,感情統制過程といった一連の認知過程が重要であると指摘している。これらは,問題に対する別の解釈を検討したり,複数の解決策を産出したり,否定的な思考をコントロールするという,認知療法(cognitive therapy)の標的スキルである「認知的統制」(杉浦,2007)との対応関係がうかがえる。このことから,認知的統制の高さは社会的スキルの適切な実行を補い,相乗的に心理的適応を高めることが期待される。
本研究では,心理的適応に対する社会的スキルと認知的統制の相乗効果を明らかにするため,両者がストレス反応に及ぼす影響を検証する。
方 法
調査対象者 地方の私立大学に通う学生206名。
質問紙 ①社会的スキル尺度(新川他,2012):青年期の社会的スキルを測定する24項目4件法の尺度。②認知的統制尺度(杉浦,2007):認知的スキルを測定する11項目4件法の尺度。「論理的分析」「破局的思考の緩和」の2因子からなる。③SRS-18(鈴木他,1997):心理的ストレス反応を測定する18項目4件法の尺度。「抑うつ・不安」「不機嫌・怒り」「無気力」の3因子からなる。
解析方法 SRS-18の3因子をそれぞれ目的変数とした階層的重回帰分析を実施した。Step 1では共変量として性別,年齢を説明変数に投入した。Step 2では社会的スキルと認知的統制を投入し,主効果を検討した。Step 3では社会的スキル×認知的統制を交互作用項として投入した。
結果と考察
階層的重回帰分析の結果,ストレス反応に対して社会的スキルと破局的思考の緩和の主効果がみられたものの,社会的スキル×認知的統制の交互作用はいずれのストレス反応に対しても認められなかった(Table 1-3)。この結果から,社会的スキルと認知的統制は独自にストレスを緩和させる効果があるといえる。先行研究では,回避的傾向が高い場合に社会的スキルがむしろ心理的不適応を増悪させることが示されており(Shinkawa et al., 2013),今後,社会的スキルの適切性や効果性に影響を及ぼす認知・行動的要因の解明が望まれる。