[PE013] 教育実習を充実させるための実習生の心理的基盤
居場所感を規定する場所・時間・人間関係の探索的な検討
Keywords:教育実習, 居場所感
教育実習を充実させる教育的配慮の一環として、実習生の適応要因である居場所感を採り上げる。居場所感は実習生の自己の存在意義と有用性を担保し、実習の充実感を形成する心理的基盤である。しかし、これ迄の居場所感に関する研究では、専ら長期的な集団への不適応(不登校等)や精神的安定に関しては検討されてきたが、教育実習のような数週間程度での環境適応については検討されてこなかった。実習が終わる頃に、ようやく環境にも慣れ、本来の能力が発揮できるようになるのでは、教育実習の学習成果も見込めない。本研究では、実習生が早期に居場所感を獲得し、充実した実習を行うために必要な諸要因を探索的に調査した。
方 法
調査対象者 3週間の教育実習を行った計66名に対面で調査した。調査時期は各自の実習が終了した後の1ヶ月以内に実施した。
調査項目 居場所感尺度(石本、2009)を実習用に表現を改変した以下の14項目を用いた。回答は「当てはまらない」から「当てはまる」までの両極性5件法で評定させた。それらとは別に居場所に関する19項目について重要度を両極性の4件法で評定させた。
1)自分には他者から関心がもたれていた。
2)自分が必要とされていると感じた。
3)自分が役に立っていると感じた。
4)自分には実習中に果たすべき役割があった。
5)実習を休むと指導者が困ると感じた。
6)実習を休むと他の実習生が困ると感じた。
7)実習を休むと担当クラスの生徒が困ると感じた。
8)周囲から自分が認められていると感じた。
9)自分の強みが実感できる機会があった。
10)自分らしさを感じる場面や機会があった。
11)実習中に自分というものを意識していた。
12)実習ではありのままの自分が出せた。
13)自分のやりたい事をすることができた。
14)これが自分の精一杯だと感じる事があった。
結果と考察
実習での居場所感項目群 因子分析で2因子が抽出された(表1)。作業用の下位尺度として第1
成分に負荷の高い計8項目で本来感尺度を構成し(α=.82)、第2成分に負荷の高い計6項目で有用感尺度を構成した(α=.69)。
表1 実習での居場所感項目群の因子負荷
項目平均SD第1成分第2成分h2
1) 4.02 .734 .438 -.103 .549
2) 3.58 .824 .631 .432 .742
3) 3.36 .955 .414 .452 .683
4) 4.23 .989 .418 .598 .573
5) 3.62 1.423 .168 .635 .619
6) 2.56 1.437 -.301 .664 .549
7) 3.17 1.284 .038 .791 .680
8) 3.74 .865 .615 .387 .580
9) 3.73 1.144 .641 .150 .649
10) 3.89 1.097 .726 .174 .778
11) 3.62 1.134 .680 .193 .724
12) 3.50 1.154 .793 .012 .638
13) 3.68 1.069 .545 .145 .531
14) 3.62 1.147 .208 .397 .592
実習全体に関する満足感 不満足(1点)から満足(4点)までの4件法で平均3.45(SD=.910) であった。満足感に影響すると考えられる人間関係、授業、控室、職員室、実習時間、準備時間、休憩時間、科目成績の各重要性について、満足度が平均よりも高い者37名と低い者29名の2群間で比較したところ、百点満点の科目成績でのみ有意な差が認められた(t64=3.546,p<.001)。
安心できる場所 有った者が60名、無かった者が6名であった。この2群間で実習の満足度は有意に違った(t64=3.046, p<.01)。さらに居場所感の下位尺度を比較したところ、有用感では有意な差は認められなかったが、本来感で有意な差が認められた(t64=3.888,p<.001)。
安心できる時間 有った者が57名、無かった者が9名であった。この2群間で実習の満足度は有意に違った(t64=2.136,p<.05)が、居場所感については、いずれも有意な差は認められなかった。
支援的な人間関係 紙面幅のため割愛する。
以上の事から、実習の初期段階や事前指導で、実習生の本来感を高める配慮を行うことにより実習の充実に繋がることが期待できる。
方 法
調査対象者 3週間の教育実習を行った計66名に対面で調査した。調査時期は各自の実習が終了した後の1ヶ月以内に実施した。
調査項目 居場所感尺度(石本、2009)を実習用に表現を改変した以下の14項目を用いた。回答は「当てはまらない」から「当てはまる」までの両極性5件法で評定させた。それらとは別に居場所に関する19項目について重要度を両極性の4件法で評定させた。
1)自分には他者から関心がもたれていた。
2)自分が必要とされていると感じた。
3)自分が役に立っていると感じた。
4)自分には実習中に果たすべき役割があった。
5)実習を休むと指導者が困ると感じた。
6)実習を休むと他の実習生が困ると感じた。
7)実習を休むと担当クラスの生徒が困ると感じた。
8)周囲から自分が認められていると感じた。
9)自分の強みが実感できる機会があった。
10)自分らしさを感じる場面や機会があった。
11)実習中に自分というものを意識していた。
12)実習ではありのままの自分が出せた。
13)自分のやりたい事をすることができた。
14)これが自分の精一杯だと感じる事があった。
結果と考察
実習での居場所感項目群 因子分析で2因子が抽出された(表1)。作業用の下位尺度として第1
成分に負荷の高い計8項目で本来感尺度を構成し(α=.82)、第2成分に負荷の高い計6項目で有用感尺度を構成した(α=.69)。
表1 実習での居場所感項目群の因子負荷
項目平均SD第1成分第2成分h2
1) 4.02 .734 .438 -.103 .549
2) 3.58 .824 .631 .432 .742
3) 3.36 .955 .414 .452 .683
4) 4.23 .989 .418 .598 .573
5) 3.62 1.423 .168 .635 .619
6) 2.56 1.437 -.301 .664 .549
7) 3.17 1.284 .038 .791 .680
8) 3.74 .865 .615 .387 .580
9) 3.73 1.144 .641 .150 .649
10) 3.89 1.097 .726 .174 .778
11) 3.62 1.134 .680 .193 .724
12) 3.50 1.154 .793 .012 .638
13) 3.68 1.069 .545 .145 .531
14) 3.62 1.147 .208 .397 .592
実習全体に関する満足感 不満足(1点)から満足(4点)までの4件法で平均3.45(SD=.910) であった。満足感に影響すると考えられる人間関係、授業、控室、職員室、実習時間、準備時間、休憩時間、科目成績の各重要性について、満足度が平均よりも高い者37名と低い者29名の2群間で比較したところ、百点満点の科目成績でのみ有意な差が認められた(t64=3.546,p<.001)。
安心できる場所 有った者が60名、無かった者が6名であった。この2群間で実習の満足度は有意に違った(t64=3.046, p<.01)。さらに居場所感の下位尺度を比較したところ、有用感では有意な差は認められなかったが、本来感で有意な差が認められた(t64=3.888,p<.001)。
安心できる時間 有った者が57名、無かった者が9名であった。この2群間で実習の満足度は有意に違った(t64=2.136,p<.05)が、居場所感については、いずれも有意な差は認められなかった。
支援的な人間関係 紙面幅のため割愛する。
以上の事から、実習の初期段階や事前指導で、実習生の本来感を高める配慮を行うことにより実習の充実に繋がることが期待できる。