[PE028] メタ認知的活動の活性化を促す授業実践の試み
キーワード:メタ認知的活動, 課題選択学習
【問題と目的】
メタ認知が学習において重要であるという知見を,多くの研究者が指摘している(例えばZimmerman,1986;三宮,2008など)。また,優れた授業実践の多くに,児童のメタ認知を活性化させる発問を見かけることができる。しかし,メタ認知的活動を促進させる具体的な手立てとして確立されているものはない。そこで,メタ認知的活動が活性化する手立てとして,ふきだし法・自己チェックカード・課題解決学習を実施し,検証を行った。
【方法】
調査方法 メタ認知的活動の活性化を測定する用具として,メタ認知尺度による質問紙を作成し,活用した。清水(1995)の尺度以外に,授業特有の児童相互の学び合いによる影響を考慮し,原尺度51項目を2012年11月から12月にかけて公立小学校4,5年生349名に実施した。その結果を因子分析(バリマックス回転)し,4因子解を採用した。Cronbachのα係数は0.91であった。
授業実践は2単元で行った。1つはふきだし法と自己チェックカードによる振り返りを行う群(以下,手立てを取り入れた群)と行わない群(以下,手立てを取り入れなかった群)で,メタ認知的活動に差が現れるかという検証である。2つ目は課題選択学習を実施した場合の効果の検証である。
対象と授業内容 授業は公立小学校5年生125名を対象に行った。メタ認知の質問紙は授業1の前(4月)後(6月),授業2の後(10月)の合計3回実施した。
【内容】
授業はいずれも算数で,授業1は「体積」授業2は「角柱と円柱」の単元で行った。
ふきだしによるノートの記述と,自己チェックカードの記述内容を分析し,メタ認知的活動に関する内容のものと,それ以外の内容の11項目に分類した。その結果,課題を選択する学習時にメタ認知的活動に関する記述が増えることが確認された。そこで,授業2ではグループによる課題解決学習を導入した。また,手立てを取り入れた群は引き続き実施した。
【結果】
授業1では,手立てを取り入れなかった群は尺度得点が低下し,手立てを取り入れた群は上昇した。授業2では,手立ての有無に関わらず,得点
の上昇,あるいは上昇した数値の維持が見られた。(表1)
【考察】
授業にふきだしや自己チェックカードによる振り返りを行うことで,メタ認知的活動を促していることについて先行研究の傾向が確認された。また,授業2では,課題解決学習を取り入れることによって,手立てを取り入れなかった群にもメタ認知的活動が活性化することが確認された。これは,グループ学習の発話記録により,分からない課題について児童相互の話し合いが確認されており,それによって経験の想起や,学習方略の使用が活発になったことが考えられる。メタ認知的活動の継続的使用を促すためには,手立てを取り入れる学習と課題選択学習を組み合わせる事の有効性が示唆された。