[PE034] 高校生・大学生はテストの目的をどのように認識しているか
キーワード:既有知識, テスト, 教育評価
問題と目的 学校での学習場面では,定期テストなど種々のテストが行われている。このようなテストは,様々な目的を持って行われる。しかし,学習者はその目的を必ずしも認識しているとは限らない。そこで本研究では,高校生・大学生を対象にテスト目的についての認識を検討する。
教育活動の途上で行われるテストを機能の面から分類したものに,「形成的評価」と「総括的評価」がある(梶田,2002)。形成的評価は,カリキュラム作成,教授,学習の3つの過程のあらゆる改善のために用いられる組織的な評価である。一方,総括的評価は1つの学期やコースのプログラムの終わりに,成績づけや認定,進歩の評価,カリキュラムや教育計画の有効性の検討などを目的として用いられる評価である(ブルーム他,1973)。
これらについて梶田(2002)は,機能の面から捉え,「とりまとめ」の評価である総括的評価に対し,「次のステップへの行動を促す評価」を形成的評価とした。したがって,中間テストや期末テスト,成績の評価でもその用いられ方によって形成的評価の機能を有するとしている。形成的評価は教師にとって改善のための手がかりを与えるが,学習者にも学習の調整を促す。また,総括的評価は一般的には学習者の成果の評価で用いられることが多いが,これは教授者側の出来も反映しており,教授活動に対する評価としても解釈できる。
これらを正しく認識しテストを役立てることは学習者にとって有益なことである。また,教職課程を履修する学生に対してはこのような認識を形成させることが1つの教育目標となり得る。しかし,これらを達成するためには,学習者が教育評価に対して有している認識について予備的に検討することが必要だと考えられる。そこで本研究では,教育評価について,機能(総括的-形成的)と対象(学習者-教授者)からその目的を整理し,(1)教師が学習者に対して行う総括的評価,(2)教師が自身の教授活動に対して行う総括的評価,(3)教授者が改善に用いる形成的評価,(4)学習者が学習の調整に用いるための形成的評価の4つについて,高校生・大学生がどの程度,テストの目的として認識しているかについて検討する。
方法 調査対象者 関東地方の公立高校生32名,および私立大学生(心理学関連科目受講生)65名。ともに授業時間中に冊子を配布し,一斉に回答を求めた。質問項目 4項目:(1)それまでの授業内容をあなたがどのくらい身につけているか判定するため(総括・学習者),(2)自分の授業がどのくらいうまく行われたかを先生が判断するため(総括・教授者),(3)あなたが理解していないところを明らかにして,あなたの復習に活かせるようにするため(形成・学習者),(4)生徒たちがどこを理解しにくかったかを調べて,先生が授業をわかりやすくするため(形成・教授者)。これらに対し,高校生は「1.そう思わない」から「4.そう思う」の4件法,大学生は「1.全然そう思わない」から「6.かなりそう思う」の6件法で回答した。
結果と考察 高校生・大学生の各項目の平均値と標準偏差をTABLE1に示す。対象者ごとに,2要因被験者内分散分析を行った。その結果,高校生,大学生ともに交互作用が有意であった(高校生:F(1,31)=4.28,p<.05,大学生:F(1,64)=40.0 ,p<.001)。機能(総括的-形成的)の単純主効果を検定したところ,高校生,大学生ともに学習者においては有意であった(高校生:F(1,31)= 8.38,p<.01,大学生:F(1,64) =29.4,p<.001)が,教授者においては有意な差は見られなかった(高校生:F(1,31)=0.89,大学生:F(1,64) =0.30)。また,対象(学習者-教授者)の単純主効果は,高校生,大学生ともに,総括的(高校生:F(1,31)= 48.7,p<.001,大学生:F(1,64) =104.0,p<.001),形成的(高校生:F(1,31)= 16.3,p<.001,大学生:F(1,64) =10.8,p<.005)の両者において有意であった。以上より,高校生・大学生と一貫して,学習者を対象とした総括的評価の側面がテストの目的として最も強く認識されており,また,教授者よりも学習者がその評価対象として強く認識されていると考えられる。
TABLE 1 各項目の平均値(標準偏差)
学習者教授者学習者教授者
総括的3.56(0.75)2.16(1.03)5.32(0.66)3.85(1.07)
形成的2.94(0.93)2.13(0.89)4.42(1.32)3.94(1.24)
(左:高校生 [1-4],n=32,右:大学生[1-6],n=65)
教育活動の途上で行われるテストを機能の面から分類したものに,「形成的評価」と「総括的評価」がある(梶田,2002)。形成的評価は,カリキュラム作成,教授,学習の3つの過程のあらゆる改善のために用いられる組織的な評価である。一方,総括的評価は1つの学期やコースのプログラムの終わりに,成績づけや認定,進歩の評価,カリキュラムや教育計画の有効性の検討などを目的として用いられる評価である(ブルーム他,1973)。
これらについて梶田(2002)は,機能の面から捉え,「とりまとめ」の評価である総括的評価に対し,「次のステップへの行動を促す評価」を形成的評価とした。したがって,中間テストや期末テスト,成績の評価でもその用いられ方によって形成的評価の機能を有するとしている。形成的評価は教師にとって改善のための手がかりを与えるが,学習者にも学習の調整を促す。また,総括的評価は一般的には学習者の成果の評価で用いられることが多いが,これは教授者側の出来も反映しており,教授活動に対する評価としても解釈できる。
これらを正しく認識しテストを役立てることは学習者にとって有益なことである。また,教職課程を履修する学生に対してはこのような認識を形成させることが1つの教育目標となり得る。しかし,これらを達成するためには,学習者が教育評価に対して有している認識について予備的に検討することが必要だと考えられる。そこで本研究では,教育評価について,機能(総括的-形成的)と対象(学習者-教授者)からその目的を整理し,(1)教師が学習者に対して行う総括的評価,(2)教師が自身の教授活動に対して行う総括的評価,(3)教授者が改善に用いる形成的評価,(4)学習者が学習の調整に用いるための形成的評価の4つについて,高校生・大学生がどの程度,テストの目的として認識しているかについて検討する。
方法 調査対象者 関東地方の公立高校生32名,および私立大学生(心理学関連科目受講生)65名。ともに授業時間中に冊子を配布し,一斉に回答を求めた。質問項目 4項目:(1)それまでの授業内容をあなたがどのくらい身につけているか判定するため(総括・学習者),(2)自分の授業がどのくらいうまく行われたかを先生が判断するため(総括・教授者),(3)あなたが理解していないところを明らかにして,あなたの復習に活かせるようにするため(形成・学習者),(4)生徒たちがどこを理解しにくかったかを調べて,先生が授業をわかりやすくするため(形成・教授者)。これらに対し,高校生は「1.そう思わない」から「4.そう思う」の4件法,大学生は「1.全然そう思わない」から「6.かなりそう思う」の6件法で回答した。
結果と考察 高校生・大学生の各項目の平均値と標準偏差をTABLE1に示す。対象者ごとに,2要因被験者内分散分析を行った。その結果,高校生,大学生ともに交互作用が有意であった(高校生:F(1,31)=4.28,p<.05,大学生:F(1,64)=40.0 ,p<.001)。機能(総括的-形成的)の単純主効果を検定したところ,高校生,大学生ともに学習者においては有意であった(高校生:F(1,31)= 8.38,p<.01,大学生:F(1,64) =29.4,p<.001)が,教授者においては有意な差は見られなかった(高校生:F(1,31)=0.89,大学生:F(1,64) =0.30)。また,対象(学習者-教授者)の単純主効果は,高校生,大学生ともに,総括的(高校生:F(1,31)= 48.7,p<.001,大学生:F(1,64) =104.0,p<.001),形成的(高校生:F(1,31)= 16.3,p<.001,大学生:F(1,64) =10.8,p<.005)の両者において有意であった。以上より,高校生・大学生と一貫して,学習者を対象とした総括的評価の側面がテストの目的として最も強く認識されており,また,教授者よりも学習者がその評価対象として強く認識されていると考えられる。
TABLE 1 各項目の平均値(標準偏差)
学習者教授者学習者教授者
総括的3.56(0.75)2.16(1.03)5.32(0.66)3.85(1.07)
形成的2.94(0.93)2.13(0.89)4.42(1.32)3.94(1.24)
(左:高校生 [1-4],n=32,右:大学生[1-6],n=65)