[PE035] 作文と目標設定を取り入れた障がい理解教育の成果に関わる実証的研究(1)
児童が書いた作文内容の分析に基づく検討
キーワード:障がい理解教育, 障がい理解段階, 作文活動
【背景と目的】
現行の小中高等学校における学習指導要領(文部科学省,2008,2009)では,障がい理解教育の内容として,特別支援学校といった他機関との連携による交流活動が推奨されている。徳田・水野(2005)や真城(2003)の障がい理解教育の定義から,教育実践の手立てとして,次の2つを導くことができる。1つに,障がいに関する具体的で正確な知識を与え,その知識に基づき,科学的な認識を形成し,自らの態度や行動について考えさせるというボトムアップの手立て。もう1つは,障がい児・者に対する人間の尊重,それに基づく関わり方を体験的に学ぶことにより,科学的な認識を育むトップダウンの手立てである。
また,徳田(2003)は,障がい理解の5つの段階(第1段階:気づきの段階,第2段階:知識化の段階,第3段階:情緒的理解段階,第4段階:態度形成段階,第5段階:受容的行動の段階)を示し,この段階を考慮した指導および評価の必要性を示唆している。
これらのことから,障がい理解教育の実施においては,障がい理解の段階に応じた教育活動を行う(徳田,2003;水野,2009)とともに,ボトムアップの手立てとトップダウンの手立てを考慮して教育内容を意図的に計画する必要がある。
なお,ボトムアップの手立ては,障がい理解段階で示された順序と一致することから,教育実践に取り組みやすいが,トップダウンの手立ては,障がい理解段階で示された順序と一致しないことから,ボトムアップの手立てに比べ,実践しにくいおそれがある。
本研究の目的は,トップダウンの手立てにおける障害理解の深まりの様相を,障害理解段階(徳田, 2003)と比較しながら明らかにすることである。具体的には,交流活動・共同学習の振り返りとして位置付けた作文の内容をコーディングし,得られたカテゴリーと障害理解段階(徳田, 2003)とを比較し,その相違を明らかにする。
【 方 法 】
1 調査時期 平成25年9月中旬(1回目),10月中旬(2回目),10月下旬(3回目)の計3回,交流活動・協同学習後に実施した。
2 調査対象 附属竹早小学校5年生1学級に在籍する37名の児童を対象とした。この学級では,担任の教師が障がい理解教育に力を入れており,1学期から特別支援学校との交流活動・共同学習に取り組んでいた。
3 調査方法 作文分析:交流活動後において児童が書いた作文の内容をコーディングし,そこで得られたカテゴリーと障がい理解段階(徳田,2003)とを比較した結果,ならびに各カテゴリーに該当した記述の出現頻度を分析対象とした。
【結果と考察】
作文分析の結果得られたカテゴリーと障がい理解段階(徳田,2003)の内容を比較したところ,児童の作文にみる障がい理解段階として,「気づきの段階」「情緒的理解段階」「態度形成および受容的行動の段階」の3つが示唆された。
「気づきの段階」に該当する記述内容をみると,1回目の作文では,障がい児や障がい児との交流を肯定的な気持ちで受容したことに関わる記述がみられた。2,3回目の作文では,交流に取り組む自らの姿勢についての気づきや行動してはじめて気付いたこと,気づきを踏まえた新たな交流に対する態度や行動に関わる記述がみられた。
これらの結果より,時期による記述内容の違いがみられ,交流活動・共同学習の初期段階では,「気づきの段階」と「情緒的理解段階」の関係が強いのに対し,交流活動・共同学習の経験を重ねた段階では「気づきの段階」と「態度形成および受容的行動の段階」の関係が強くなることが示唆された。また,「気づきの段階」と「態度形成および受容的行動の段階」の間には,障がい理解段階(徳田,2003)の段階のような,一方向の順序性を伴うものではない,相互関係が示唆された。
さらに,「情緒的理解段階」に該当した記述に着目すると,活動前の不安な気持ちが,交流活動後に生じた正の気持ちによって軽減される様子,活動中に自分がとった行動をきっかけに正の気持ちが生じたことがわかる記述がみられた。
この結果から,「情緒的理解段階」と「態度形成および受容的行動の段階」の間においても,相互関係が示唆された。
現行の小中高等学校における学習指導要領(文部科学省,2008,2009)では,障がい理解教育の内容として,特別支援学校といった他機関との連携による交流活動が推奨されている。徳田・水野(2005)や真城(2003)の障がい理解教育の定義から,教育実践の手立てとして,次の2つを導くことができる。1つに,障がいに関する具体的で正確な知識を与え,その知識に基づき,科学的な認識を形成し,自らの態度や行動について考えさせるというボトムアップの手立て。もう1つは,障がい児・者に対する人間の尊重,それに基づく関わり方を体験的に学ぶことにより,科学的な認識を育むトップダウンの手立てである。
また,徳田(2003)は,障がい理解の5つの段階(第1段階:気づきの段階,第2段階:知識化の段階,第3段階:情緒的理解段階,第4段階:態度形成段階,第5段階:受容的行動の段階)を示し,この段階を考慮した指導および評価の必要性を示唆している。
これらのことから,障がい理解教育の実施においては,障がい理解の段階に応じた教育活動を行う(徳田,2003;水野,2009)とともに,ボトムアップの手立てとトップダウンの手立てを考慮して教育内容を意図的に計画する必要がある。
なお,ボトムアップの手立ては,障がい理解段階で示された順序と一致することから,教育実践に取り組みやすいが,トップダウンの手立ては,障がい理解段階で示された順序と一致しないことから,ボトムアップの手立てに比べ,実践しにくいおそれがある。
本研究の目的は,トップダウンの手立てにおける障害理解の深まりの様相を,障害理解段階(徳田, 2003)と比較しながら明らかにすることである。具体的には,交流活動・共同学習の振り返りとして位置付けた作文の内容をコーディングし,得られたカテゴリーと障害理解段階(徳田, 2003)とを比較し,その相違を明らかにする。
【 方 法 】
1 調査時期 平成25年9月中旬(1回目),10月中旬(2回目),10月下旬(3回目)の計3回,交流活動・協同学習後に実施した。
2 調査対象 附属竹早小学校5年生1学級に在籍する37名の児童を対象とした。この学級では,担任の教師が障がい理解教育に力を入れており,1学期から特別支援学校との交流活動・共同学習に取り組んでいた。
3 調査方法 作文分析:交流活動後において児童が書いた作文の内容をコーディングし,そこで得られたカテゴリーと障がい理解段階(徳田,2003)とを比較した結果,ならびに各カテゴリーに該当した記述の出現頻度を分析対象とした。
【結果と考察】
作文分析の結果得られたカテゴリーと障がい理解段階(徳田,2003)の内容を比較したところ,児童の作文にみる障がい理解段階として,「気づきの段階」「情緒的理解段階」「態度形成および受容的行動の段階」の3つが示唆された。
「気づきの段階」に該当する記述内容をみると,1回目の作文では,障がい児や障がい児との交流を肯定的な気持ちで受容したことに関わる記述がみられた。2,3回目の作文では,交流に取り組む自らの姿勢についての気づきや行動してはじめて気付いたこと,気づきを踏まえた新たな交流に対する態度や行動に関わる記述がみられた。
これらの結果より,時期による記述内容の違いがみられ,交流活動・共同学習の初期段階では,「気づきの段階」と「情緒的理解段階」の関係が強いのに対し,交流活動・共同学習の経験を重ねた段階では「気づきの段階」と「態度形成および受容的行動の段階」の関係が強くなることが示唆された。また,「気づきの段階」と「態度形成および受容的行動の段階」の間には,障がい理解段階(徳田,2003)の段階のような,一方向の順序性を伴うものではない,相互関係が示唆された。
さらに,「情緒的理解段階」に該当した記述に着目すると,活動前の不安な気持ちが,交流活動後に生じた正の気持ちによって軽減される様子,活動中に自分がとった行動をきっかけに正の気持ちが生じたことがわかる記述がみられた。
この結果から,「情緒的理解段階」と「態度形成および受容的行動の段階」の間においても,相互関係が示唆された。