[PE040] 算数問題解決におけるメタ認知方略の評価(2)
キーワード:メタ認知方略, 算数文章題, 評価
【問題と目的】
Tajika et al.(2012)は、小学5年生が自己説明を使うことによって、文章題の解決を促進した結果を報告した。本研究は、算数問題解決において使用されるメタ認知方略としての自己説明が効果的な方略であるかを、2年にわたる縦断的研究によって吟味した。
【方法】
(1)小学4年生 20 名が研究に参加した。
(2)研究で使用した算数問題解決のテストは予備テスト(4年生時のみ)、本テスト(各学期)、及び転移テスト(6年生2学期時のみ)であった。予備テスト(4題)と本テスト(8題)は同一の算数問題タイプで構成され、主に消去算、小数の除法の力を見る問題、2次元表の作成と読解に関する問題、割合文章題であった。各算数問題タイプの4題(8題)は、2題(4題)の易問題と2題(4題)の難問題からなった。転移テストは Mayer et al.(1991)を使用した。メタ認知方略の評価は、①コンピュータ利用による解決履歴、②コンピュータ学習後の児童のノート、及び③筆記用の自己説明テスト用紙への説明内容であった。
(3)最初に4年生の3学期に、予備テストを実施した。時間は 20 分であった。次いで、コンピュータ利用による算数文章題の解決を週1回、2週にわたって実施した。コンピュータ利用による算数文章題の解決課題は、基本的に Tajika et al.(2012)と同一であった。提示される問題のみが各学年に対応する異なった問題で構成された。コンピュータから文章題の解決ステップの1つずつが提示され、児童は解決ステップの質問に正しく対応する選択肢をマウスで選択した。間違った選択肢を選択した場合には、エラーのフィードバックを与えた。児童の正しい選択結果は、コンピュータのディスプレーに表示した。正解に達したのち、児童にはどのようにして解いたのかを、手元のノートに説明させた。2週目には、ノートへの自己説明後、児童は新たに自己説明テスト用紙を受け取り、自己説明することで問題を解いた。そこでは、1つの文章題と当該の問題を細かく区分された解決過程が示され、児童は1つ1つの内容が分かる場合にはどのようなことが記述されているかを、分からない場合はどこが分からないかを説明した。説明の記述時間は 10 分であった。その1週間後に、本テストを 40 分で実施した。転移テストは6年生2学期の最後に実施した。
【結果と考察】
予備テスト(満点は 8 点)の結果は、平均得点が 6.57(SD=2.09)であった。表1には、6期にわたる児童の本テストの得点結果(各 16 点満点)と転移テスト結果(18 点満点)を示した。
また、予備テストの成績に準じて児童を3群(上位群(7 名)、中位群(7 名)、下位群( 6 名))に分けた。その結果、5年生の1学期を除き、3群の間に成績の差異が認められた。
メタ認知方略の評価に関して、3点から本テスト結果の得点との関連を分析したところ、①コンピュータ利用による解決履歴で、解決数が多く最後まで問題に回答して正解に達している児童は、途中で解決を中止した児童に比べて本テストでよい成績であった。
また、①の正解の解決数が多い児童は、③の自己説明テスト用紙への説明の内容に関しても、適切な説明を行う傾向があった。一方で、4年生から6年生にかけて、②のノートに解決に至る説明を適切にまとめた児童はほとんどいなかった。
【引用文献】
Mayer, R.E. et al. (1991). J. Ed. Psychol., Vol.83, No.1, 69-72.
Tajika, H. et al. (2012). Educ. Tech. Res., Vol. 35, Nos 1 & 2, 11-19.
本研究は、2013年度科研費補助金(基盤研究(C)、課題番号:23530881)による。
Tajika et al.(2012)は、小学5年生が自己説明を使うことによって、文章題の解決を促進した結果を報告した。本研究は、算数問題解決において使用されるメタ認知方略としての自己説明が効果的な方略であるかを、2年にわたる縦断的研究によって吟味した。
【方法】
(1)小学4年生 20 名が研究に参加した。
(2)研究で使用した算数問題解決のテストは予備テスト(4年生時のみ)、本テスト(各学期)、及び転移テスト(6年生2学期時のみ)であった。予備テスト(4題)と本テスト(8題)は同一の算数問題タイプで構成され、主に消去算、小数の除法の力を見る問題、2次元表の作成と読解に関する問題、割合文章題であった。各算数問題タイプの4題(8題)は、2題(4題)の易問題と2題(4題)の難問題からなった。転移テストは Mayer et al.(1991)を使用した。メタ認知方略の評価は、①コンピュータ利用による解決履歴、②コンピュータ学習後の児童のノート、及び③筆記用の自己説明テスト用紙への説明内容であった。
(3)最初に4年生の3学期に、予備テストを実施した。時間は 20 分であった。次いで、コンピュータ利用による算数文章題の解決を週1回、2週にわたって実施した。コンピュータ利用による算数文章題の解決課題は、基本的に Tajika et al.(2012)と同一であった。提示される問題のみが各学年に対応する異なった問題で構成された。コンピュータから文章題の解決ステップの1つずつが提示され、児童は解決ステップの質問に正しく対応する選択肢をマウスで選択した。間違った選択肢を選択した場合には、エラーのフィードバックを与えた。児童の正しい選択結果は、コンピュータのディスプレーに表示した。正解に達したのち、児童にはどのようにして解いたのかを、手元のノートに説明させた。2週目には、ノートへの自己説明後、児童は新たに自己説明テスト用紙を受け取り、自己説明することで問題を解いた。そこでは、1つの文章題と当該の問題を細かく区分された解決過程が示され、児童は1つ1つの内容が分かる場合にはどのようなことが記述されているかを、分からない場合はどこが分からないかを説明した。説明の記述時間は 10 分であった。その1週間後に、本テストを 40 分で実施した。転移テストは6年生2学期の最後に実施した。
【結果と考察】
予備テスト(満点は 8 点)の結果は、平均得点が 6.57(SD=2.09)であった。表1には、6期にわたる児童の本テストの得点結果(各 16 点満点)と転移テスト結果(18 点満点)を示した。
また、予備テストの成績に準じて児童を3群(上位群(7 名)、中位群(7 名)、下位群( 6 名))に分けた。その結果、5年生の1学期を除き、3群の間に成績の差異が認められた。
メタ認知方略の評価に関して、3点から本テスト結果の得点との関連を分析したところ、①コンピュータ利用による解決履歴で、解決数が多く最後まで問題に回答して正解に達している児童は、途中で解決を中止した児童に比べて本テストでよい成績であった。
また、①の正解の解決数が多い児童は、③の自己説明テスト用紙への説明の内容に関しても、適切な説明を行う傾向があった。一方で、4年生から6年生にかけて、②のノートに解決に至る説明を適切にまとめた児童はほとんどいなかった。
【引用文献】
Mayer, R.E. et al. (1991). J. Ed. Psychol., Vol.83, No.1, 69-72.
Tajika, H. et al. (2012). Educ. Tech. Res., Vol. 35, Nos 1 & 2, 11-19.
本研究は、2013年度科研費補助金(基盤研究(C)、課題番号:23530881)による。