[PE066] 入学当初の大学生活への期待感
面接法による大学新入生の4年間の調査研究
Keywords:新入生, 大学生活, キャリア発達
問題と目的
近年における大学への進学志向は広く若者たち全般に見られる傾向であり,2012年文部科学省発表の「学校基本調査」によると,2012年度の大学進学率(現役)は47.7%となっており,多くの高校生が社会に出る前にさらに何かを学ぼうと大学に進学している。しかし,このように大学への進学率は上昇する一方1990年代以降の傾向として就職率の低下・無業者率の上昇が同時に指摘されており(日本労働研修機構,2000)。また,厚生労働省(2003)によれば,1999年度大卒者の離職率は3割以上占めている。このような正規就業の困難化と非正規就業の増加の問題は注目されている。高校から大学への移行は,学校段階の移行という変化だけでなく,心理社会的な発達の過程として青年期の様々な課題に直面する時期でもある。スーパー(Super,1957)のキャリア発達段階のうちの探索段階は青年期に該当し,さまざまな社会的役割を実践しながら,進路選択や職業決定を行う大切な時期となる。「学校から職業への移行」が困難化している現在,高校の時点では進学という選択をし,進学動機や大学生活,その後の職業生活の展望がどのよう状況にあるのかについて検討することは,大学のキャリア教育において重要な意味を持つものであると考えられる。
本研究では,A大学で2010年度~2013年度の実施されている入学者面接調査の過去4年間にわたるデータから,入学に際し大学生活にどのような期待感を持ち,どのことに力を入れようとしているのかを明らかにすることを目的とする。
方 法
調査協力者:A大学文系学生入学して直後1年生に4年間渡って167名(うち男性129名,女性38名)。2010年度入学者40名(うち男性33名,女性7名),2011年度入学者41名(うち男性29名,女性12名),2012年度入学者42名(うち男性34名,女性8名),2013年度入学者44名(うち男性33名,女性11名)。
調査時期:2010年~2013年の毎年の4月初旬。
調査手続き:半構造化面接によって,調査協力者に「なぜ大学に進学したか?」「大学生活で何がしたいか?」「卒業後何をしたいか?」について質問し,自由記述を行った上,インタビューを実施した。本研究では「大学で何がしたいか」についての報告は分析対象にする。
結 果
「大学生活への期待感」は,KJ法によって,表1のように8つのカテゴリー(「専門勉強」「資格取得」「部活やサークル活動」「アルバイト」「友達作り」「自由の満喫」「学士力」「自己成長」)が生成された。図1と図2に示すように,「資格取得」「専門勉強」「部活やサークル活動」「友達作り」に期待を持っている新入生の人数が多かった。特に,すべての年度で,大学入学当時,大学生活に「資格取得」に力を入れようとしている学生が最も多く,一方「アルバイト」は男女とも割合が最も低かった。8つのカテゴリーごとに,年度と性別による違いを検討するため,χ2検定を行った。2010年度のみにおいて,「自己成長」は,男女差が認められた(χ2(3)=9.93,P<.01)。
考 察
本研究では,入学当初の新入生が大学生活への期待感について,面接法による4年間の調査からの結果,大学新入生が専門的な知識や技術の学び,資格や免許取得など大学の本来的機能を求め,力を入れようとしていることが明らかになった。男女とも「資格取得」の割合が4年間変わらず最も高いことから,大学入学時点では将来就職のために,とりあえず資格や免許を取得しておくと考えられる。このことから,大学生活を積極的にとらえている学生が多いことが分かった。個々の学生にとって,大学は就職準備場所でもあり,有効な「学校から職業への移行」のあり方を支援するために,個人が何を基準として職業選択に主体的に関わっていくのかについても検討していく必要があるだろう。
近年における大学への進学志向は広く若者たち全般に見られる傾向であり,2012年文部科学省発表の「学校基本調査」によると,2012年度の大学進学率(現役)は47.7%となっており,多くの高校生が社会に出る前にさらに何かを学ぼうと大学に進学している。しかし,このように大学への進学率は上昇する一方1990年代以降の傾向として就職率の低下・無業者率の上昇が同時に指摘されており(日本労働研修機構,2000)。また,厚生労働省(2003)によれば,1999年度大卒者の離職率は3割以上占めている。このような正規就業の困難化と非正規就業の増加の問題は注目されている。高校から大学への移行は,学校段階の移行という変化だけでなく,心理社会的な発達の過程として青年期の様々な課題に直面する時期でもある。スーパー(Super,1957)のキャリア発達段階のうちの探索段階は青年期に該当し,さまざまな社会的役割を実践しながら,進路選択や職業決定を行う大切な時期となる。「学校から職業への移行」が困難化している現在,高校の時点では進学という選択をし,進学動機や大学生活,その後の職業生活の展望がどのよう状況にあるのかについて検討することは,大学のキャリア教育において重要な意味を持つものであると考えられる。
本研究では,A大学で2010年度~2013年度の実施されている入学者面接調査の過去4年間にわたるデータから,入学に際し大学生活にどのような期待感を持ち,どのことに力を入れようとしているのかを明らかにすることを目的とする。
方 法
調査協力者:A大学文系学生入学して直後1年生に4年間渡って167名(うち男性129名,女性38名)。2010年度入学者40名(うち男性33名,女性7名),2011年度入学者41名(うち男性29名,女性12名),2012年度入学者42名(うち男性34名,女性8名),2013年度入学者44名(うち男性33名,女性11名)。
調査時期:2010年~2013年の毎年の4月初旬。
調査手続き:半構造化面接によって,調査協力者に「なぜ大学に進学したか?」「大学生活で何がしたいか?」「卒業後何をしたいか?」について質問し,自由記述を行った上,インタビューを実施した。本研究では「大学で何がしたいか」についての報告は分析対象にする。
結 果
「大学生活への期待感」は,KJ法によって,表1のように8つのカテゴリー(「専門勉強」「資格取得」「部活やサークル活動」「アルバイト」「友達作り」「自由の満喫」「学士力」「自己成長」)が生成された。図1と図2に示すように,「資格取得」「専門勉強」「部活やサークル活動」「友達作り」に期待を持っている新入生の人数が多かった。特に,すべての年度で,大学入学当時,大学生活に「資格取得」に力を入れようとしている学生が最も多く,一方「アルバイト」は男女とも割合が最も低かった。8つのカテゴリーごとに,年度と性別による違いを検討するため,χ2検定を行った。2010年度のみにおいて,「自己成長」は,男女差が認められた(χ2(3)=9.93,P<.01)。
考 察
本研究では,入学当初の新入生が大学生活への期待感について,面接法による4年間の調査からの結果,大学新入生が専門的な知識や技術の学び,資格や免許取得など大学の本来的機能を求め,力を入れようとしていることが明らかになった。男女とも「資格取得」の割合が4年間変わらず最も高いことから,大学入学時点では将来就職のために,とりあえず資格や免許を取得しておくと考えられる。このことから,大学生活を積極的にとらえている学生が多いことが分かった。個々の学生にとって,大学は就職準備場所でもあり,有効な「学校から職業への移行」のあり方を支援するために,個人が何を基準として職業選択に主体的に関わっていくのかについても検討していく必要があるだろう。