The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PE

(5階ラウンジ)

Sat. Nov 8, 2014 1:30 PM - 3:30 PM 5階ラウンジ (5階)

[PE065] 動物との暮らしがヒトに与える教育的効果[1]

保育者の視点から捉える園内飼育動物とのかかわりを通した幼児の発達

西村信子1, 栗田薫平2 (1.ヤマザキ学園大学, 2.(株)ブライトケア)

Keywords:保育者, 幼児, 教育的効果

問題と目的
幼稚園教育要領(文部科学省,2008)では,幼児期の子どもが動植物とのかかわりを通して生命の尊さやいたわり等豊かな心情や科学的素地にもつながる思考力を育む,と明記されている。園内飼育動物と幼児との関連性についての先行研究では,園生活への適応に関する社会面(野田・竹内,2000;柿沼・桜井・井戸・高橋,2001),思いやりや責任感,共感性等の心理面(柿沼・桜井・井戸・高橋,2001;谷田・木場,2004;濱野,2007),生や死に関する教育面(野田・竹内,2000;谷田・木場,2004)への効果があることが確認されている。本研究では,日ごろ幼児を見守る保育者の視点から,園内飼育動物とのかかわりが幼児の発達に与える影響について明らかにすることを目的とした。
方法
【調査対象者】東京都内の私立幼稚園(9園)・公立幼稚園(2園)で働く保育者130名(男性9名・女性118名)。
【調査期間・手続き】2013年9月~11月に,幼稚園11園に対し質問紙168部を配布し,130部を回収した(回収率77.3%)。



【調査内容】(1)幼児と動物とのかかわりについての質問項目(図1):2013年に保育者28名を対象に行なった予備調査から得られた家庭内・園内動物飼育に関する自由記述の結果をもとに15項目を抽出した。項目は,「全くそう思わない」~「とてもそう思う」の5件法で評定。(2)フェイス項目:保育者の性別,年齢,家族構成,家庭内及び園内動物飼育経験,園内動物飼育への賛否,園内飼育動物とのかかわり効果,について回答を求めた。
結果と考察
その結果,保育者は性別,家族構成,家庭内及び園内動物飼育経験の有無,園内動物飼育への賛否には因らず,動物とのかかわりは幼児にとって肯定的な効果があると捉えていることが明らかとなった。また,園内動物飼育に関する保育者への自由記述からは,飼育動物とのかかわりは幼児にとって生命概念を築くきっかけとなりえ,豊かな心を育み,園適応が促されると捉えていることが確認された(表2)。一方,飼育動物が幼児のアレルギーや怪我の原因として危惧する保育者や飼育環境や方法に不安を抱える保育者もみられた。今後,園内飼育動物とのかかわりを通した幼児の発達面へのより良い効果を期待する場合,保育者は獣医師や動物看護師など動物の専門家との連携をとりながら,幼児の発達に見合った適切な動物種の選択,アレルギーや感染症,飼育方法,生態など動物に関する正しい知識を習得し,豊かな教育環境としての園内動物飼育を実践していくことが望まれる。
引用文献
濱野佐代子.(2007).コンパニオンアニマルが人に与える影響:愛着と喪失を中心に.白百合女子大学大学院博士論文 (未公刊).
柿沼美紀・桜井富士朗・井戸ゆかり・高橋桃子.(2001).保育現場における動物飼育:江戸川区獣医師会「動物飼育実態調査」から.日本保育学会大会論文研究文集(54),714-715
文部科学省.(2008).幼稚園教育要領.
野田敦敬・竹内典子.(2002).幼稚園における飼育活動と生活料への接続.自然観察実習報告,22,1-8.
ピアジェ, J.(2007).ピアジェに学ぶ認知発達の科学 (中垣 啓 訳).北大路書房.
谷田 創・木場有紀.(2004).幼稚園における動物飼育の現状と動物介在教育の可能性.日本獣医師会雑誌, 57(9),543-548.