The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PE

(5階ラウンジ)

Sat. Nov 8, 2014 1:30 PM - 3:30 PM 5階ラウンジ (5階)

[PE064] 仲間志向性尺度の開発および因子構造の検討

仲間助言希求・過剰仲間志向の観点を取り入れた尺度の開発

鈴木公基1, 鈴木みゆき1 (関東学院大学)

Keywords:仲間志向性, 因子構造, 大学生

問題と目的
青年期においては問題行動をはじめとする様々な適応問題が現れる。この適応問題について,近年,仲間との質的な関係に着目した研究が行われるようになってきた。なかでも仲間志向性(peer orientation;Bogenschneider et al., 1988)という概念は,仲間への相対的な関与度をとりあげているという点で評価することができる。本研究ではFuligni et al.(2001)によって開発された尺度をもとに我が国における仲間志向性尺度を開発し,その因子構造について検討することが目的である。
方 法
被調査者 大学生540名(男310名,女199名)。
質問紙 Fuligni et al.(2001)をもとに鈴木・植村・桜井(2004)が作成した尺度に項目を追加したものを実施した。本尺度は仲間助言希求と過剰仲間志向性のふたつの下位尺度からなる。仲間助言希求尺度では,得点が高いほど親より仲間への相談が多いことを示す。過剰仲間志向性尺度では,得点が高いほど仲間に関与するために好ましくない行動を行う頻度が高いことを示す。
調査手続き 上記の尺度を含む質問紙が,授業時間の一部を使用した集団形式で実施された。
結 果
仲間助言希求尺度および過剰仲間志向性尺度の因子構造については,固有値の推移および各因子の解釈可能性を考慮して決定した。なお,因子抽出においては主因子法・プロマックス回転を用いた。
仲間助言希求尺度の因子構造の検討
仲間助言希求尺度の固有値の変化は,第1固有値から順に6.233,1.368,1.084,.879,.720であり,固有値1.000以上の因子は3因子ということが明らかとなった。また,1因子から4因子を抽出し,因子の解釈可能性について検討した結果,3因子がもっとも妥当であると判断した。その結果がTable 1である。なお,因子分析の過程においては,当該因子に.390以上の因子負荷があり,かつ他の因子には.390以上の因子負荷がない,という基準により項目の選択を行った。
第1因子は,人間関係に関する項目に因子負荷が高いことから「人間関係に関する助言希求」因子と命名した。第2因子は自己に関する内容を示す項目に対して因子負荷が高いことから「自己に関する助言希求」因子と命名した。第3因子は学業に関する内容を示す項目に因子負荷が高いことから「学業に関する助言希求」因子と命名した。
過剰仲間志向性尺度の因子構造の検討
過剰仲間志向性尺度の固有値の変化は,第1固有値から順に4.682,1.475,1.235,.777,.722であり,固有値1.000以上の因子は3因子であること,また固有値の減衰が第4因子以降で緩やかになることが明らかとなった。一方,因子の解釈可能性について検討した結果,2因子がもっとも妥当であると判断した。固有値の推移からは3因子が適当であると考えられるが,複数因子に高い負荷を示す項目が増えること,また,因子の解釈可能性は2因子がもっとも妥当であることを考慮し,本研究では2因子を採用することとした。その結果がTable 2である。なお,因子分析の過程においては,当該因子に.470以上の因子負荷があり,かつ他の因子には当該因子に.470以上の因子負荷がない,という基準により項目の選択を行った。
第1因子は,自分の意思や考えなどに嘘をつくことによって仲間に取り入ろうとすることを示す項目に対して高い因子負荷を示しており,「自己欺瞞的取り入り」因子と命名した。第2因子は,他者あるいは社会から示される規範を破ることによって仲間との関係を形成・維持しようとすることを示す項目に対して因子負荷が高いことから「仲間志向的規範逸脱」因子と命名した。
考 察
本研究の目的はFuligni et al.(2001)により作成された仲間志向性尺度をもとに我が国における仲間志向性尺度を作成し,その因子構造について検討することであった。検討の結果,仲間助言希求尺度は「人間関係に関する助言希求」「自己に関する助言希求」「学業に関する助言希求」の3因子構造,過剰仲間志向性尺度は「自己欺瞞的取り入り」「仲間志向的規範逸脱」の2因子構造であることが明らかとなった。
これらの結果は,仲間助言希求あるいは過剰仲間志向性と言えど,そこにはいくつかの異なる側面が存在することを示唆するものである。青年期の不適応行動について仲間関係の観点から検討するにあたり,仲間との質的な関係性の観点から,それに影響を及ぼす要因について明らかにしていくことが重要である。本研究で開発された仲間志向性尺度はこの課題を検討する上で有効な手段となるだろう。
今後は,本研究で見出された仲間志向性の各側面と,青年の適応・不適応行動の指標との関連について明らかにしていくことが必要である。