日本教育心理学会第56回総会

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ポスター発表 PG

(5階ラウンジ)

2014年11月9日(日) 10:00 〜 12:00 5階ラウンジ (5階)

[PG014] 中学校入学後の定期テストの結果評価が学業動機づけに及ぼす影響

目標点との比較と平均点との比較

石田靖彦1, 神谷紗由美1 (愛知教育大学)

キーワード:定期テスト, 結果評価, 学業動機づけ

問題と目的
小学校と中学校では学習環境が大きく異なる。中学校の学習環境にうまく適応できずに学業不振に陥る生徒がいる。
本研究では中学校入学後に初めて経験する「定期テスト」に着目し,テストの結果評価が学業コンピテンスや学習意欲,学習行動に及ぼす影響について検討する。テストの結果評価は,「目標点との比較」と「平均点との比較」という2つの基準を用い,どちらの結果評価がより大きな影響を及ぼしているのかを明らかにする。
方 法
調査対象:公立中学校1年生計916名(男=480,女=436)。
調査手続:初めての定期テストを受ける前(6月中旬)と受けた後(7月中旬)の2回にわたって質問紙を実施した。
調査内容:
1.定期テスト前の調査内容(6月中旬)
(1)学業コンピテンス:桜井(1992)の学業コンピテンス尺度に若干変更を加えて使用した。5項目4件法。
2.定期テスト後の調査内容(7月中旬)
(1)学業コンピテンス:同上。
(2)定期テストの結果評価:テストの結果を「目標点」と「平均点」という2つの基準を用いて自己評価させた。項目は「目標点にくらべてテストの結果はどうでしたか」,「平均点に比べてテストの結果はどうでしたか」で,回答は「わるかった」「少しわるかった」「同じくらい」「少しよかった」「よかった」の5件法。
(3)定期テスト後の学習意欲の変化:「定期テストの結果を受けて勉強に対するやる気はどのように変化しましたか」など3項目。「とても弱くなった」~「とても強くなった」の5件法。
(4)今後の学習行動:「学校の勉強だけでなく家でも自ら進んで勉強をする」などの「積極的学習行動(6項目)」,「先生や親に言われるまで勉強しない」などの「消極的学習行動(3項目)」。「全く思わない」~「とても思う」の4件法。
結果と考察
1.目標点を基準にした結果評価と平均点を基準にした結果評価
「目標点との比較」と「平均点との比較」の結果評価に基づいて生徒を各々3群(上位群:よかった・少しよかった,中位群:同じくらい,下位群:わるかった・少しわるかった)に分類した。目標点を基準にした結果評価と平均点を基準にした結果評価は関連しているが分布は異なっていた。平均上位群(40.7%)と下位群(44.5%)はほぼ同数であったが,目標下位群(61.1%)は目標上位群(22.8%)よりも相対的に多かった。
2.目標点・平均点を基準にした結果評価が,学業コンピテンス,学習意欲,学習行動に及ぼす影響
テストの結果評価が学業コンピテンスに及ぼす影響は,目標点を基準にした結果評価よりも平均点を基準にした結果評価のほうが顕著であった(図1)。平均上位群の学業コンピテンスは有意に上昇し(p<.001),平均下位群の学業コンピテンスは有意に低下していた(p<.001)。目標点に基づく結果評価では,目標下位群のみ学業コンピテンスが有意に低下していた(p<.01)。

定期テスト後の学習意欲については,平均点を基準にした結果評価のみで有意な効果が認められ,平均上位群は下位群に比べて学習意欲の上昇が有意に高かった。学習行動でも平均点を基準にした結果評価で有意な効果が認められ,平均上位群は平均中位群・下位群にくらべて積極的な学習行動が有意に多く,平均下位群は中・上位群にくらべて消極的学習行動が有意に多いことが示された。目標点よりも平均点との比較がその後の学業動機づけに強く影響するといえよう。