[PG023] 高校生におけるインターネット利用と仮想的有能感の関連
ネットいじめとネット依存の視点から
キーワード:ネットいじめ, ネット依存, インターネット利用
問題と目的
近年,スマートフォンの急速な普及に伴い過度な使用が問題となっている。総務省(2013)の報告によると,スマートフォンの所持者の半数以上にネット依存的傾向が見られるという。また,ネットいじめという問題も出現してきた。従来のいじめ問題では,自尊感情が低いと攻撃を誘発しやすい等,自尊感情の高低が被害?加害経験に関連があるとされてきた(Hawker & Boulton,2000)。しかし,従来の自尊感情の高低だけでなく,仮想的有能感の視点が有効であると松本ら(2009)は指摘する。仮想的有能感とは,「自己の直接的なポジティブ経験の有無に関わらず,他者の能力を批判的に評価・軽視する傾向に付随して得られる習慣的に生じる有能さの感情」のことである(速水,2011,p177)。仮想的有能感の高い「全能型」と「仮想型」は,仮想的有能感の低い「自尊型」と「萎縮型」に比べ,いじめ被害?加害経験が多いという結果が報告されている(松本ら, 2009)。
しかし,ネットいじめでも,従来の対面式いじめと同様に仮想的有能感と関連があるか。本研究では,高校生を対象にネット依存とネットいじめの問題と仮想的有能感の関連について明らかにする。
方法
調査対象者と測定項目
高校生263名(男性157名,M =16.0才,SD =0.65)を対象に,質問紙調査を実施した(質問項目は,仮想的有能感尺度,自尊感情尺度,インターネット行動尺度のうち,自己開示,所属感獲得,攻撃的言動,没入的関与,依存的関与の5つの下位尺度,ネットいじめ被害・加害経験)。
分析方法
先行研究の分類に従って自尊感情と仮想的有能感の得点の高低で4群(自尊型,全能型,仮想型,萎縮型)に分類した。そして,ネット依存傾向とネット上での攻撃的言動, ネットいじめにおいて群間差を検討するため分散分析を行った。
結果と考察
ネット依存傾向に関して有能感タイプにおける有意な群間差がみられた:F(3,262)=7.56,p<.001。LSD法による多重比較の結果,「自尊型」が「全能型」,「仮想型」,「萎縮型」に比べ得点が有意に低かった。自尊型が他群に比べ,ネット上での没入的・依存的関与が低かったのは,他のタイプに比べ日常生活における不満等が少ないことと関係していることが考えられる。一方,萎縮型は他者に不満を感じていないが,自分に自信がなく劣等感を強く持つタイプであるという特徴がある(速水,2006)。そのため,集団行動に馴染めず孤立しやすい(山本, 2007)。日常生活での孤立は現実生活での居場所のなさと繋がり,没入的・依存的関与を強める。よって,萎縮型もネットでの没入的・依存的関与が自尊型と比べ高くなったのだろうと考えられる。
また,ネット上での攻撃的言動でも有意な群間差が見られたF(3,261)=4.90,p<.01。「全能型」,「仮想型」は「自尊型」,「萎縮型」に比べ得点が有意に高かった。他者を見下している傾向がある全能型や仮想型はネット上でも他者を見下し,攻撃的な発言をしていると考えられる。ネットいじめ経験においても,有意な群間差が見られた(被害:F(3,260)=3.80,p<.05,加害:F(3,261)=2.96,p<.05)。被害経験に関しては,「自尊型」が「全能型」,「仮想型」,「萎縮型」に比べ少なく,加害経験に関しては,「全能型」,「仮想型」が「自尊型」,「萎縮型」に比べ多く,従来いじめの先行研究とネットいじめにおける経験で仮想的有能感タイプと同様の結果を示した。
近年,スマートフォンの急速な普及に伴い過度な使用が問題となっている。総務省(2013)の報告によると,スマートフォンの所持者の半数以上にネット依存的傾向が見られるという。また,ネットいじめという問題も出現してきた。従来のいじめ問題では,自尊感情が低いと攻撃を誘発しやすい等,自尊感情の高低が被害?加害経験に関連があるとされてきた(Hawker & Boulton,2000)。しかし,従来の自尊感情の高低だけでなく,仮想的有能感の視点が有効であると松本ら(2009)は指摘する。仮想的有能感とは,「自己の直接的なポジティブ経験の有無に関わらず,他者の能力を批判的に評価・軽視する傾向に付随して得られる習慣的に生じる有能さの感情」のことである(速水,2011,p177)。仮想的有能感の高い「全能型」と「仮想型」は,仮想的有能感の低い「自尊型」と「萎縮型」に比べ,いじめ被害?加害経験が多いという結果が報告されている(松本ら, 2009)。
しかし,ネットいじめでも,従来の対面式いじめと同様に仮想的有能感と関連があるか。本研究では,高校生を対象にネット依存とネットいじめの問題と仮想的有能感の関連について明らかにする。
方法
調査対象者と測定項目
高校生263名(男性157名,M =16.0才,SD =0.65)を対象に,質問紙調査を実施した(質問項目は,仮想的有能感尺度,自尊感情尺度,インターネット行動尺度のうち,自己開示,所属感獲得,攻撃的言動,没入的関与,依存的関与の5つの下位尺度,ネットいじめ被害・加害経験)。
分析方法
先行研究の分類に従って自尊感情と仮想的有能感の得点の高低で4群(自尊型,全能型,仮想型,萎縮型)に分類した。そして,ネット依存傾向とネット上での攻撃的言動, ネットいじめにおいて群間差を検討するため分散分析を行った。
結果と考察
ネット依存傾向に関して有能感タイプにおける有意な群間差がみられた:F(3,262)=7.56,p<.001。LSD法による多重比較の結果,「自尊型」が「全能型」,「仮想型」,「萎縮型」に比べ得点が有意に低かった。自尊型が他群に比べ,ネット上での没入的・依存的関与が低かったのは,他のタイプに比べ日常生活における不満等が少ないことと関係していることが考えられる。一方,萎縮型は他者に不満を感じていないが,自分に自信がなく劣等感を強く持つタイプであるという特徴がある(速水,2006)。そのため,集団行動に馴染めず孤立しやすい(山本, 2007)。日常生活での孤立は現実生活での居場所のなさと繋がり,没入的・依存的関与を強める。よって,萎縮型もネットでの没入的・依存的関与が自尊型と比べ高くなったのだろうと考えられる。
また,ネット上での攻撃的言動でも有意な群間差が見られたF(3,261)=4.90,p<.01。「全能型」,「仮想型」は「自尊型」,「萎縮型」に比べ得点が有意に高かった。他者を見下している傾向がある全能型や仮想型はネット上でも他者を見下し,攻撃的な発言をしていると考えられる。ネットいじめ経験においても,有意な群間差が見られた(被害:F(3,260)=3.80,p<.05,加害:F(3,261)=2.96,p<.05)。被害経験に関しては,「自尊型」が「全能型」,「仮想型」,「萎縮型」に比べ少なく,加害経験に関しては,「全能型」,「仮想型」が「自尊型」,「萎縮型」に比べ多く,従来いじめの先行研究とネットいじめにおける経験で仮想的有能感タイプと同様の結果を示した。