[PG061] 中学校における「Can-Doリスト」作成のための実践的な調査及び研究
キーワード:教科書, 能力記述文, 「Can-Doリスト」
問題
文部科学省は,平成23年,「国際共通語としての英語力向上のための5つの提言」を公にした。その中で,「中・高等学校は,学習到達目標を『Can-Doリスト』の形で設定・公表するとともに,その達成状況を把握する」とある。「Can-Doリスト」とは,ある一定期間の教育指導の結果として,「英語」で何ができるのか,その成果を具体の活動場面で記述したものと考えられる。そこで,「Can-Doリスト」記載の各項目(能力記述文)を実際に記述及び活用可能なものとするための知見を明らかにすることが,教育現場の喫緊の課題であり,そのため実践的な調査と研究が必要であると考えた。
目的
「ヨーロッパ言語共通参照枠 Common European Framework of Reference for Languages, (CEFR)」の「Can-Doリスト」の例示を踏まえつつ,中学校の教科書教材を活用し,それらと連動,連結した「Can-Doリスト」を記述,活用するための知見を明らかにする。
計画・手順
(1)「Can-Doリスト」(能力記述文)の理論的研究
(2)検定教科書の分析
(3)能力記述文記述の実践的研究と考察
(4)「Can-Doリスト」作成の課題集約
研究結果
理論的な研究として,「ヨーロッパ言語共通参照枠」にある能力記述文は,参照する基準であるが,文部科学省が各学校に作成を促している能力記述文,そして,その集合体である「Can-Doリスト」は,学習到達目標を記述することを求めているものであり,その目的が微妙に異なることが分かる。中学校においては,従前から4つの観点による「観点別学習状況の評価」,すなわち目標に準拠した評価(絶対評価)が行われてきたところであるが,今回,「外国語表現の能力」と「外国語理解の能力」について日常の授業や単元ごとの目標設定ではなく少なくとも通年の学習目標設定が求められた。次に,実践的な調査と研究として,まず,主たる教材である検定教科書を分析するも,それらは,当然,学習指導要領の目標及びその内容に沿って編修されたものであること,教科書を活用して学習した結果が,必ずしも所謂「Can-Doリスト」に在る「(何かが)できる」という表現で学習者の学習成果を全て記述することができるとは限らないのではないかということ,などが分かった。例えば,教科書にある「初対面のあいさつ」や「今日の予定」の場面において,その場においては,「初対面の人とあいさつを交わすことができる」とか,「今日の予定について説明できる」とかの様な記述は可能であったものの,それら能力記述文が,学習した教科書の場面と少し離れた場面,状況においても可能であるか,となった場合,必ずしもその能力記述文が有効ではなかった。実際上,教科書に設定された,ある限定された場面のみについて記述可能であるのではないか,さらに,その能力記述文の内容が,「できる」か「できない」かの判断基準をどこに求めるのか,という際にも,量的,質的にどの様に処理すべきか,については見解や意見が分かれるところが多かった。
課題
研究結果から,課題は,学習到達目標として「言語の使用場面」ごとに能力記述文の記述を,整理,精緻化していくこと,能力記述文で「できる」と判断する判断基準の設定を,言語使用の特質を考慮しながらさらに検討することなどがあげられる。その解決のためには,教科書を能力記述文が適切に記述できるようその活用を工夫すること,適切な判断基準を設定するため実践データを蓄積しデータベースを構築することなどが考えられる。
最後に,本研究の内容は発表者個人の私見で有り,所属部局の見解ではないことをここに明記するものである。
参考文献
Keith Morrow (2003). Insights from Common European Framework OUP.
和田稔監訳 (2013). ヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR)から学ぶ英語教育 研究社
文部科学省は,平成23年,「国際共通語としての英語力向上のための5つの提言」を公にした。その中で,「中・高等学校は,学習到達目標を『Can-Doリスト』の形で設定・公表するとともに,その達成状況を把握する」とある。「Can-Doリスト」とは,ある一定期間の教育指導の結果として,「英語」で何ができるのか,その成果を具体の活動場面で記述したものと考えられる。そこで,「Can-Doリスト」記載の各項目(能力記述文)を実際に記述及び活用可能なものとするための知見を明らかにすることが,教育現場の喫緊の課題であり,そのため実践的な調査と研究が必要であると考えた。
目的
「ヨーロッパ言語共通参照枠 Common European Framework of Reference for Languages, (CEFR)」の「Can-Doリスト」の例示を踏まえつつ,中学校の教科書教材を活用し,それらと連動,連結した「Can-Doリスト」を記述,活用するための知見を明らかにする。
計画・手順
(1)「Can-Doリスト」(能力記述文)の理論的研究
(2)検定教科書の分析
(3)能力記述文記述の実践的研究と考察
(4)「Can-Doリスト」作成の課題集約
研究結果
理論的な研究として,「ヨーロッパ言語共通参照枠」にある能力記述文は,参照する基準であるが,文部科学省が各学校に作成を促している能力記述文,そして,その集合体である「Can-Doリスト」は,学習到達目標を記述することを求めているものであり,その目的が微妙に異なることが分かる。中学校においては,従前から4つの観点による「観点別学習状況の評価」,すなわち目標に準拠した評価(絶対評価)が行われてきたところであるが,今回,「外国語表現の能力」と「外国語理解の能力」について日常の授業や単元ごとの目標設定ではなく少なくとも通年の学習目標設定が求められた。次に,実践的な調査と研究として,まず,主たる教材である検定教科書を分析するも,それらは,当然,学習指導要領の目標及びその内容に沿って編修されたものであること,教科書を活用して学習した結果が,必ずしも所謂「Can-Doリスト」に在る「(何かが)できる」という表現で学習者の学習成果を全て記述することができるとは限らないのではないかということ,などが分かった。例えば,教科書にある「初対面のあいさつ」や「今日の予定」の場面において,その場においては,「初対面の人とあいさつを交わすことができる」とか,「今日の予定について説明できる」とかの様な記述は可能であったものの,それら能力記述文が,学習した教科書の場面と少し離れた場面,状況においても可能であるか,となった場合,必ずしもその能力記述文が有効ではなかった。実際上,教科書に設定された,ある限定された場面のみについて記述可能であるのではないか,さらに,その能力記述文の内容が,「できる」か「できない」かの判断基準をどこに求めるのか,という際にも,量的,質的にどの様に処理すべきか,については見解や意見が分かれるところが多かった。
課題
研究結果から,課題は,学習到達目標として「言語の使用場面」ごとに能力記述文の記述を,整理,精緻化していくこと,能力記述文で「できる」と判断する判断基準の設定を,言語使用の特質を考慮しながらさらに検討することなどがあげられる。その解決のためには,教科書を能力記述文が適切に記述できるようその活用を工夫すること,適切な判断基準を設定するため実践データを蓄積しデータベースを構築することなどが考えられる。
最後に,本研究の内容は発表者個人の私見で有り,所属部局の見解ではないことをここに明記するものである。
参考文献
Keith Morrow (2003). Insights from Common European Framework OUP.
和田稔監訳 (2013). ヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR)から学ぶ英語教育 研究社