[PH015] 大学の教員-学生関係のあり方についての検討
キーワード:大学生, 大学教育
目 的
近年,大学の教員と学生の関係性は大きく変化し,クラス担任制の導入,オフィスアワーの設定,さまざまな交流イベントの開催,SNS などを通じた学生とのコミュニケーションの推奨などを通じ,授業内のみならず授業外での学生へのきめ細かい対応の必要性が高まっていると考えられる。
このうち,授業内での教員と学生の関係性については,FD 活動等を通じた知見も多く存在している。しかし,授業外での教員と学生の関係性についての研究は乏しく,そのため教員は各自で模索をするだけに留まり,模索の中で得た知見を共有する活動や研究は乏しいと考えられる。このような状況において,「どのような関係性になることが多いのか?」「どのような関係性を目標としたら良いのか?」などについて探索的に検討するために,本研究ではまず大学の教員-学生関係の現状をとらえることを目的とする。
また,杉本(2014)では,教育・支援を手厚くしすぎることで,学生の受動的な態度形成につながる可能性もあることが指摘されている。そのため,本研究の第2 の目的として,大学の教員-学生関係の形態とアイデンティティ,キャリア成熟との関係性を検討することも挙げる。
方 法
○質問紙:1.大学の教員-学生関係尺度:大学の教員と学生の関係性について,学生が教員にどのようなことを希望するかという視点から作成された30 項目を使用した(5 件法)。2.アイデンティティ尺度:日本の大学生のアイデンティティの測定を目的として作成された下山(1992)の尺度20 項目を使用した(4 件法)。3.キャリア成熟尺度:坂柳(1999)の成人キャリア成熟尺度を,人生キャリアを測定出来るように教示文の語句を変更して使用した(5 件法)。○調査対象:大学生252名。男性177 名(1 年115 名,2 年37 名,3 年11名,4 年13 名,その他1 名),女性75 名(1 年60名,2 年7 名,3 年5 名,4 年2 名,その他1 名)。○調査時期:2014 年1 月
結果と考察
1.尺度構成
アイデンティティ尺度および成人キャリア成熟尺度について,原典にしたがってα係数を算出したところ,アイデンティティの基礎で.83,アイデンティティの確立で.82,キャリア(関心性)で.78,キャリア(自律性)で.69,キャリア(計画性)で.79となり,おおよその内的整合性が確認された。
2.大学の教員-学生関係尺度の因子分析
大学の教員-学生関係尺度30 項目をもちいて,主成分解を初期解とし,プロマックス回転による因子分析を行った。固有値1以上の基準より因子数を6 とし,再度因子分析を行った。
第1 因子には「なるべく教員と一緒に長い時間を過ごしたい。」,「教員とプライベートを含めた関係性を作っていきたい。」などの項目の負荷が高く,「個別認知志向」と命名された。第2 因子には,「講義の中で100%分かるような工夫を教員にはして欲しい。」,「教員には分かるまでしっかり説明してほしい。」などの項目の負荷が高く,「依存志向」と命名された。第3 因子には,「分からないことについては教員より友だちなどに相談したい。」,「講義より友人との交流などから学んでいきたい。」などの項目の負荷が高く,「交友重視志向」と命名された。
第4 因子には,「事情のある欠席や遅刻などへの対応を教員にはしっかりして欲しい。」,「欠席時の配付物やノート確保の対応が悪い教員に改善を望みたい。」などの項目の負荷が高く,「個別対応志向」と命名された。第5 因子には,「教員と仲の良い関係を維持したい。」,「講義以外で教員との交流をとるのが好きである。」などの項目の負荷が高く,「一般的交流志向」と命名された。第6 因子には,「分からないことは教員に頼らず自分で解決したい。」,「教員から学ぶよりかは自分で学ぶ姿勢を大切にしたい。」などの項目の負荷が高く,「独立志向」と命名された。
Table 大学の教員-学生関係の形態とアイデンティティ,キャリア成熟との関係
近年,大学の教員と学生の関係性は大きく変化し,クラス担任制の導入,オフィスアワーの設定,さまざまな交流イベントの開催,SNS などを通じた学生とのコミュニケーションの推奨などを通じ,授業内のみならず授業外での学生へのきめ細かい対応の必要性が高まっていると考えられる。
このうち,授業内での教員と学生の関係性については,FD 活動等を通じた知見も多く存在している。しかし,授業外での教員と学生の関係性についての研究は乏しく,そのため教員は各自で模索をするだけに留まり,模索の中で得た知見を共有する活動や研究は乏しいと考えられる。このような状況において,「どのような関係性になることが多いのか?」「どのような関係性を目標としたら良いのか?」などについて探索的に検討するために,本研究ではまず大学の教員-学生関係の現状をとらえることを目的とする。
また,杉本(2014)では,教育・支援を手厚くしすぎることで,学生の受動的な態度形成につながる可能性もあることが指摘されている。そのため,本研究の第2 の目的として,大学の教員-学生関係の形態とアイデンティティ,キャリア成熟との関係性を検討することも挙げる。
方 法
○質問紙:1.大学の教員-学生関係尺度:大学の教員と学生の関係性について,学生が教員にどのようなことを希望するかという視点から作成された30 項目を使用した(5 件法)。2.アイデンティティ尺度:日本の大学生のアイデンティティの測定を目的として作成された下山(1992)の尺度20 項目を使用した(4 件法)。3.キャリア成熟尺度:坂柳(1999)の成人キャリア成熟尺度を,人生キャリアを測定出来るように教示文の語句を変更して使用した(5 件法)。○調査対象:大学生252名。男性177 名(1 年115 名,2 年37 名,3 年11名,4 年13 名,その他1 名),女性75 名(1 年60名,2 年7 名,3 年5 名,4 年2 名,その他1 名)。○調査時期:2014 年1 月
結果と考察
1.尺度構成
アイデンティティ尺度および成人キャリア成熟尺度について,原典にしたがってα係数を算出したところ,アイデンティティの基礎で.83,アイデンティティの確立で.82,キャリア(関心性)で.78,キャリア(自律性)で.69,キャリア(計画性)で.79となり,おおよその内的整合性が確認された。
2.大学の教員-学生関係尺度の因子分析
大学の教員-学生関係尺度30 項目をもちいて,主成分解を初期解とし,プロマックス回転による因子分析を行った。固有値1以上の基準より因子数を6 とし,再度因子分析を行った。
第1 因子には「なるべく教員と一緒に長い時間を過ごしたい。」,「教員とプライベートを含めた関係性を作っていきたい。」などの項目の負荷が高く,「個別認知志向」と命名された。第2 因子には,「講義の中で100%分かるような工夫を教員にはして欲しい。」,「教員には分かるまでしっかり説明してほしい。」などの項目の負荷が高く,「依存志向」と命名された。第3 因子には,「分からないことについては教員より友だちなどに相談したい。」,「講義より友人との交流などから学んでいきたい。」などの項目の負荷が高く,「交友重視志向」と命名された。
第4 因子には,「事情のある欠席や遅刻などへの対応を教員にはしっかりして欲しい。」,「欠席時の配付物やノート確保の対応が悪い教員に改善を望みたい。」などの項目の負荷が高く,「個別対応志向」と命名された。第5 因子には,「教員と仲の良い関係を維持したい。」,「講義以外で教員との交流をとるのが好きである。」などの項目の負荷が高く,「一般的交流志向」と命名された。第6 因子には,「分からないことは教員に頼らず自分で解決したい。」,「教員から学ぶよりかは自分で学ぶ姿勢を大切にしたい。」などの項目の負荷が高く,「独立志向」と命名された。
Table 大学の教員-学生関係の形態とアイデンティティ,キャリア成熟との関係