日本教育心理学会第56回総会

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ポスター発表 PH

(5階ラウンジ)

2014年11月9日(日) 13:30 〜 15:30 5階ラウンジ (5階)

[PH023] 大学入試試験における受験生の緊張についての研究

進学校の現場より生徒アンケートからわかること

大石超 (長野県長野高等学校)

キーワード:大学入試試験, 緊張

1 目的
大学入試試験(大学入試センター試験や各大学の個別試験)は、受験生にとって人生を左右しかねない、非常に意味の大きな挑戦である。そこで自身の力を存分に発揮することは難しく、原因の1つには、「緊張」という心理的要因があると考えられる。本研究では、長野県長野高等学校におけるアンケートに基づき、受験生自身が「緊張」をどのように捉えているかを明らかにすることを目的とした。さらに、大学入試試験で実力を遺憾なく発揮するために重要なことについて、考察をおこなった。

2 方法
平成25年2月末、大学入試センター試験および私立大学の入学試験、さらには国公立大学の前期入試を終え、前期入試の合格発表を前に高校卒業を迎えた、長野県長野高等学校の3年生40名を対象にアンケートを実施した。
長野県長野高等学校は、110年以上の歴史がある県内有数の公立進学校である。3年生のほぼ全員が大学入試センター試験を受験し、平成25年度の現役大学進学率は56%であった。一方、クラブ活動への加入率は9割を越える。ほとんどの生徒は高校3年の5月から8月までは学業とクラブ活動の両立をおこない、その後は大学受験に向けて集中的に勉学に取り組む。地域柄、幼い頃から塾通いという生徒は少なく、小中学生の頃から生徒会活動やクラブ活動も積極的におこない、リーダーシップを発揮してきた生徒も多い。
アンケートの項目は、次の5項目で、全て記述式でおこなった。
A大学受験の試験直前(イスに座って開始を待っていたとき)の精神状態について
(1)言葉で表現してください
(2)今までの人生の中で、同じような状態になったのはどんなときですか
B試験中に難問にぶつかったときの精神状態について
(1)言葉で表現してください
(2)今までの人生の中で、同じような状態になったのはどんなときですか
C大学入試試験で自分の力を十分に発揮するために、大切なことは何だと思いますか

3 結果および考察
A(1)の記述より
試験直前は、緊張、不安、自信、楽しみ、これで最後、などの様々な気持ちが混ざった状態であることがわかった。また、緊張を身体の感覚として捉えて表現した(体が熱い、胃が締め付けられる、頭がクラクラ、胸騒ぎ、ムズムズする、視界が暗い、など)受験生もいた。
A(2)の記述より
試験直前の精神状態は、負けたら引退になるクラブ活動の試合や、コンクールの前と似ていると記述した受験生が非常に多かった。また、人前での発表や、失敗が許されないことをおこなう直前の気持ちにも似ているようである。

B(1)の記述より
試験中に難問にぶつかったとき、焦りによって、身体や気持ちが追いつめられた状態になることがわかった。身体の感覚として捉えて表現した(身体が熱くなる、心拍数が上昇する、手汗をかく、サーッと血の気が引く感じ、視野が狭くなる、など)受験生もいた。一方で、自信のある得意科目では、「ここで差がつくぞ」と、前向きな気持ちにもなれることがわかった。
B(2)の記述より
難問にぶつかったときの精神状態は、クラブ活動でミスをして想定外の展開になった時や、極度に追いつめられた時の状況に似ていると記述した受験生がほとんどであった。

本研究において明らかになった結果から、大学入試試験において実力を発揮するためのポイントを、以下の3点にまとめた。
①日々の努力の積み重ねにより、自身で自信を獲得するところまで学力を高めることが大切である。
②入試当日の緊張状態をあらかじめ想定し、試験後の将来の自分の姿をイメージすることで、困難を前向きに捉えていくことができると考えられる。
③一発勝負の大学入試試験における、精神的な緊張に対する準備は、クラブ活動や人前で発表する経験から培われる場合が多いと考えられる。