[PH024] 心理行動上の問題を予防する心理教育“サクセスフル・セルフ”の実践と保健室来室数の変化
キーワード:心理教育, 保健室来室数
はじめに
保健室に身体の不調を訴えて来室する児童生徒には,何らかの心理的背景要因があるものが少なくなく(平山,識名,仲田,1994),保健室利用の実態から学校におけるメンタルヘルスを推察することが可能であると報告されている(相川,1991)。
サクセスフルセルフ?プログラムは,心理・行動上の問題を予防し,心の健康を保持する可能性が示されている心理教育である(安藤,2012)。
そこで今回は,〝サクセスフル・セルフ?プログラムの実施と児童の心の健康について,保健室来室数の変化から検討することを目的とした。
方 法
対象:中国地方の公立A小学校において, 2012年度に入学し,“サクセスフル・セルフ”に親子で行うホームワークも取り入れた1年生47名(以下,親子HWあり群),2011年度に入学し,親子で行うホームワークを行わない “サクセスフル・セルフ”を実施した1年生54名(以下,親子HWなし群),2009年度入学し,“サクセスフル・セルフ”を実施していない1年生48名(以下,未実施群)の3群である。
実施方法:親子HWあり群,親子HWなし群に実施したサクセスフル・セルフは,1年生から2年生にわたって,凡そ週1回, 45分で,各学年で4レッスン,学級担任のサポートのもと養護教諭によって,学級単位で行われた(安藤,2012)。
親子で行うホームワークは,“サクセスフル・セルフ”で学習したことをもとに,親子間コミュニケーションを図ることを目的に,1年生時,2年生時とも〝サクセスフル・セルフ?レッスンの2回目終了後と4回目終了後の2回(1週間毎日)行われた(岡﨑・安藤,2013 )。
評価:3群の1年生時から2年生時の保健室来室数の変化を検討するために,各児童の2年生時の保健室来室数から1年生時の保健室来室数を除して,+得点だった場合「増加」,変化がなかった場合「変化なし」,-得点だった場合「減少」とした。そして,χ2検定を実施し,残差分析を行った。
倫理的配慮:本取り組みに関しては,保護者への理解と協力,実施校の管理者および学級担任,児童への理解と同意を得て行われた。
結果と考察
保健室来室数の1年生から2年生への変化には,3群間で有意な関連が見られた。1年生から2年生にかけて,未実施群では保健室来室者数が有意に増加していた。親子HWなし群では,有意な変化は見られなかった。親子HWあり群では,減少した児童が有意に多く,増加した児童が有意に少なかった(図1)。
以上より,心理教育“サクセスフル・セルフ”,それに基づく親子で行うホームワークは,児童の心の健康を保持する一助になると考えられた。
【文献】
安藤美華代. (2012). 児童生徒のいじめ・うつを予防する心理教育〝サクセスフル・セルフ?. 岡山大学出版会
岡﨑由美子・安藤美華代.(2013). 心理教育“サクセスフル・セルフ”を活用した小学校低学年のコミュニケーション支援の試み. 岡山大学教師教育開発センター紀要, 4, 56-62.
保健室に身体の不調を訴えて来室する児童生徒には,何らかの心理的背景要因があるものが少なくなく(平山,識名,仲田,1994),保健室利用の実態から学校におけるメンタルヘルスを推察することが可能であると報告されている(相川,1991)。
サクセスフルセルフ?プログラムは,心理・行動上の問題を予防し,心の健康を保持する可能性が示されている心理教育である(安藤,2012)。
そこで今回は,〝サクセスフル・セルフ?プログラムの実施と児童の心の健康について,保健室来室数の変化から検討することを目的とした。
方 法
対象:中国地方の公立A小学校において, 2012年度に入学し,“サクセスフル・セルフ”に親子で行うホームワークも取り入れた1年生47名(以下,親子HWあり群),2011年度に入学し,親子で行うホームワークを行わない “サクセスフル・セルフ”を実施した1年生54名(以下,親子HWなし群),2009年度入学し,“サクセスフル・セルフ”を実施していない1年生48名(以下,未実施群)の3群である。
実施方法:親子HWあり群,親子HWなし群に実施したサクセスフル・セルフは,1年生から2年生にわたって,凡そ週1回, 45分で,各学年で4レッスン,学級担任のサポートのもと養護教諭によって,学級単位で行われた(安藤,2012)。
親子で行うホームワークは,“サクセスフル・セルフ”で学習したことをもとに,親子間コミュニケーションを図ることを目的に,1年生時,2年生時とも〝サクセスフル・セルフ?レッスンの2回目終了後と4回目終了後の2回(1週間毎日)行われた(岡﨑・安藤,2013 )。
評価:3群の1年生時から2年生時の保健室来室数の変化を検討するために,各児童の2年生時の保健室来室数から1年生時の保健室来室数を除して,+得点だった場合「増加」,変化がなかった場合「変化なし」,-得点だった場合「減少」とした。そして,χ2検定を実施し,残差分析を行った。
倫理的配慮:本取り組みに関しては,保護者への理解と協力,実施校の管理者および学級担任,児童への理解と同意を得て行われた。
結果と考察
保健室来室数の1年生から2年生への変化には,3群間で有意な関連が見られた。1年生から2年生にかけて,未実施群では保健室来室者数が有意に増加していた。親子HWなし群では,有意な変化は見られなかった。親子HWあり群では,減少した児童が有意に多く,増加した児童が有意に少なかった(図1)。
以上より,心理教育“サクセスフル・セルフ”,それに基づく親子で行うホームワークは,児童の心の健康を保持する一助になると考えられた。
【文献】
安藤美華代. (2012). 児童生徒のいじめ・うつを予防する心理教育〝サクセスフル・セルフ?. 岡山大学出版会
岡﨑由美子・安藤美華代.(2013). 心理教育“サクセスフル・セルフ”を活用した小学校低学年のコミュニケーション支援の試み. 岡山大学教師教育開発センター紀要, 4, 56-62.