[PH031] 幼児教育学生の保育指導観
子どもの特性に応じた保育
キーワード:保育観, パーソナルセオリー, 事例
問題と目的
子どもの特性に応じた保育を行うことは,重要である。しかしながら,保育者を目指す学生にとっては非常に難しい。良いと思われる指導方法,子どもへの対応は思い浮かぶであろうが,子どもがもつ特性ごとに指導方法を変えるという意識はあるのだろうか。杉村・桐山(1991)では,「依存の高い子」「乱暴な子」「引っ込み思案な子」を取り上げ,保育者の指導には2 つの方法があり,経験の長い保育者は子どもの特性に応じて指導方法を変えていることを示している。本研究は,取り上げる子どもの特性を「のんびりした子」「失敗を恐れる子」「集中が途切れる子」に変え,学生の保育観について示すことを目的とする。
方 法
参加者 大学生 43 名
調査の内容 杉村・桐山(1991)を参考に,子どもへの対応の方法に関する質問項目を作成した(27 項目)。被験者は子どもの特徴が記述された各事例に対して,その子どもに対する対応の仕方
についての考えを4 件法(する~しない)で尋ねられた。示された事例は,福島編(1991)の乳幼
児保育臨床学のテキストの中から,どこの園でも見られるような事例をとりあげた。各事例の概要
は以下の通りである。
事例1 遊んだあとの部屋の片づけやお弁当の準備など,保育者の指示の下,皆で一斉に取りかか
る活動についてこない。今求められている活動の理解が十分でなく,全体のテンポについていけず,
教室でもひとり孤立している。事例2 新しい課題に対して臆病で,自分ができそうになりことは
参加しないことが多い。フィンガーペインティングに誘われて「僕はしないよ,見ているだけだよ」
「そんなことをしたら手が汚れるもん」と言って見ている。事例3 絵画制作などの1人でじっく
り取り組む活動には興味を示さずやろうとしない。課題に集中できず,すぐに他の遊びを始めてしま
う。他の幼児が面白そうなことをしているとすぐに走ってきて参加する。
結 果
主因子法・プロマックス回転による因子分析を行った。0.4 以上でどの因子にも負荷しない項目
を削除し,固有値の削減状況と因子の解釈可能性から,2 因子解を採用した(Table1)。第1 因子は,子どもに変化を求めたり,頑張ることを求めたりする項目によって構成されていることから「積極的な指導」と命名した(10 項目)。第2 因子は,受容的で,子どもに寄り添う項目によって構成されていることから「消極的な指導」と命名した(9項目)。杉村・桐山(1991)と比較すると,「積極的な指導」は「意図的な指導」に含まれる項目とほぼ一致し,「消極的な指導」は「受容的な指導:に含まれる項目とほぼ一致している。
子どもの特性ごとに,異なる指導方法を選択しているかどうかを検討するために,3(子どもの特
性)×2(指導方法)の2 要因分散分析を行った。
その結果,子どもの特性と指導方法の交互作用が有意であった(F(2,40)=13.65, P<.01)。それぞれの平均をFigure1 に示す。下位検定の結果,積極的な指導法は,子どもの特性によって使い分けるが,消極的な指導法は,子どもの特性によって変化がないことが示された。また,事例1 には消極的な指導法を重視し,事例3 においては積極的な指導法を重視することが示された。
子どもの特性に応じた保育を行うことは,重要である。しかしながら,保育者を目指す学生にとっては非常に難しい。良いと思われる指導方法,子どもへの対応は思い浮かぶであろうが,子どもがもつ特性ごとに指導方法を変えるという意識はあるのだろうか。杉村・桐山(1991)では,「依存の高い子」「乱暴な子」「引っ込み思案な子」を取り上げ,保育者の指導には2 つの方法があり,経験の長い保育者は子どもの特性に応じて指導方法を変えていることを示している。本研究は,取り上げる子どもの特性を「のんびりした子」「失敗を恐れる子」「集中が途切れる子」に変え,学生の保育観について示すことを目的とする。
方 法
参加者 大学生 43 名
調査の内容 杉村・桐山(1991)を参考に,子どもへの対応の方法に関する質問項目を作成した(27 項目)。被験者は子どもの特徴が記述された各事例に対して,その子どもに対する対応の仕方
についての考えを4 件法(する~しない)で尋ねられた。示された事例は,福島編(1991)の乳幼
児保育臨床学のテキストの中から,どこの園でも見られるような事例をとりあげた。各事例の概要
は以下の通りである。
事例1 遊んだあとの部屋の片づけやお弁当の準備など,保育者の指示の下,皆で一斉に取りかか
る活動についてこない。今求められている活動の理解が十分でなく,全体のテンポについていけず,
教室でもひとり孤立している。事例2 新しい課題に対して臆病で,自分ができそうになりことは
参加しないことが多い。フィンガーペインティングに誘われて「僕はしないよ,見ているだけだよ」
「そんなことをしたら手が汚れるもん」と言って見ている。事例3 絵画制作などの1人でじっく
り取り組む活動には興味を示さずやろうとしない。課題に集中できず,すぐに他の遊びを始めてしま
う。他の幼児が面白そうなことをしているとすぐに走ってきて参加する。
結 果
主因子法・プロマックス回転による因子分析を行った。0.4 以上でどの因子にも負荷しない項目
を削除し,固有値の削減状況と因子の解釈可能性から,2 因子解を採用した(Table1)。第1 因子は,子どもに変化を求めたり,頑張ることを求めたりする項目によって構成されていることから「積極的な指導」と命名した(10 項目)。第2 因子は,受容的で,子どもに寄り添う項目によって構成されていることから「消極的な指導」と命名した(9項目)。杉村・桐山(1991)と比較すると,「積極的な指導」は「意図的な指導」に含まれる項目とほぼ一致し,「消極的な指導」は「受容的な指導:に含まれる項目とほぼ一致している。
子どもの特性ごとに,異なる指導方法を選択しているかどうかを検討するために,3(子どもの特
性)×2(指導方法)の2 要因分散分析を行った。
その結果,子どもの特性と指導方法の交互作用が有意であった(F(2,40)=13.65, P<.01)。それぞれの平均をFigure1 に示す。下位検定の結果,積極的な指導法は,子どもの特性によって使い分けるが,消極的な指導法は,子どもの特性によって変化がないことが示された。また,事例1 には消極的な指導法を重視し,事例3 においては積極的な指導法を重視することが示された。